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【45】ざわめきの中


 あいちゃんと尋ちゃんがジャンケンをした結果、私たちは前の方の席に座って講義を受けている。

 先生から遠い後ろの窓際の席に座りたがっていた尋ちゃんも大人しくノートを取っている。


 あいちゃんから教えてもらったんだけど、私が休んでいる間二人で協力して私の分のノートも取っていてくれたらしい。

 そのおかげか、尋ちゃんは前よりもちゃんとノートを書くようになったとか。


「あたし、二人のおかげで真面目ちゃんになりそうだよ」


 プリントを取りに先生が教室を出て行ってすぐに、ノートから顔を上げた尋ちゃんがそう口を漏らした。


 先生がいなくなって、教室中がざわめき出す。


「ねぇ、吉岡君。ウチさっきんとこ写しそびれたからノート見せてぇ」


「うん、いいよ。……はい、川上さん」


「きゃー、吉岡君字きれー!」


 ざわめきの中、後ろの方から聞こえたその会話。


「あっ、カナにも見せて〜」


「じゃあ、次は中野さんね」


「吉岡君優しー!ありがとう、カナ吉岡君のノートなら勉強できそー」


 たくさんのざわめきの中でもよく響く女の子たちと吉岡君の笑い声。


 ――スッゴく気分が悪い。病気とかじゃなくて、何ていうか……


「ムカつく〜」


 そう、あの女の子たちがムカつくの――って、斜め後ろの人がタイミングよく私と同じ気分のようだ。


「何よ、あの中野カナって子。昨日はあたしたちと吉岡君が一緒に座ってたのに〜」


「な〜んかぶりっこに取られたったて感じ〜」


 はい?斜め後ろの人たち何言ってるの?


「私、昨日あの吉岡君に声かけちゃった〜!」


「ふんっ。私なんて吉岡君にハンカチ拾ってもらったんだから!」


「吉岡君にお昼一緒に食べようって誘ってみない?」


 気が付けばそこら中から吉岡君の話題がばかり聞こえてくる。


 私が休んでいた間に何があったの?




 ……って、そんなこと聞かなくても予想はついている。


 吉岡君に誰も近寄って来なかったのは、あのただならぬオーラを放っていた極道ファッションが原因だった。

 その特異な格好から普通の格好になったんだから、吉岡君に近寄れない理由は何一つなくなった。

 もともと見た目も性格も申し分ない吉岡に今もなお避けられ続ける理由もない。


 だから、私は吉岡君に服装を変えてみようって言った。

 結果がこうなるのは分かっていた。吉岡君が人気者になるって……




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