【22】彼の実家は〇〇!?
とりあえず、まずは尋ちゃんとあいちゃんに吉岡君がいい人だってことを知ってもらおう。
私たちが楽しそうに吉岡君と接していれば、他の人たちも吉岡君が怖い人じゃないって分かってくれるはず!
そう考えながら道路を歩いていた時だった。
後ろからバイクの音がした。もちろん、バイクが道路を走るのは当たり前こと。だから、いつもだったらバイクなんて気にもしない。
でも、今追い越していったライダーは私に向かって、手を振った。
「誰?」
ヘルメットで顔が見えなかった。でも首から下を見てすぐに誰だか分かった。
桜の上を舞う龍、桜の下で龍を見上げ睨みつける虎。そして足元は下駄。
あの格好は間違いなく吉岡君だ。
そういえば、この前バイクで通ってるって言ってたっけ。
私は走って大学の駐輪場に向かった。
駐輪場に着くと、すぐに吉岡君を探した。尋ちゃんとあいちゃんのことを話しておきたい。
「いた!」
吉岡君はヘルメットを取って、バイクから降りるところだった。
「よ……」
声をかけようとして、途中で言葉を失ってしまった。
さっきは後ろ姿だったし、サーって行っちゃったから気付かなかったけど……アンバランス過ぎる!
青くてカッコイいヘルメット。金の虎に銀の龍の服。下駄。ウグイス色のバイクというよりもスクーター。スクーターの後部には荷物が入るボックス付き。しかも、丸で囲まれた吉の字が大きく書かれている。
そして何よりも、それらに不釣り合いな吉岡君の爽やかな笑顔。
吉岡君……何かを間違えてるような気がする……
「橘さん、おはよう。どうしたの?こんな所に?」
「よ……吉岡君、見かけたから……それ、吉岡君のスク……バイク?」
バイクとスクーターって何が違うのかよく分からないけど、これは私にとってのカッコイいイメージのバイクとは明らかに違う。
「ううん、もともとはオヤジの。というか、家のかな」
吉岡君のお父さんの?確かに年期は入ってるけど……ヤ○ザのボスがこれに乗って……
……明らかに間違ってる!!
というか、何か話が噛み合ってない!
「吉岡君――」
ここは、勇気を出して聞いてみよう。
「――の実家って……」
「花屋だよ」
…………あれ?
「……お花屋さん?」
「うん」
「……お花屋さんって、あのお花売ってるお店のことだよね?」
「そうだよ」
「……ええっー―!!」