【32】変えてみよ
「変わる?」
「うん、変わろう。吉岡君はスゴく良い人だよ。みんなはまだ気付いてないだけ。だから、みんなに気付いてもらえるようにしよう」
「でも、オレが近づくだけでみんな――」
「それは……」
吉岡君、まだ自分の服装のせいでみんなから極道だって思われてることに気付いてない。
はっきり言っちゃっていいのかな?
「服……とかのジャンル変えてみようよ」
吉岡君はえ?という顔をした。
「ほら、えっと、服によって感じる雰囲気が違うでしょ?」
「そう……だね」
まだ吉岡君の顔には疑問符がある。
「もっと、大学生らしい感じの服の方が親しまれやすいんじゃないかな?」
「それもそうだね」
ああ、ようやく理解してくれたみたい。
「中学生の時からずっと同じようなの着てたのがマズかったのか」
えっ!?中学生の時からこういう私服着てたの!?
「え……あ、うん。そういうことで、ファッションスタイル変えてみようよ」
少し考えてから、吉岡君はうんと頷いてくれた。
「えっと……橘さん、服選ぶの手伝ってくれる?」
…………ふぇっ?わ、私が吉岡君の服を選ぶの!?
「いや、オレ、どういうの買えばいいのか分かんないし、どこで買えばいいのかも分かんないから……」
逆に今着ているような服はどこで買えるの?――っていう疑問は置いといて。
「でもでも、私、男の人の服なんてよく分かんないし……」
あっ、でも吉岡君の力になりたいんだった。
こうなれば――
「雑誌みたり、お店の人に聞くのが一番だよ。お店はえっと、とりあえず近くのショッピングモールに行けばいいと思うよ」
「そっか……雑誌ってどういうの?」
……えっと……
「私も一緒に行きます」
私なんかは役に立たないだろうけど、吉岡君一人じゃ色々と心配な気がする。
まだまだ時間があるからと、今からショッピングモールに行って買うことにした。
吉岡君はお金を取りに一度バイクで家に戻ることになった。