【10】桜吹雪にどこ行くの?
ちょっと早く終わっちゃったな……
講義が終わって、尋ちゃんに言われたように食堂に来たけど、尋ちゃんはまだ来てない。
窓際の席に座ってようかな。
窓の外には桜の木があるけど、桜は散り終わってしまったようだ。
桜の花もっともっと見たかったな……あれ、何か、眠いかも―……
「――ひゃっ!」
突然、頬に冷たい感触が伝わった。それと同時に私は目を覚ました。
「待った?ゴメンね〜」
そう言った尋ちゃんだけど、謝る人がこういう起こし方するかな?変な声出しちゃったよ……
「待たせちゃったお詫びにこれあげるね」
「ありがとう」
――あはは。これさっき私を起こす(驚かす)ために使ったコーラだ。
尋ちゃんから赤い缶を受け取ろうとしたときだった。急に強い風が吹いて、窓を震わせた。
反射的に窓の方を見ると、地面に溜まっていた桜の花びらが風で舞い上がっていた――これが桜吹雪?
「きれい……あれっ、吉岡君?」
「ん?どうしたの、望美ちゃん」
生け垣の向こうに吉岡君の顔が一瞬見えた。でも――
「ううん、何でもないよ!」
――何もできない。
「嘘ぉ。吉岡君って言ってたじゃない。あっ、もしかして望美ちゃんその吉岡君のこと――」
「そっ、そんなんじゃ……」
あるけど……
「顔赤いよ〜」
「もうー。それよりお昼食べようよ」
尋ちゃんは、はいはいと言いながら詮索はしてこなかった。
尋ちゃんはパスタを食べながら、午前の講義の文句を言うのに夢中になっていた。
マシンガントークには疲れるけど、変に冷やかされなくて良かった〜。
そういえば、吉岡君どこに行こうとしてたのかな?
「――で、その先生いきなり宿題出してきて、しかもそれ明後日までにやれって酷くない?まだ右も左も分かんない一年生にそれはないよね?」
「そっ、そうだね」
尋ちゃん、もうフォークが止まってて、口が声を出すのに集中しちゃってるよ。
このままだと食べる時間なくなっちゃうよ?
「尋ちゃん、後十分しかないよ。早く食べた方が」
「あっ!食べるの忘れてた!急がなきゃ!」
食べるの忘れるって、目の前に料理あるのに……フォークも持ったままだったのに……あはは……