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【21】変な夢


 真っ白な世界にいた。何もなくて、白いだけ。




 ふと、高校の制服を着ている吉岡君が現れた。


 吉岡君に歩み寄ろうしても体が動かない。


「…ぁ…ぅ……」


 声も出ない。


 いつの間にか吉岡君の周りに高校のクラスメイトが数人いた。

 一人、また一人と増えるクラスメイト。その度に吉岡君の姿は見えなくなってって、私との距離も遠くなる。

 どんどん離れていく中、吉岡君がクラスメイトたちと楽しそうにしているのをただ見ていた。


 手は届かないのに、私は吉岡君に恋をした。


 ――あれ?急に白かった世界が桜色に変わった。


「何?」


 思わず漏らした声と動くようになった体。


 辺りをキョロキョロ見渡すと後ろに、銀の龍の刺繍が入った服に下駄姿の人が立っていた。


「吉岡君!」


 吉岡君は私に笑顔を向けてくれた。

 私と吉岡君の距離は一メートルも離れてない。こんなにも吉岡君が近くにいる。


「ん?吉岡君、何見てるの?」


 吉岡君は遠くの方を見ていた。

 吉岡君の目線の先には、見覚えのある二人の女の子。


「尋ちゃん、あいちゃん!」


 さらに二人の後ろには、大学で見かけたことのある人たちがずらりと並んでいた。


 でも、どうしてみんなあんなに遠くにいるの?


 吉岡君の方に向き直ると、彼も私の視線に気付いて、私に笑いかけてくれた。


 笑いかけてもらえて嬉しいのに……心なしか吉岡君の笑顔の奥に寂しさが見えた。




 変な夢……

 吉岡君の夢はよく見るけど、今日のはいつもと感じが違っていた。


 開きっ放しにしていた卒業アルバムを本棚にしまった私は、まだ講義まで時間があるのに大学へ向かった。


 私……間違ってるのかもしれない。

 誰も吉岡君に近寄らないからチャンスだなんて、自分勝手な考えだ。


 吉岡君は全然悪い人じゃない。

 人から慕われてて、他人思いで、面白くて、頼りがいがあって、スゴく優しくて……


 だから、そんな吉岡君が極道の世界の人ってだけで避けられてるのは……嫌だよ……



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