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ただ……願う  作者:
本編
17/75

第17話

ごめんなさい(・・;)

短めですっ…。



じめじめとした梅雨はいつの間にか過ぎ去っていた。



「実央!携帯貸してっ。」


「無理。」



廊下ででかい声で話さないでほしい。周りの注目を集めている…おもに牧瀬が。



「いいじゃん!別に悪い事するわけじゃないし!!!」


「牧瀬のアド、登録する気でしょ?絶対イヤ。」


「別にいいじゃん、実央…」



牧瀬VS私の時に相変わらず朱音は牧瀬の味方をする。




「夏休み中、こいつとメールしようとは思わない。」


「実央~」



そう。

今日は終業式。明日から夏休み。



「学校がなかったら結構会えないんだよ!?だからさ、いいじゃんメアドぐらい…」


「無理。」



牧瀬のことだ。

きっと毎日のようにメールしてくるに違いない。

携帯は手の中にある。カバンの中にあろうものなら、牧瀬が勝手に物色しだすからだ。



「私はお前に教える気なんて――っ!?」



話してる途中、携帯が突然手から消えた。



「あ…さぎり…せんぱい?」



消えたんじゃなかった。

いつの間にか後ろにいた朝霧先輩が私の手から携帯を取っていた。

それでなんかいじってる。



「ちょっ、琢磨!?」


「ほら。青谷。」


「え?あ、はい…」



携帯は少しいじられて、すぐ返された。



「俺のアドと番号。登録しといたから。」


「はぁ…」


「なんで琢磨はいいのに俺はダメなの!?」


「別に朝霧先輩も許可はしてない…」



てか、いつの間にいたんだろう、朝霧先輩…。

神出鬼没とはまさにこのことだ。



「琢磨、ずるい!俺にも教えろよ!?」


「…って言ってるけど。教えてもいいのか?」



朝霧先輩の問いに私は即答した。



「ダメです。」


「いいじゃん!」



あーもーだるい。

牧瀬と話すのはしんどい。



「こっそり琢磨に教えてもらうからな!」


「勝手にすれば?もし連絡来ても着信拒否に設定するから。」


「え!?それはダメ!」


「なら、さっさとあきめて帰ってくれない?」



はぁ、とため息をつきながらめんどくさそうに言っても、牧瀬は諦めない。



「いや、でもさ…」


「真。今日のところはあきらめろ。家、近いんだろ?夏休みでも会えるだろーが。」



いや、会いに来られても困る。



「んー…しょうがない、今日のところはあきらめるか。」


「これから先ずっと来ないで。」


「じゃあ、実央、明日、家行くから!」



何の用もないのに来られても困るし。



「居留守使う。」


「それってひど――」


「帰るぞ、真。」



牧瀬はそのまま引きずられて帰って行った。



「実央…」



それまでやり取りを黙って見てた朱音が口を開いた。



「何?」


「実央は朝霧先輩のことが好きなの?」


「は?」



どうやったらそんな風に思えるんだろう。



「だってさ…普段なら実央さ、あんなことされたらすぐに登録された番号着信拒否にするじゃない?」


「まぁ…」


「朝霧先輩のはそうしなかったよね。」


「あの人のことは…嫌いじゃない…けど…」



バスケの1人のプレーヤーとしてすごいと思うし、尊敬もしてる。

実際、少し憧れもあるかもしれない。

だから朝霧先輩には「先輩」っていう敬称もちゃんと使う。

ただ…「好き」っていう感情はいまいちどんなものか分からない。



「実央は牧瀬先輩が好きだと思ってたんだけどなぁ…。」


「ありえないな。」



返答に0.1秒かかっただろうか。

それぐらいの即答だった。



「いや、少しぐらい悩んでよ!」


「無理。」



わからないものをいくら悩んで考えても答えは出ない。

きっと私はいろんな感情をどこかに置いてきてしまったんだ。

「嬉しい」とか「楽しい」とか「好き」って気持ちさえも。


朱音が今言っている「好き」がお兄ちゃんを「好き」と思うのとは少し違うことぐらい、わかってる。

私の恋愛での「好き」は、きっとどこかに忘れてきてしまったんだ。




夏休みの初日。



『もしも~し♪』



……ブチッ。



電話の向こうから聞こえてきた牧瀬の声に私は思わず切ってしまった。

すぐまた電話がかかってくる。



『ちょっと実央!?あっ、切らないでよ!!』


「…どこで電話番号を知った?朝早くに迷惑だ。」


『え~…これはぁ…木島ちゃんという味方が…」



朱音……後で覚えとけ。



「…着拒するから。」


『あっ、待って!!』



チッ…切ってやろうと思ったのに。

待ってといわれて切るほど私は鬼じゃない。だから言われる前に切るのだ。



『交換条件があるんだ!』


「…何?」


『駅前にできた新しいケーキバイキングの店!!あっこで俺がおごるから!』



ケーキ、バイキング…


…………正直に言おう。私は甘いものが好きだ。

お菓子類全般全部好き。ケーキは特に好き。


駅前にできた新しい店は、今度朱音と行こうと言ってた。

でも、なかなか行く機会が今までなかったのだ。

それに、おいしい代りに値段は結構はるらしかった。


ケーキ…おごり…



「のった。」


『よっし!!!』


「ただし、2人きりは嫌。」


『そう言うと思った。でもね、木島ちゃんその日デートらしいよ。』



…仲直りデートか。

朱音以外、誘う人なんて私にはいない…。



『じゃあさ、琢磨は?』


「朝霧先輩??」


『そう。お昼のメンバーで。どう?』



なんかそれもそれで嫌だけど…。

ケーキバイキング…おごり…



「…かまわない。」


『じゃあ、突然だけど明日。2時に時計台のところで!』



結局、ケーキの誘惑には勝てない。


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