【20】写真の中の……
生野さんの卒アルは分厚かった。尋ちゃんの三倍はありそうだ。
「これが私で、こっちは文化祭の時――」
パラパラと次々にめくっていく生野さん。たったの十五分で全部見終わってしまった。
「ちょっと貸して〜」
生野さんが卒アルをしまおうとすると、尋ちゃんが止めた。
アルバムの最後のページをじっくり見る尋ちゃん。
「――ありがと。もうしまってもいいよ、あいちゃん」
あいちゃん?えっ、生野さんのこと?
「生野さんの下の名前って、まなみだよね?」
「寄せ書きのとこにあいちゃんへって書いてあったもん。生野さん、あいちゃんって呼ばれてたんだね」
「うん。まなみの漢字が“愛美”だから、みんなからあいちゃんって」
「あたしも今からあいちゃんって呼ぶね」
「私もあいちゃんって呼んでいい?あいちゃん」
生野――あいちゃんは嬉しそうに、うん!と言ってくれた。
「よーし、次は望美ちゃん!……って言いたいけど持ってきてないよね?事前に言えばよかったね……」
「恥ずかしいからあんまり見せたくないけど……二人は見せてくれたから、今度遊ぶ時は持ってくるね」
二人は約束だよぉと言って笑っていた。
アルバムの中の二人は、今の二人と変わっていない。同じように楽しそうな顔で写真の中にいる。
高校時代の私を見せたら、二人は何て言うかな?
庶民的な我が家に帰ってきた私は、卒業アルバムを開いた。
メガネをかけ、緊張したのか強張った顔の私がいた。
クラスの集合写真では、端っこにひっそりと写っている。
真ん中には、先生よりも目立っている吉岡君。
いつも人が集まっている所には、吉岡君が真ん中にいた気がする。
だけど、今の吉岡君には私しかいない……吉岡君と仲良く絶対のチャンスで……昼休みにあの桜の所に行けば簡単に二人っきりになれて……