序章 ~心の雨~
初投稿作品になります…!
この春、中学生になり、将来の夢に向かい、一歩踏みだそうと思い、この作品を制作しました!
楽しんで頂けたら、幸いです!
今にも雨が降り出しそうな天気。
先程まで晴れ渡っていた空は、どんよりとした灰色の雲に覆われて、空の青は微塵にも見えない。上空の雲は留まることを知らずに流れていく。1秒だって、同じ空が無いくらいだ。
そんな6月ならよくある天気のその日。人気の無い住宅地を、一人の少年が歩いていた。
(なんであんな子が、あんなところに……。それに……)
考え事をしながら歩いていると、自分の前に何かが立ちはだかり、優斗は足をとめた。前を向くと、無機質な灰色が、何をする訳でもなくそこにあった。目の前にあったのは電柱だった。それも、気付くのが一秒遅れていたら、ぶつかっていただろう距離に。
「あっぶねぇ……」
目を丸くしていた優斗は、不意に左側の家を見て、その目を更に見開くことになった。自自身の家の三軒先まで歩いていたのだ。
「……ハァ……。」
溜め息をついて、来た道を引き返す。しかし、一歩踏み出した途端に、優斗の頬に、水滴が落ちた。
「……! ……?」
驚いて上を見上げると、また一つ、二つと優斗の顔に水滴が落ち、滑り落ちていった。
ーー雨か……。
優斗は、動こうとしない。そこに存在していることを、望みもしないし、嫌がりもしない。今、優斗の頭は、一人の少女のことでいっぱいだった。
最近髪を切っていないせいで、長く伸びた前髪から、規則的に水滴が落ち、優斗の視界を一瞬遮ってから、Tシャツに染み込んでいく。
やがて、水滴は数を増していき、ゆっくりと、しかし確実に。優斗の服と、心を濡らしていったのだった。