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【2】夢は夢のままで


 吉岡君が真剣な顔でシャーペンを走らせながら、チラチラと黒板を見ている。

 私はそんな吉岡君を隣で見ている。


 男の子なのに白くて綺麗な肌。澄んだ瞳。そしてノートに並ぶ綺麗な字。


 吉岡君がふとこっちを見る。私と目が合う。にこっと笑う。

 ずっとこうしていれたら……




 ――ピピピッ、ピピピッ――


「ぅえっ!?」


 毎朝聞いているはずの音なのに驚いて飛び起きた。


「夢?はぁ……そうよね」


 吉岡君の隣に座って講義を受けるなんて、そんな勇気ないよ……

 昨日やっと会えたばかりなのにこんな夢見るなんて……でももっと見たかったかも。


「――えっ?」


 恨めしく睨み付けた時計は八時を表していた。

 うそっ!?七時に起きるはずだったのに!目覚ましのセット間違えちゃったの!?


 九時からの講義に間に合うには八時半の電車に乗らないと。

 慌てて着替えた私はコンタクトを付けてる時間がなく、眼鏡を取って家を飛び出した。




 電車を降りてから走ってきたおかげで間に合いそうだ。

 でも教室まで行くにはヘトヘト……


「あれ、橘さん?」


「へっ?」


 教室を目前にして誰かに声を掛けられた。

 この声は間違いない。吉岡君だ。


「よ、吉岡君……えっと、おはよう」


「おはよう。疲れてるみたいだけど大丈夫?」


 二日連続で吉岡君と話せた!しかも吉岡君が私を心配してくれてる!

 あぁ、ありがとうございます神様!でも眼鏡かけてないから吉岡君の顔がはっきり見えないのは残念。


「うん、大丈夫。遅れそうだったからちょっと走っただけ」


「そうなんだ。間に合って良かったね。今から西洋文化の講義?同じだね」


 えっ、この流れはもしかして夢みたいに……吉岡君の……隣で……


「じゃっ、またね」


 吉岡君はそう言って教室に入っていってしまった。


 そうだよね……所詮夢は夢。人生そこまで都合良くいかないものよね……二日連続で吉岡君と話せただけ神様に感謝しなきゃね――


「痛っ!」

「いった〜い!」


「ご、ごめんなさい」


 ぼーっと教室の前に突っ立っていた私が悪いのです。

 ――って、あれ?


「桐生さん?」


「えっ?あっ、望美ちゃん!?桐生さんじゃなくて尋って呼んでね――って、それよりも!」


 キーンコーンカーンコーン


 あっ、講義始まっちゃう。


「行くよ!」


 桐生……尋ちゃんは私の腕を引っ張り教室に飛び込んだ。



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