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ただ……願う  作者:
本編
57/75

バレンタイン特別小話

このお話は本編の時系列と関係ありません。

3人の関係性は30話後ぐらいの、2人を友達と認めたあたりだと思ってください。


「み~お!」

「…………」



 牧瀬はいつものように私によってきた。

が、その次に発する言葉は違った。



「チョコちょーだい。」


「何で私があんたにあげなきゃいけない?」




 本日2月14日はバレンタインデー。

昨日朱音は手作りケーキを作ろうとしてなぜか電子レンジが爆発したらしい。

……生卵電子レンジに入れたんじゃないだろうな。



「いいじゃん、ちょうだいよ。」



 ニコニコと笑う牧瀬に私はあっけらかんとした態度で答えた。



「用意してないものを渡せと言われても無理。」


「そんなこと言って~。本当は用意してるんでしょう?」


「してない。」



 牧瀬には借りはあったが返したし、別に好きでもないのにチョコレートをあげる理由がない。

いや、女子が好きな男子にチョコをあげるというのは日本のお菓子会社の経営戦略でできたもので、実際欧米諸国では親しい人にあげるものらしいが。

まぁ、私は日本人だから日本の伝統に沿うべきであろう。



「マジ……?」



 絶望と言う言葉がぴったりの牧瀬の表情に、少し……ほんの少し申し訳なさというものを覚えた。



「マジだけど、何?」



 それでも冷たく突き放すと、牧瀬は今にも泣きださんばかりの表情で私の体をぐらぐらと揺らしてきた。



「義理チョコでいいからちょうだいよぉ!!」


「だから用意してない!」



 鬱陶しい……面倒くさい……いつものことだけど。



「真のを用意してないってことは、俺のも用意してないんだな。」

「!? あ……さぎり、先輩…」



 朝霧先輩と言うのはどうしてこうも神出鬼没なのだろうか……。



「義理チョコぐらいはくれるかと期待してたのにな。」


「……すみません。」


「なんで琢磨には謝るの!?」



 なんとなく、朝霧先輩には謝らないといけない気がする。

やっぱりバスケの面では尊敬しているし。

というか、牧瀬は無視してもいい気がするのだ。



「本当にないのか?」


「…………」



 実を言うと、牧瀬があまりにもしつこかった時のために用意してある。

言葉であしらうのがめんどくさくなったときのために。


 朝霧先輩には、何かとお世話になったし…でもチョコとか嫌いじゃないのか…?

とか思いながら、結局用意してある。


 それならば何故嘘をついたのか。

牧瀬にそのままあげるのが癪だったからだ、なんとなく。

朝霧先輩は牧瀬の流れで、まぁ。



「朝霧先輩は……チョコ、嫌いじゃないんですか?」



 硬派っぽい人間と言うのはどうも甘いものが嫌いそうだというイメージがある。

……いや、イメージで決めるのは良くないな。

現に私はイメージに全くそわず、甘いものは大好きである。

が、朝霧先輩はイメージ通りでよかったらしい。



「好きじゃない。が、嫌いでもない。」



 ならば渡さないほうがよいのだろうか、と思った私の気持ちを読んだかのように朝霧先輩はすぐに言葉を続けた。



「ただ、もらうことに意味がある奴もいる。ようは気持ちだ。」


「……はぁ。」



 気持ちって……大した気持ちは入ってないのだが。感謝や尊敬の気持ちくらいで。

それこそ欧米諸国の風習にのっとったものだ。

……日本人だから日本人の伝統に沿うというのは前言撤回しよう。


 まぁ、朝霧先輩がほしがってるからあげるべきか?

別にあげたくない理由もないのだが……朝霧先輩にあげれば牧瀬がまた騒ぎだすことは間違いない。



「チョコ、あるぞ。」


「!? ……はぁ。人のカバンを勝手にあさらないでください。」



 なんか朝霧先輩に対しては何をされても半分以上あきらめの気持ちがあるけど。


 そして、予想通り朝霧先輩の言葉に過剰に反応する人間が一人。



「俺の分もある!?」


「2つあるな。……俺とおまえの分とは限らないけどな。」


「えぇ!? 実央、好きな人出来たの!?」



 いや、さっきから朝霧先輩の言葉に振りまわれすぎだろう、牧瀬。

だいたい牧瀬の話のとびっぷりにはついていけない。

どうして牧瀬と朝霧先輩の分じゃなかったら、好きな人ができた、という話になるのか全く理解できない。

普通に朱音の分、とかいう発想は出てこないのか。



「できてない。」



 ため息をつきながらそう答えると、牧瀬は期待に目をキラキラと輝かせた。



「じゃあ、これ、俺の分!?」


「……まぁ、そう。」


「やった! ありがと、実央!!」



 牧瀬の周りを照らすような笑顔。



「マジで俺の分なのか?」


「マジです。」


「……ありがとな。」



 朝霧先輩の温かく、包み込むような笑顔。



「ね、実央。ホワイトデー何ほしい?」


「なんでもいい。」



 別に、見返りがほしかったわけじゃない。



「真面目に答えてよー!」


「リクエストがあった方が選びやすいよな。」


「ほら、琢磨もこう言ってるし…」



 何も返してくれなくてもいい。



「なんでもいいってば。」



 私の好きな、2人の笑顔が見れた。

 

 好きなのは笑顔のみだけど。

後ろで牧瀬がギャーギャーうるさいけど。

いつの間にか横に朝霧先輩がいて、また驚いたけど。


 2人のあの笑顔が見れるなら、来年もまたこの日にチョコをあげてもいいかもしれない。


だいぶ前に書いていたものなのですが(それこそ去年のバレンタインぐらい)思ったより手直し部分が多くなってしまい、時間がかかってしまいました。

んー……こういうのを見るとなんで昔こんな風に書いたんだろうなぁと疑問に思ったりすることが多々……(^_^;)

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