【26】恋愛だけが青春ではない
私、何かをしなくちゃいけなかったような……
帰りの電車で窓に映る自分を見つめながら考えていた。
失恋って、きっとツラいよね。経験したことない(というかその前に片思い中)けど。
でも尋ちゃん結構元気だったな……
尋ちゃんって強いんだね。スゴいな〜。
私だったらきっと、悲しくて悲しくてずっと泣いちゃうだろうな。
もしも吉岡君に嫌われたら――……あっ!尋ちゃんたちに吉岡君のこと話すんだった。
でも、尋ちゃんがこういう状況だとな……多分明日から当分の間は元カレさんの愚痴を言うのに夢中だろうしな……
ほとぼりが冷めてからの方がいいかな……
「望美ちゃん!あいちゃん!」
教室に入るなり、尋ちゃんが私とあいちゃんに突然切り出した。しかも結構な迫力で。
「華道部入らない!?」
また唐突な……
「ど、どうしたの急に?」
「あたしはこの大学生活を部活動に捧げるの!」
???
疑問符を浮かべる私たちに、尋ちゃんは熱弁する。
「君たち、恋愛だけが青春ではないのだよ。大学には勉学以外にもやることがあるのだ。さぁ、一緒に華道の世界へ踏み入れようじゃないか」
どうやら尋ちゃんは失恋のショックでヤケになっているようだ。
強いというか……前向きというか……開き直りというか……
「でも何で華道部なの?サークルなら他にもたくさんあるのに」
「ああ、それは華道部の活動がひと月に一回しかないから」
さっきの熱弁と矛盾してるような。
「うーん……私、やろうかな」
あいちゃんがにこやかに言った。
「あいちゃん、ありがと〜!望美ちゃんもやるよね?」
私がうんと頷くのをキラキラした目で待つ尋ちゃん。
考えてみると、特に断る理由はないんだよね。
絶対に嫌だってわけじゃないし、ちょっとだけ興味もあるし、二人も一緒だし――
私が頷こうと顔をほんのちょっと動かした瞬間に、尋ちゃんが私とあいちゃんの手を取った。
「二人ともありがとう!実はもう部長さんに二人のことも入るって言ってあるの〜。二人ならきっと入るって言ってくれると信じてたよ〜」
あはは……
だんだん尋ちゃんの性格が分かってきたような気がする。