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ただ……願う  作者:
本編
20/75

閑話・愛央

愛央ちゃんsideで続きのお話になります。

これナシで進むとちょっとん?となるかもしれません。

それでもいい、もうちょっと謎い方が面白い!という方は飛ばして20話へ。

え、何があったか気になるし、どういうこと?って疑問に思いたくないという方はお読みください<(_ _)>



「なんでトイレまで行く必要が…」


「逃げられたな。」


「……だな。」


「あれだけ見てたら逃げられるよ。」



まぁ、実央があんなに困ってるのを久しぶりに見れて私は嬉しかったんだけどね。

本当に表情の移り変わりが分かりにくいから、実央は…。


あの時から実央は本当に笑わなくなった。

つい、笑わせれた!やった!って思っちゃうほどには。



実央は決して詳しい事を語りたがらないけど、何が起こったのかは、実央の言葉とそれまでのあの人の態度でなんとなく想像はついた。

いくら鈍い私でも、想像がつくぐらいだから…きっと、実央はもっといろんなことを感じとって、いろんなことで傷ついていたんだろう。



「それにしても、愛央さんと実央はやっぱり違いますね…」


「何が??」


「愛央さんはよく笑ったりするのに、実央は全然笑ってくれないんですよ。」



あぁ…実央が言ってたのは本当だったんだ…。


でも…でもね。

私の前でしか笑わない、って実央は言ってたけど、実央は私にも見せたことのないような表情を2人に見せていた。

困った顔や怒った顔、少しいじけた顔とか…。


実央はきっとなんだかんだ言って、誰よりもこの2人に心を開いている気がする。

でも、いくら心を開いても実央はきっと何も言わない。

いつまでたっても、自分のすべてをさらけ出したりしない。たぶん…私みたいに弱くないから。

私よりずっとずっと強いから。自分の中で抱え込もうとする。



私は…すべてを知っているけど、何もしてあげられない。

お姉ちゃんなのに…何もしてあげられない。

でも、彼らなら…



「ねぇ、聞いてほしいことがあるの。」


「なんですか??」



牧瀬君は体の重心を少し前に倒して聞いてきたけど、朝霧君はちらっとこっちに視線をむけただけ。



「実は…」


「青谷…実央のことか。」


「うん。」



私が答えると朝霧君はこちらに向き直った。



「私の過去も話さなきゃいけなくなるんだけどね……私と玲衣は付き合ってたの…。」



私と玲衣の別れ。

実央がそれを聞き、壊れそうな私に寮を勧めたこと。

それが家族を崩させてしまったこと…



「…玲衣はね…とっても傷ついたんだって。私が壊れかけてきたときと同じぐらい…」



そう、みんな傷ついてた。

玲衣も私も。お父さんもお義母さんも。…そして実央も。

みんな苦しんでた。


でも、その中で唯一苦しみを見せなかったのが…

実央だった。



「…今日私と話してて、気づいたかな?」



決して誰にも傷を見せなかった実央。

他の人の苦しみを受けとめようとした実央。

そして、そのせいで今も誰よりも傷がはっきりと残っている。



「私と実央の声。似てるの。」



私の言葉に牧瀬君と朝霧君はなるほど、と言ったように頷いた。



「…そういうことか…」


「あの事とつながる…な。」


「あのこと?」



牧瀬君はゆっくりと口を開いた。



「この前…2人が話してるの聞いて。俺、2人が義兄妹なんて知らなくて、実央は玲衣さんのことが好きなんだって思ったんです。」


「ははっ、ホント?まぁ、実央は玲衣のことは結構気に入ってるみたいだけど…」



実央は玲衣を恋愛対象に見ることは絶対ない。

私の元彼で、親友の今彼である、玲衣だけは。



「勘違いした理由はいろいろあるんですけど…1番気になったのが、玲衣さんと話してる時の実央の声がいつもより高い声だったんです。」


「…!?」



そんな細かいこと、気づいたんだ…すごいな、牧瀬君。



「実央はわざわざ声を作って人に話したりしない奴だって俺は思ってます。だからこそ、なんでか気になって…」


「途中から玲衣と名前で呼ばなくなった、とも言ってたな。」


「…実央が聞いてほしくなさそうだったし、聞いても答えないと思ったのでその場では何も言いませんでしたが、正直気になってました。」



実央の性格からわずかな変化まで。

しっかり見てる、彼らは…



「でも、愛央さんの話を聞いてだいたい、わかりました。」



実央と私の声はそっくり。

私が寮に行って…傷ついた玲衣。

その玲衣に実央が「玲衣」と呼びかける…


どうなるか、わかるよね。

だから実央は「お兄ちゃん」って呼ぶようにしたの。

玲衣がどんな反応をしたか、詳しくは知らないけど…。

声のトーンも変えるようにしたらしい…。



「しかもね、玲衣だけじゃなかったの。」


「…どういうことですか?」


「お父さんとお義母さんよ。」


「………」



実央の本当の声を…私以外の家族全員、きっと今は知らない。



「ごめん、遅くなった。」



実央が戻ってきちゃった。

もう少し、時間がほしかった。

そしたら…彼らに実央のすべてを話すことができたのに。


何もできない私の代わりに、何かしてもらえたかもしれないのに…。



これが愛央と実央の声の事、ですね。

この話がなくてもなんとなく伝わるかなぁ…とか思ったんですけど、やっぱりないとわかりにくいかなと思ったので。

本編は実央sideでまとめたいので、こうやって閑話でちょいちょい他の人のsideを入れると思います。

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