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【3】教室の中心は彼だけ


「セぇーフ」


 チャイムが鳴り終わると同時に私たちは運良く空いていた席に滑り込んだ。


「この講義の先生って遅刻した人を集中攻撃するんだって」


 尋ちゃんは小さな声でそう言った。同じ新入生なのに尋ちゃんはこういうことに詳しい。


「昨日知り合った先輩から教えてもらったの」


 そう、尋ちゃんは顔が広い。たった三日で同級生から先輩、先生たちにまで顔が利くようになったらしい。


 あっ、そうだ、眼鏡かけなきゃ。


 ゴソゴソとカバンから眼鏡を取り出してかけた。


「へぇー、眼鏡だったんだ」


「今日、コンタクトする時間なかったから」


 尋ちゃんの顔がよく見えるようになった。

 白い肌に長いまつげ、整った顔立ち。美人の尋ちゃんが羨ましい。


「ん?何?」


「う、ううん。何でもないよ」


 ……あれ?


 視線を尋ちゃんから黒板に移そうとしたとき、ちょっと不思議な光景が映った。

 いつもはなるべく前の方の席に着く。でも今はほぼ一番後ろの席にいる。だから教室全体を見渡せる。


 えっ、何あれ?


 私たちのいる後方部は人がたくさんいる。

 右側の席にも人がたくさん座っている。左側も。

 いつもはガラガラの前方の席、最前列もほぼ満席。 なのに――




 教室の中央部はガラガラっていうか……

 一人しかいないじゃない!


 その人を中心に半径三メートル以内席には誰もいない。


 何?この状況……


 みんな変に思わないの?私だけ?

 イジメ?大学入って早々集団イジメ? そういえば吉岡君はどこだろう。吉岡君もあの人のことを…

 吉岡君はそんな人じゃないのに……




「あっ、澤田君だ。あーあ遅刻したから集中攻撃されるわね」


 尋ちゃんがひっそり呟いた。


 教室に遅れて入ってきた澤田君って人は空いてる席を探している。

 そして当たり前だけど真ん中あたりの座り放題の席に――座ろうとしたけど無理やり詰めてもらって前の方の席に座っちゃった。

 そんなにあの人が嫌なの?

 どうして?あの人が何したっていうの?


 悲しい現実に心を痛めそうな気分だった。

 でもこの気持ちと謎は講義終了を知らせるチャイムと同時に、私は全てを悟った。




 講義が終わったことを喜び出口に群がる学生たち。

 もちろん教室の中心にいたあの人も立ち上がる。


 ええっー!?


 みんながその人を避ける理由。その人が嫌いとかムカつくからじゃない――怖いんだ。


 だってその人の着てる服はまさしく――ご、ご、ご……

 怖くてこれ以上言えない……



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