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彼は◯◯◯◯。  作者: 佐伯むーあ
2/2

〜友情〜

一晩中泣いて頭がぼーとしている。

それでも会社に行こうと洗面台へ向かう。

足が重い。

洗面台の鏡に映った自分に愕然とする。

瞼は腫れ、マスカラが落ち黒い涙の後がついている。

あまりに酷い顔に会社を休むことにした。

顔を洗ってリビングに行き携帯を取り出し、履歴から会社の番号を探しかける。

ワンコールの途中で繋がった。


「株式会社スコット、秘書室中川でございます。」

会社に電話をすると親友の由美が運良く電話にでた。

「あっ。由美…。私。」

絞り出した声は泣きすぎて枯れていた。

「どうしたのよ。その声?」

驚きながらも私だとすぐに分かってくれた由美。

「ちょっと色々あって申し訳ないんだけど、今日は休む。社長のこと、よろしく。

今日は新商品のCM打ち合わせがあるから遅れないようにしてあげて。」


まだ彼を気にかけている自分が少し情けないが、仕事は仕事だ。と自分に言い聞かせた。


「分かった。適当に理由つけとく。

仕事のことは気にしないでいいから。」

深く理由を聞いてこない由美の優しさが有難かった。

「ありがとう。」

それだけを言って電話を切った。


電話からどれくらいの時間がたったのだろう…。リビングのマットに座りボーッとしていると、いつの間にか外が暗くなっていた。

その時、インターフォンが鳴った。

ピーンポーン

出る気がしないのでほっておく。

しかしまたインターフォンが鳴る。

ピーンポーン

ピーンポーンピーンポーン

ピーンポーンピーンポーンピーンポーン

しつこいな。音が聞こえないようにクッションに顔をうずめる。

鳴り止む気配がないまま数分が過ぎた。

諦めドアを開けると由美が立っていた。

「やっぱりいたんじゃない。私の粘り勝ちね!!ちょっとお邪魔するわね。」

返事を待たずに由美はブーツを脱ぎ家の中に入っていく。

呆気にとられた私は言葉が出ず由美の後ろに着いていくことしかできなかった。

何度か遊びに来ていて勝手が分かるようになったらしく、一直線に台所へ向かう。

「ひどい顔。

どうせ何も食べてないんでしょ。

冷凍炒飯買ってきたから一緒に食べよう。」

手際良く準備し、炒飯をレンジに入れる由美。ただ立ち尽くしている私を見て

「座ってな。」

とダイニングキッチンにある椅子に座るように促された。

黙って頷き4脚あるうちの一番奥の椅子に座る。

しばらくするとレンジが温め終わったことを知らせる音がなった。

由美が綺麗にお皿にもった炒飯を二つ持ち運んで来てくれた。

「さぁ食べよう。私この炒飯大好きなんだ。

不思議なくらいどんな時でも食べられるから…。いただきます!」

由美の気持ちが嬉しく一口だけでも食べようとレンゲを持ち手を合わせる。

「…ます。」

一口分をレンゲに取り口に運ぶ。温かいご飯が口に入ると口が咀嚼を始める。少ししょっぱい炒飯を飲み込むと体が少し元気になった気がした。

もう一口。もう一口と食べ始めると、それを由美が微笑みながら見守ってくれていた。

目が合うと

「やっぱ美味しいよね。」

と笑った。私もつられて少し笑った。

「うん。美味しい。」



二人とも綺麗に平らげると由美が片付けてくれ、紅茶を入れて持ってきてくれた。

二人とも黙ってコップに口をつけた。

紅茶の香りと温かさが体を包むと、なんだかホッとした。


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