【25】尋ちゃんの失恋?
「うぇ〜ん、うぇ〜ん」
あいちゃんに抱き付いた尋ちゃんは泣き出し――てはない。涙は流れていないくど声だけは泣いているような声だ。
「尋ちゃん何があったの?もしかして澤田君に――」
「俺は違う……」
私の言葉を遮って否定した割に、澤田君はぐったりしている。
澤田君も何があったの?
「ひっく、ひっく、あたしね……」
あいちゃんに抱き付いたまま尋ちゃんは話し始めた。
「男にフラれたんだって」
「先に言うな!」
嘘泣きしていた尋ちゃんの口調は一変して、怒った口調で澤田君に言った。
「まぁ、早い話がそういうこと」
尋ちゃんはあいちゃんから離れると、仁王立ちに腕を組ながら続けた。
「あたし、高校の時から付き合ってた人がいたんだけど、昨日ケンカして別れたの……」
そうだったんだ……というよりも尋ちゃん付き合ってる人いたんだ……
でも何でそれで澤田君が尋ちゃんの隣でぐったりしてたの?
「でね、悪いのはあっちなのに、私が悪いみたいなこというからすんごくムカついて、それで望美ちゃんとあいちゃんに愚痴聞いてもらいたかったの〜。なのに望美ちゃんもあいちゃんもなかなか来ないから、たまたま発見した澤田君に聞いてもらってたの〜」
「つーか、オレの首根っこ掴んで無理やり隣座らされて、ずーっと一方的に喋られてたんだよ……」
そっかぁ、尋ちゃんのマシンガントークを受けて澤田君はこんな状態になっちゃったんだ。
ある意味被害者?
って、私たちのせいでもあるんだよね。ごめんなさい、澤田君。
「そうだったんだ、ごめんね尋ちゃん。悲しいよね。目が赤くなるまで泣いたんだね」
私とあいちゃんは、(泣いてないけど)尋ちゃんを慰めた。
「へっ?」
尋ちゃんの顔に一瞬“?”が付いた。
「あたし、嘘泣きはさっきしたけど泣いてないよ」
えっ、じゃあ何で目赤いの?
「あいつに借りてたゲーム返さなきゃいけないから、全部クリアさせるために夜更かししたから」
はい?
あいちゃんも私も開いた口が塞がらなかった。
澤田君はため息を吐いて、うなだれる頭を右手で支えていた。
「聞いて、聞いて。そいつは――」
ここで再び尋ちゃんのマシンガンが炸裂する。
自分の向かいに私とあいちゃんを座らせ、お構いなしに元カレさんの愚痴を言う尋ちゃん。
多分これで二度目なんだろうな……澤田君、頭抱えだしたよ……
「――もう、同情するなら愛情くれ〜!って感じ」