【24】図書館にて……
ヤクザ……ヤクザ……
私は今、辞書を片手に“ヤ”のページを指で追っている。
まだ講義には早いし、図書館で暇を潰そうと思ったからだ。
でも、ロシア文学を読んでいても、頭の中には“ヤクザ”の三文字が焼き付いていて読書の邪魔をする。
どーしても気になるヤクザを調べるために、私は百科事典に手を伸ばしたのだった。
「望美ちゃん?」
突然の声に驚いて、顔を上げるとあいちゃんがいた。
「それ百科事典だよね?何調べてるの?」
「やく……ざいし!薬剤師調べてたの!お、お、お医者さんと何が違うのかな?って」
あいちゃんは苦笑いをしながら、私の向かいに座った。
私は百科事典をバタンと閉じて本棚へ戻しに行った。
何やってのよ、自分……
あいちゃんの向かいに戻ると、あいちゃんは本に夢中になっていた。
何の本読んでるのかな?
チラッと表紙を覗くと、見覚えのある名前があった。
「この本、私も読んだことある!」
「えっ、ホント!?私このシリーズ好きで何度も読んでるの」
「私も高校の時、そればっかり読んでた」
恋愛小説を読む前まではミステリーばっかり読んでいた。ミステリー小説の中でも一番好きだったのが、このシリーズ。
あいちゃんも好きだったんだ〜。何だかちょっと嬉しい。
私とあいちゃんはお昼までそのミステリー小説について語り合った。
お昼になり、私とあいちゃんは食堂へ向かった。
「尋ちゃん、もう食堂にいるみたい」
私はケータイのメールを見ながら言った。
<食堂で待ってるから早く来てね〜>
でもこのメールが来たのは今から三十分も前。あいちゃんと盛り上がってたから気付くのが遅くなってしまった。
「うーん、尋ちゃんどの辺にいるのかな?」
お昼だから食堂は人がいっぱいだった。この中から尋ちゃんを探すのは……
「いたよ」
あいちゃんが早くも発見してくれた。
あいちゃんが指差した方を見ると、確かに遠くに尋ちゃんがいた。でも――
「何か尋ちゃんの様子変じゃない?」
「うん、それに隣に誰かいるみたい」
私たちはどうしたんだろ?と思いながら、尋ちゃんの所へ歩み寄った。
あっ、この人見かけたことある。確か……澤田君だ。
「ああーっ!やっと来た」
私とあいちゃんに気付いた尋ちゃんが大きな声で言った。
もしかして怒ってる?ごめんね――って、尋ちゃん目が……
「尋ちゃん、どうしたの?目真っ赤だよ」
あいちゃんが心配そうに言うと、尋ちゃんはあいちゃんに抱き付いた。
えっ!何!?何があったの!?