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牢獄にて

 河原崎町襲撃からどれくらい時間が過ぎただろうか。


 加賀紀一郎は牢屋の中に居た。


 竜騎士に飛び掛かり揉み合いになった際、殴られ気を失ない加賀紀一郎はそのまま城塞都市ヴェルターへと連れて来られたのだ。


 はじめは身体検査や尋問らしき事を受けたのだが言葉がまったく通じず、紀一郎自身も何とかコミュニケーションを取ろうと努力したものの、その甲斐もむなしく徒労に終る。


 今では向こうも諦めたのか、そういった事は行われずただ牢屋に入れられるだけだった。


 最初の頃は殺されるのではないかとか拷問されるのではと怯えていたが、以外と丁重に扱われているのを見て今ではそういった恐怖心はさすがにもう無い。


 さしあたり現状で一番の問題は出される飯が不味いという事か。


 複数の囚人を収容する為なのか広さだけはそこそこある石造りの牢屋で、ベッド代わりに積み上げられた藁の山を背もたれにして今日何度目かの独り言をつぶやいた。


「暇だ」


 独り言はあまり言わないタイプなのだが暇と孤独を持て余し、自然と一人で呟く様になっていた。


「今日が六回目の藁交換だから牢獄生活十二日目か。でも最初の頃数えて無かったからもうちょっといってるか」


 取調べ等を受けていた時期は考える余裕が無かったので、連れて来られてからの正確な日にちは分からない。


 格子の付いた向き身の窓から入ってくる昼夜の景色を頼りに暦を手繰っていた。


 紀一郎は大きく溜息をつく。


 彼の幽閉されている場所はヴェルター城とは渡り廊下で繋がっている別の建物で、町を見下ろせる場所にある。格子を見ると日が傾き始めていた。


 無意識に手が左胸に行く。内ポケットには鈴谷八重が連れ去られる直前に彼に渡したチョコレートが入っていた。


「いかんいかん、これは最後の砦だ」


 何度も食べたいという欲求に駆られたが、万が一食べる物が無くなった最悪の時に食べようと思いとっておいたのだ。


 今が最悪といえなくは無いのだが、願掛けというかお守りとして持っていたのである。


 また身体検査をされた時に持ち物をここの連中に取られる事なく紀一郎に返された事も、彼が楽観的に現状を考える事が出来ている理由でもあった。


 その後もぶつぶつと独り言を呟いていた紀一郎だが、何者かが近づいてくる足音が聞こえて来るとボーっとして緩んでいた表情が強張った。


 紀一郎がいるフロアには食事や看守の見回り等、決まった時間にしか人は来ないからだ。


 ポケットからキーホルダー代わりに使っているポケバトを取り出し時間を確認するが、やはりいつも来る時間とは違う。複数なのも気になった。


 身構えていると数人の看守らしき人物が現れた。


 日が傾き始めた上に元々薄暗い牢屋なのではっきりと顔は見えなかったが、中には見覚えのある顔もいればそうでないのもいる。


 何を言っているのかまったく分からない、聞き取れない言葉をいくつか彼ら同士で交わした後に扉が開かれるとボロボロの服を来た人物が中に入れられ閉められる。


 看守達は鍵がしっかりと閉められているか確認するとニヤニヤと笑みを浮かべながら去って行った。


 その光景を見ていた紀一郎は戸惑いをそのまま声に乗せ去って行った看守達の方とその人物とを何度も交互に目配せをする。


「えっ!? え?」


 その人物は多少薄汚れてはいたが鮮やかなピンクブロンドの長髪を湛え、背は紀一郎より少し高い位だろうか。


 少し痩せすぎな感はあるがスレンダーながら芸術的な曲線と凹凸を描いた体は薄明かりにとても良く映えていた。

 

つまりとても綺麗な少女だったのである。

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