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【37】赤と緑どっち?


 買うつもりの全くない春物のパンプスを眺める。すぐ横には夏に向けたサンダルやミュールもある。

 今履いているパンプスも買ってまだ一ヶ月。特に買う必要はまだない。

 ただあの店員さんに邪魔者扱いされているような気がして、あそこから離れたかった。


「ふぅ……」


 立って靴を眺めているのが辛くなって、試し履き用の椅子に座った。


 あの店員さんのであろう高い笑い声が何度か聞こえてきた。でもいつの間にか、その笑い声は聞こえなくなった……




「橘さん?」


 どこからか私の名前が呼ばれてはっとした。


「よ、吉岡君!ごめん、私いつの間にか寝ちゃって」


「大丈夫?顔赤いけど」


 それはこんなところで寝ちゃったことの恥ずかしさと、その姿を吉岡君に見られたことの恥ずかしさで……


「大丈夫、大丈夫だよ。あっ、靴は買った?」


「ううん、まだだよ。橘さんに決めてもらいたくて」


「え……」


 吉岡君は右足と左足にそれぞれ違うスニーカーを履いていた。


「店員さんは右の赤い方が似合うっていうんだけど、緑色もいいかなって迷って……」


 店員さんの言うとおり、確かに赤いスニーカーはマッチしている。でも吉岡君の言うとおり緑も合わないわけじゃない。

 私は何度もクリスマスカラーな二つを見比べた。靴ひもがどちらも白だから、余計にクリスマスを思い浮かべてしまう。


「えっと……こっち!」


 私が指差した方の靴を見て、吉岡君は嬉しそうな顔をした。


「じゃあ、この緑のスニーカーに決定だね」


 買ってくるね、と吉岡君はスニーカー売り場へ戻った。


 レジのところで待とうと思って、私は椅子から立ち上がった。


「――っ!」


 立ち上がった瞬間に頭がクラッとした。


 貧血かな?と思いながらも、レジへと向かった。

 途中、鏡に映る自分と目が合い驚いた。顔がまだ赤かった。


 何でまだ赤いの?




 隣で歩く吉岡君の足元は静かになっていた。


「さっきの店員さん、オレの下駄見てワイルドですねって言ったんだ。そうなのかな?よくサ○エさんの波○さんも履いてるけど、ワイルドって感じじゃないよね」


 買ったばかりの服や靴を身に付けた吉岡君はウキウキしているようで、楽しそうに色々と話してくれた。


「そうだね……ここ入ってみよう」


 話に夢中だった吉岡君が通り過ぎないように、少し服の袖を引こうとした――ら……




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