【27】着物戦隊花レンジャー?
恋をした女は綺麗になる。
恋が実った女は幸せになる。
恋に破れた女は強くなる。
読んでいた本にしおりを挟んで、カバンにしまった。
畳の上で、崩していた足を正す。背筋を伸ばし、前を向くと、向かいには着物を着た先輩たちが並んでいる。
「華道部へようこそいらっしゃいました」
赤い着物を着た先輩がそう言うと、他の先輩たちが息を揃えて頭を下げる。
チラリと横の尋ちゃんとあいちゃんを見ると、それを合図に私たち三人も頭を下げた。
「では、ここにご記名をお願い致します」
赤い着物の部長さんの隣にいた、青い着物の先輩が私たちの前にペンと一枚の紙を出した。
尋ちゃんが一番上に自分の学生番号と名前を書いた。
その下に、今度はあいちゃんが番号と名前を書いた。
私の手元に紙が回ってきた。二人と同様に番号と名前を書き、青い着物の先輩に渡した。
先輩たちはそれを確認すると、にこっと微笑んで立ち上がった。
「これであなたたちは正式な華道部員です」
赤い着物の部長さんが言った。
「堅苦しい入部式はここまで」
青い着物の先輩が言った。
「ここからは歓迎会ってことで!」
黄色い着物を着た先輩がそう言うと、緑の着物の先輩とピンクの着物の先輩がテーブルを運んできた。
五色の鮮やかな着物が和室を行ったり来たりする。
ふいに幼いときにテレビで見た、何たら戦隊〇〇レンジャーが頭をよぎった。
「足崩していいわよ〜」
「サイダーと紅茶とりんごジュースどれがいい?」
「シュークリームおいしいから食べてね〜」
「ポテチとえびせんもいっぱいあるよ〜」
「尋子ちゃん、友達誘って入ってくれてありがとね〜」
さっきまでとは違って気軽な雰囲気の中、先輩たちはわいわいガヤガヤと飲み食い、談笑をし始めた。
「ウチの部はね、学ぶ時は学んで、楽しむ時はとことん楽しむって感じでやってるのよ」
「花を生ける時は真面目にやるけど、こういう時は羽を伸ばさなきゃ」
「着物だって、今日は入部式のために着ただけだし」
「いつもは普段着でいいのよ。特別な時だけ着物を着てもらうから」
「そうそう、再来週は先生に指導してもらえるわよ。楽しみにしててね」
こうして、正式に華道部員になった私たち。
この日は特に花を生けることはなかったけど、床の間の掛け軸の下には先輩たちの中の誰かが生けたと思われる作品があった。
きれい……
私もあんな風に生けれるかな?