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ただ……願う  作者:
本編
21/75

第20話



『でね~玲衣さんったら~』



…朱音のノロケも聞き飽きてきた。いや、最初から聞くのは嫌だったんだけど…

時間もそろそろ行かなきゃ怪しまれる。

まぁ、トイレ行くって言ってる時点で怪しまれてるんだろうけど。



「朱音。随分長いこと話してるけど、お兄ちゃんほったらかしにしてるの?」


『あぁ!そうだった!!』



そんなこと、だいぶ前から気づいてたけど、朱音は気付いてないみたいだし…利用した。

ごめん、お兄ちゃん。



『じゃあ、切るね!』


「じゃ―」



プープープー


…いくら慌ててたからって返事を聞いてから切るのがマナーだと思うのは私だけだろうか?



「ごめん、遅くなった。」



私が座っている3人に声をかけると、3人とも驚いたような顔でこちらを見てきた。

…なんなんだ?



「「「………」」」


「…何の沈黙?」



何かあったのか…?

もしかして愛央が何か余計なことを言ったとか…

私が疑惑の目を愛央に向けた時だった。



「あのさ…」


「実央。」


「!?!?」



あのさ、そう呼びかけたのが朝霧先輩で。実央、と呼んだのが牧瀬。

…じゃなかった。



「朝霧先輩…?」



突然…どうして、名前を呼び捨てに?



「今だけそう呼ばせてもらう。青谷、って呼んでたらお前の姉ちゃんと混同する。」


「あ…はい…。」


「なんで俺の時はあんなに怒ったのに琢磨の時はそんなに優しいの!?」



ウザい…ウザいんだよ、牧瀬!



「お前には「今だけ」って言葉が聞こえなかったのか?だいたい今じゃ、お前の好きなように呼ばせてやってる。」


「だって…」


「言い訳はいらない。ぐちぐち言うのは見苦しい、牧瀬。」


「………」



やっとのことで牧瀬は黙った。

ったく…



「実央。」


「っ…なんですか?」



牧瀬の「実央」はもう聞き慣れてしまったが、朝霧先輩に呼ばれるとどうも落ち着かない。



「ケーキ。もう食わねぇのか?」


「……食べますよ。」



そう言ってケーキを取りに行くために私は席を立った。

いろんなケーキが並んでる…おいしそう。

まだ食べてないのと…あと、これと…



「まだそんなに食うのか?」


「!?朝霧先輩…?」


「驚くなよ。」



いや、驚くでしょう。

神出鬼没にもほどがある。



「なんでいるんですか。」


「お前についてきたからだろ?」


「だから…ケーキ。食べないんですよね?」


「…せっかくだし、一つぐらい食べるか。」



当たり前だ。

食べないとお金がもったいない。



「どれが甘くない?」



甘いもの嫌いなのにこの人ケーキバイキングなんかに来たのか…。



「ケーキはどれも甘いですよ。」


「マシなのは?」


「ティラミス…とか?」


「どれだ?」


「これですよ。」



そう言いながら、私はティラミスを取って朝霧先輩のお皿に乗せた。



「サンキュ。」


「いえ…」



お皿から顔をあげると、こちらを見てる朝霧先輩と目があった。



「……今日はやたらと目が合いませんか?」


「そうだな。」


「…なんでこっち見るんですか?」


「………」



食べてる時も、今も。

やりにくすぎるんだ。



「お前がいつもと違うからじゃないか?」


「はい?」



朝霧先輩が何を言いたいのかよくわからず、聞き返した。



「髪。似合ってる。」


「…ありがとう…ございます。」



予想外の言葉に意図せずお礼が口に出た。



「また今度、その髪型してこい。」



今度っていつだよ、と思いつつも



「はい。」



って答えている私がいた。



席に戻ると携帯をくっつけてる2人がいた。

…赤外線?



「…何してんの?」


「メアド交換してるの~。」



愛央はいつの間に年下好きになった…?



