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【38】間違えて……


 吉岡君は少し驚いたように振り返った。――目が合った。

 私は吉岡君の目と自分の手を交互に見た。

 右手に感じる温もり……

 私は吉岡君の手を握っていた。


 なななな……

 頭がパニック状態だ。

 本当はちょっと袖を引っ張りたかっただけなのに……何で……?


 口は開けているのに何も言葉が出て来てくれなかった。


「あっ、次はこのお店に入るんだね」


 声を出すことを忘れた私は首を縦に振ることしかできなかった。


 それに対して吉岡君は普通だった。私の手を振りほどくわけでもなく、逆に握り返してくるわけでもなく、何の反応もなかった。まるで何もないみたいに。


 力が抜けて、自然と私の手は吉岡君の手を放した。

 何事もなかったように吉岡君は服屋さんへ入っていく。




 間違えて掴んでしまったとはいえ、吉岡君と一瞬手を繋いだんだ。

 スゴくドキドキしてる。

 あの手の感触も温もりもまだ残っいる。


 恥ずかしいのに、嬉しい……


 靴を買うとき、最後に私の判断に任せてくれたのもスゴく嬉しかった……


「橘さん、こういうのはどうかな?」


 吉岡君はサングラスを掛けていた。


「うーん、似合わない」


 多分、前の格好だったら似合ってたと……いや、それはもっとマズいか。


「チェックのネルシャツはいかがですか?」


「え?」

「え?」


 急に後ろから声がして、振り返ると若い男性の店員さんさんが赤いチェック柄のシャツを持っていた。


「こちらのネルシャツはTシャツの上に着てもいいですし、腰に巻かれてもいい感じなんですよ」


 店員さんは吉岡君にそのネルシャツを渡すと、今度は黒いズボンを持ってきた。


「これは今、僕が履いているのと同じカーゴパンツでして……もしよろしければ、一度ご試着しませんか?」


「え?あ……」


 試着すると言ってないのに、吉岡君は店員さんに服を渡されて試着室に入らされた。


 ふと店員さんと目があった。店員さんはにこっと笑いながら、私に話しかけてきた。


「素敵な彼氏さんですね。カッコイいというか、少々可愛らしい顔つきで、爽やかな雰囲気の方ですね」


「か、彼氏とかじゃないです……友達です」


 店員さんの言葉を否定したけど、嬉しかった。

 私たちカップルに見えるのかな?

 吉岡君のこと素敵な……って言ってくれたのも嬉しい。


「これは失礼致しました。ですがとてもお似合いに見えましたよ。美男美女カップルとして」


 美男美女?

 美男 → 吉岡君。

 美女 → どこですか?――わ、私!?




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