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ただ……願う  作者:
本編
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第42話



 最近、姫野が志乃子へ猛アプローチをしている。

何かと志乃子ちゃん志乃子ちゃんと話しかけていて―――今はもう呼び方が志乃子になっている―――最初は志乃子も警戒していたものの、だんだんと普通に友達として接するようになっていた。


 志乃子が牧瀬を好きだとおそらくそう思っているはずの姫野がどうしてそんな行動に出ているのか皆目見当がつかないが、まぁ仲がいいことは悪いことじゃないと思うので、いい……のかな。


 のかな、とついてしまうのには、姫野が牧瀬と志乃子を見るときの目が異様であるからで。

彼女の目的は未だ不明……。

まぁ、私の考えすぎっていう線もあるんだけど。



「ねぇ、志乃子。ちょっと話があるんだけど、いい?」


「ん? いいよー、今日部活OFFなんだ。」



 いつもより真剣なトーンで話しかけた姫野に気付かなかったのか、志乃子はいつも通りの口調で答えた。



「あ、でも今日実央ちゃんと一緒に帰ろうって……」


「別に私は一人で帰るからいい。」


「あ、そっか……」



 あからさまに落ち込む志乃子。

……あぁ、本当に世話の焼けるというか。



「一緒に帰りたいなら待ってるけど。」


「! ……ありがとっ、実央ちゃん。」



 一緒に帰りたいって一言言ってくれれば早いんだけど。

まぁ、それが言えないのが志乃子か。






 私の言葉に笑顔を向けた志乃子は10分後、酷く沈んだ表情をして帰って来た。



「……お待たせ。」


「いや、そんなに待ってない。帰るか。」


「……うん。」



 それだけ何かありましたーっていうオーラを出されると逆に聞き辛いというか……



「あのさ、何かあった?」



 それでも聞かないわけにはいかないので躊躇いながらも口にすると



「……ううん。」



 否定の言葉が返ってきた。


 普通に姫野から何か嫌なことを言われたのならば、志乃子は告げ口とかそういう事を特に考えず、私に半泣きになりながら報告するだろう。

志乃子が私に対して言いたがらないということは、姫野が言った事が私に関する事……とか。



「何があったか知らないけど、姫野が知ってる事であんたの知らないことはないと思うけど。」



 志乃子は私の言葉に目をぱちくりさせた。

そしてしばらく考え込むようなしぐさをしたかと思うと、ポツリと言葉を漏らした。



「そっかぁ……そういうことかぁ。」



 ……よくわからないが、納得できたならよかった……か?


 これ以上志乃子に聞くのは諦めようと思ったその時、志乃子は話し始めた。



「あのね、桜華ちゃんから……実央ちゃんの事でって話を聞いたの。」



 やっぱり私のことだったか。

何のデマでっちあげったんだろうな。



「桜華ちゃん、実央ちゃんが牧瀬先輩のこと、その……すごいバカにしてるって言ってて……牧瀬先輩が実央ちゃんに好意を持ってるのを、実央ちゃんは知ってて牧瀬先輩の事を邪険に扱って裏では牧瀬先輩の事すごい酷い風に言ってるって……。」



 ……普通、それって男がかけられる容疑じゃないのか。

ほら、よくあるじゃないか。自分に好意を持たせといて裏では笑ってる嫌な男。

女もあるか?だとしたら私って相当な悪女じゃないか?



「あの……実央ちゃん? ……怒った?」



 黙ってる私に志乃子は不安そうに聞いてきた。


 つい自分の頭の中でふざけてしまった。

ごめん、志乃子。



「いや。……というか、あんたそのくだらない話信じたの?」


「し、信じてないよっ!」



 志乃子はブンブンと首を横に振る。

あーー……そんなに振ったら細い首が折れるって。



「お、落ち込んでたのは、そういえば私実央ちゃんの裏知らないなぁって思って……で、桜華ちゃんは知ってるのかなって思ったらなんか、悲しくなってきて……」


「別に裏も表もあるつもりはないけど。」



 そうだよね、と納得したように頷く志乃子。


 もし裏があったとしたって、それをいちいち姫野に見せる趣味はない。



「だいたい、あんたが見てるより黒い私って想像できる?」



 志乃子はポカンとした顔をしてから、ぷっと吹き出した。



「ふふっ……できないね。」


「そういうこと。」



 穏やかな空気が流れる。


 その空気を見事に引き裂いたのは志乃子の次の一言。



「じゃあ、私明日ちゃんと桜華ちゃんの誤解、解いとくね!」


「え……もう別にいいけど。」



 彼女は姫野の言葉悪意なく、誤解によって生まれたものだと信じているようだった。


 たぶん……これは私の推測にすぎないが、姫野は志乃子が牧瀬先輩を好きだと思い、私と牧瀬に関することで志乃子への私の態度を悪くさせ、結果的に志乃子が牧瀬に嫌われればいいと思ったのではないだろうか。


 あーなんてめんどくさい乙女心。

回りくどい作戦。……いや、あくまで憶測にすぎないのだが。


 というか、思ったのだが、その作戦には志乃子は非常に不向きに思える。

そもそも私に対して強く言ったのは過去のその一言のみだ。

たとえ志乃子が本当に牧瀬を好きだったとしても、他の女子のように陰湿なイジメなどはできないタイプであろう。


 まぁ、でも作戦の標的が牧瀬の事を好きな女の子だとすれば、不向きであっても他の子に相談することで結果的に志乃子が責められると思ってのかもしれない。

他の子じゃなくて当の本人に相談してきたけど。


 うん、でも、一応今のところすべて憶測にすぎない。



「でも、このまま実央ちゃん誤解されるのは嫌でしょ?」



 そう、あくまで憶測にすぎないものを志乃子の前で披露するのはどうかと思う。

仮に本当に誤解だった場合、私が物凄く酷い人になる。



「いいんだけど……まぁ、勝手にして。」



 とりあえず、明日は志乃子から目を離さないようにしておこう。


志乃子は間違いなくド天然です(笑)


誤字・脱字等があれば教えていただけると嬉しいです^^

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