【19】卒アルマシンガントーク
昼休みには遅咲き桜に行って、吉岡君とおしゃべりするつもりだった。
でも、尋ちゃんと生野さんとのおしゃべりから抜け出せなかった。
まぁ、また明日しようかな〜。吉岡君、きっと毎日お昼はあそこだろうし。
なんて、また明日、明日と考えている内に日曜日になっていた。
生野さんに案内されて着いたアパート――というよりも高級マンション的な生野さんの家。
大学生の一人暮らしにこんな高級なマンションの一室、しかも最上階の角部屋……
「ここホテルだっけ?」
尋ちゃんがそう思いたくなるのはよく分かる。
マンションの入り口はオートロックはもちろん、吹き抜けのホールに二十四時間在住の警備員さん、その他いっぱいのサービス……
「生野さんって、もしかしてお嬢様?」
「そんなんじゃないよ。お父さんがちょっと会社作ってるだけで……」
「それって社長!?」
生野さん、スゴい!
エレベーターに乗り込んで三十階へ。
生野さんの部屋は一人暮らしには思えないくらい広かった。カウンターキッチンに二十畳くらいのフローリング。
ソファーも絨毯も高そうだ。
「テレビ大っきいね!つけてみていい?」
えっ、テレビ?どこにあるの?
キョロキョロと探すと、尋ちゃんと生野さんが笑った。
「望美ちゃん、後ろ」
「後ろって壁だよ……えっ!これテレビ?」
ずっと壁だと思う程にそのテレビは大きかった。
「スゴい迫力……あっ、そうだ」
テレビを見始めてすぐ、尋ちゃんがカバンから何かを取り出した。
「あたしの高校の卒アル、面白いから二人に見せようと思って持ってきたの」
尋ちゃんはテレビを消して、アルバムをテーブルの上に広げた。
「これがあたし。それで、このおじさんが担任。そうそう、この担任ね、修学旅行の日に――」
私の中で察知した。尋ちゃんのマシンガントークが始まると……
「――んで、結局卒業式で――」
思った通り、尋ちゃんは永遠としゃべっていた。もう二時間になる……
「そうなんだ……」
「へぇ……」
相槌も限界になりそうだ。
「――じゃ、次は生野さんの卒アル見よ!」
元々高い尋ちゃんのテンションはさらに上がったようで、卒アル、卒アル〜!と生野さんに駄々をこねている。
「じゃあ、部屋から取ってくるね」
「えっ、ここ以外にも部屋あるの?」
立派な1Kだと思ってたのにまだ部屋があるなんて。
「ここ、3LDKなの」
……もうこれ以上驚けません