【14】やっぱり好き……
私、ホントにホントに何やってんだろう。
どんな格好をしていても、吉岡君は吉岡君なのに――
こんなに優しくしてくれているのに――
こんなに胸がドキドキしてるのに――
吉岡君が極道の世界の人だったからって、嫌いにはなれないよ……
「ありがとう、吉岡君」
「うん。目にもゴミが入っちゃったんだね。涙で流すといいよ」
吉岡君は笑った。私も何だか笑ってしまった。
またハンカチで涙を拭った私は笑顔で吉岡君に言った。
「もうゴミ取れたみたい」
「よかったね。他に怪我したとこない?」
「大丈夫だよ」
吉岡君はガーゼとか消毒液、絆創膏を箱に戻した。持参の救急箱らしい。
「そうだ、よかったら一緒にお昼たべない?焼きそばパンでよければたくさんあるよ」
吉岡君はバンダナの包みを開けて大量の焼きそばパンを広げた。
「スゴい数だね」
焼きそばパンが十個はあった。
吉岡君はその内の一個を私に渡してくれた。
「おいしいよ。近所のパン屋さんのなんだ」
「――うん、おいしい!いいな、近所においしいパン屋さんがあって」
「いつも食べきれない程おまけしてくれるんだ。二、三個買おうとしたら、十個くらいバンダナに包んで渡されるんだ」
「そうなんだ〜。そのパン屋さんスゴいね」
高校時代は遠くに感じた吉岡君が、今はこんなに近くにいる。
――やっぱり好き。
吉岡君のこと何も知らなかった。でも今日はちょっとだけ吉岡君を知ることができた。
もっと吉岡君のこと知りたいな――あっ、そういえば……
「ねぇ、吉岡君」
言える。吉岡君への気持ちがはっきりした今なら聞ける。これを聞くためにここに来たんだ。
「け……ケータイの、アドレス……教えてくれないかな?」
言えたー!
「ごめん」
断られた……
「オレ、ケータイ持ってないんだ」
え……ええ―っ!?