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【23】ヤクザって?


「そ、そんなに驚かなくても」


 思わず大声を出してしまった私に、吉岡君が驚いている。

 いや、驚いたのは私の方だ。


「だっててっきり、ごく……、ヤ……だと思ってたから……」


「ん?ごめん、よく聞き取れなかった」


「う、ううん!何でもない!何でもないよ!それより吉岡君、講義あるんじゃない?」


「そうだった。じゃあまたね、橘さん」


 キーを抜いて、爽やかに走っり去って行った吉岡君。






「――ごめんなさい!」


 吉岡君の姿が見えなくなってから、私は吉岡君のバイク(?)に向かって謝った。

 本当は吉岡君に謝りたかったけど……私にはこれが限界です(泣)


「吉岡君のこと追っかけて同じ大学に入って、吉岡君の格好を見て勝手に勘違いして落胆したり、家業はヤ○ザって勝手に決め付けたりして、ごめんなさい!」


「ヤクザって?」


 深々と頭を下げていた私の後ろから、聞こえるはずない声がした。

 いつもなら、この声を聞くと胸がドキドキするけど……今のドキドキは違うドキドキだ。


 嘘っ!何で吉岡君が!?さっき校舎に行ったんじゃ……


「橘さん、ヤクザって――」


 はい、そうです。よりにもよって好きな人のことを勝手に極道の世界の人だと決め付けていました。本当にごめんなさい!


「ち、違うの!よ、よ、よ、吉岡君のことじゃなくて!」


「おいしいよね、ヤクザって」


「へっ?」


 おいしい?ヤクザがおいしい?何のこと?

 それとも混乱している私が聞き間違えただけ?


「オレ、ヤクザ好きだけど残念ながら家はヤクザ屋さんじゃないんだよね……」


「???」


 何!?ヤクザって何!?私が知ってるヤ○ザじゃないの!?ヤクザ屋さんってどんな店!?


「あっ、ごめん!教科書バイクに入れっぱだったから取りに来たんだ。急がないと……じゃあね!」


 手早くボックスから教科書を取り出した吉岡君は、全速力で駆けていってしまった。




 ヤクザって何?



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