【11】ストーカー紛い?
相変わらずに前方の席に座って講義を受けている私。今隣にいるのは尋ちゃんじゃなくて生野さんだ。
尋ちゃんは多分後ろの方に座っているだろう。尋ちゃんは先生に近い席は苦手だと言っていた。
「……」
尋ちゃんと違って生野さんはおとなしい子だ。授業中は決してしゃべらない。
中学、高校時代の私に似ているような気がする。見た目や行動が昔の私に似ていて、どこか懐かしくて安心する友達。
「橘さん、今日はもう終わり?」
講義が終了してから、生野さんが言った。
「ううん、今日は午後もあるの」
「そう。私、今日はもう講義ないから帰るね。じゃあバイバイ」
「バイバーイ」
生野さんと廊下で分かれてから、私は食堂に向かった。
階段を下りていると、踊場で吉岡君とぶつかった時のことを思い出した。
告白はムリだけど、ケータイのメアドを聞くくらいなら……
よっ、よしっ!行けっ私!告白に比べたらメアドを聞き出すくらいなんだー!
ぺしぺしと自分で自分の頬を叩いて自分に言い聞かせる。
あっ、でも吉岡君どこにいるんだろう?食堂にいるかな?
「……もしかしたら」
私は校舎から出て、昨日一瞬だけ吉岡君を見た生け垣へ向かった。
この辺にいれば吉岡君来るかもしれない。
「って、これじゃストーカーだよぉ……」
急に恥ずかしくなった。周りを見渡すと誰もいなかったのが救いに思えた。
やっぱり戻ろうかなー。でも、でも……
私の足は無意識に適当な方向に歩いていた。そしてどうしょう、どうしょうと迷っていると頭を何かにぶつけてしまった。
「ごめんなさい!ってあれ?木?」
はぁ……何してるのよ私。メアドも聞けずに、ただただストーカー紛いなことしかできなくて、夏にはカルピス原液を飲まされて、一生独身で……
「橘さん?」
「はい?」
振り返ればそこには――