「牧瀬。」


「何?もしかして妬いてくれてんの!?」


「いや、ない…」



妬いてない。

それは確かだけど…



「軽いな、牧瀬。」



なんかムカつく。

それも確か。



「え!?そんなんじゃないって!実央!!」


「何がそんなんじゃないんだ?」


「何がって―…なんだろう?」


「自分でも分からないのに適当なこと言わない方がいい。」



結局男は、愛央みたいな女の子を選ぶ。

彼氏がほしいとも思わないけど。

ムカつく。



「…牧瀬。」


「はい。」


「愛央に変なことしたらどうなるかわかってるよな?」


「変なことなんてしないから!!」


「どうだか。」



私が牧瀬を睨んだら、突然愛央が笑いだした。



「―ぷっ…はははは!お、おもしろ…」


「…何が?」


「み、実央の表情…」



そんなに苦しそうになるぐらいに笑うか?

というより、何がそんなに面白いんだ。



「…人の顔を見て笑うって失礼。」


「ご、ごめん…でも…あははは」



もーいい!

私はケーキを食べることだけに集中する!!


それからしばらく。

私と愛央が制限時間までケーキを食べ、満足して出て行った。



「あぁ!今日は笑った!2人ともありがと。」


「…愛央が勝手にバカ笑いしてただけ。」



私は一瞬たりとも笑ってない。



「そう言うことを言わないでよ、実央!」


「……人の顔見て笑ったくせに。」



少し拗ねたような口調で言うと、愛央がへらへら笑ったまま言った。



「はいはい、ごめんごめん。」


「心のこもらない謝罪は受け取らない。」


「ごめんってば~」



本気で思ってないだろうけど…仕方がないから許す。



「もういい。それより、暗くなる前に帰った方がいい。」


「夏だしそんなに早く暗くならないわよ?」


「そんなこと言って襲われても私責任取らないから。」


「あーもー、わかったわよ。帰らせてもらいます。じゃあね、牧瀬君、朝霧君。」


「さよなら~」



牧瀬が大きく手を振るのに対し、朝霧先輩は軽く頭を下げただけだった。

別にどうでもいいけど。



「ホント、実央と愛央さん、仲いいんだな。」


「普通。」


「いや、仲いいよ。今日は実央のいろんな表情見れたし。」


「…あっそ。」


「うん。」



なんでそんなに嬉しそうなんだか…。

愛央とつながりが持てたから?



「お前はやっぱり愛央みたいなタイプが好きなんだ。」


「実央…ヤキモチ??」



牧瀬は私が「ありえない」って答えるってそう思ってる。

予想外の答えを返したら、彼はどんな反応をするだろう?



「そうだけど?」


「だよねー……って、えぇ!?」


「冗談。」


「…笑えねー…」



…面白いかもしれない…



「私は結構楽しい。」


「…はぁ。」



なんでため息をつくんだ。



「まぁ、いっか。」


「何が?」


「…言ってほしい?」



何が。



「おい、真。」


「!?」



牧瀬は朝霧先輩の声にはっと驚いた顔をして、ため息をついた。



「俺の存在忘れてんじゃねーぞ。」


「…琢磨。悪いけど今だけ消えてくんない?」


「無理だな。」


「だよなぁ…」



何なんだ!!



「何がしたい。」


「えぇ~…じゃあ、実央の笑顔が見たい。」


「じゃあ、ってなんだ?しかも無理。」


「だよなぁ…」



あぁ!もう!!

どうして牧瀬の話は理解できないつながりになってるんだ!?



「青谷。」


「…なんですか?」



実央、じゃない。青谷、に戻ってる。

…別にいいんだけど。

その方が問題ないんだけど。なんか…なぁ。



「今日の夜、電話する。でろよ?」


「え?あっ、はい。」



あれ?何ではいって言ってるんだ??



「えぇ!じゃあ、俺も電話する!」


「いや、しなくていい。」


「する!今日ケーキ奢ったし!!」


「…もう勝手にすれば…」


「やった!」



最悪…最悪だ。

朝霧先輩の言葉には「はい」って答える癖がなぜかついてるし、牧瀬には押し切られるし…。

なんか私の生活が崩れてる気がする…。



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