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【42】二人からのメール


「…………」


「望美、聞いてる?」


「…………」


 車のハンドルを握ったまま、ミラー越しに見える私に向かってお母さんは話していた。

 だけど後部座席で横になっている私は返事もしないでずっと無言でいた。


「お医者さんの言うとおり、熱が下がっても二日は大学休みなさいよ」


「…………」


「望美は昔から変わらないわね〜。小さい時から平熱が37度でちょっと高くて、風邪になると熱が一番最初にでるんだから。なのに熱に気付くのは鈍感で、悪化させちゃうんだから――」


「もぉー、お母さん止めてよ」


「あっ、やっとしゃべったわね。でも、病気の時はいつも大人しく言うこと聞いてたのに……」


 ミラー越しにお母さんと目が合った。


「そんなに大学好き?」


「……うん」


「そう、よかったね。進学する大学を急に変えた時は驚いたけど、今の大学にして正解だったのね」


 お母さんは少し嬉しそうに笑った。


 大学を決める時、両親には家から通えるって理由を説明した。好きな男の子と同じ大学に行きたいなんて言えるはずがなかった。

 でも、お父さんもお母さんも私が一人暮らしして東京の大学に行くよりは安心だって、快く承諾してくれたっけ。




 家に帰るなり、私はまたベッドに寝かされた。

 お母さんは買い物に行ってくると、再び車を発進させた。


 安静に安静に……って言っても全然眠くないよ。本でも読んでいようかな。


「あっ……」


 読みかけの小説を取り出そうとカバンを開けると、ケータイのLEDが点滅していた。

 着信二件、メール六件――全部尋ちゃんとあいちゃんからだった。

 着信は今日の九時頃に二人からで、メールは昨日から来ていた。


<具合悪いの大丈夫?>


<明日は学校来れる?>


<今日も具合悪いの?>


<今日は家でゆっくり休んでね>


<講義のことは心配しないでね。あたしたちがノート取っておくからね>


<早く元気になれるようにお祈りしてるね>


 熱のせいかな?涙腺が緩くなってるみたい。

 二人の気持ちが嬉し過ぎて涙がこぼれ落ちた。ケータイに泣きながら笑っている自分の姿が反射して映る。


 涙を拭ってから親指を走らせた。


<心配かけてゴメンね。風邪ひいちゃった。熱が下がらないからまだ大学には行けないけど、二人のおかげで早く元気になれそうだよ!>


「送信っと……」


 そう言えば、二人には具合悪いから帰るって嘘吐いちゃったんだよね。本当にそうなっちゃったけど。


 大学行ったら、尋ちゃんとあいちゃんに全部打ち明けようかな。

 高校時代のことから吉岡君のことも。私の気持ちも……



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