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ただ……願う  作者:
本編
11/75

第11話




「ねぇ、実央。見に来てよ!」


「無理。」



あの虐め…?があってからも、牧瀬は教室に来ていた。

迷惑だと言ってるのに…。



「今度は何をもめてるんですか??」


「あ、木島さん!実央にバスケの練習試合、見に来てくれないかってお願いしてるんだけど…」


「私の貴重な時間を何で牧瀬のために…しかも、「練習試合」に使わなきゃいけないか分からない。」



公式試合ならまだしも…いや、公式試合でも行かないけど。



「いいじゃんかー!!」



さて、みんなは覚えてるだろうか。牧瀬がバスケ部のエースだということ。

ちなみに私は忘れてた。



「実央…あんた、いっつもやることなくて暇って言ってるじゃん!勉強わかってるからやる意味ないって!」


「ええぇぇ!!実央って頭いいの!?」



そこに驚くなよ。

そんなに頭悪そうに見えるのか、私は。



「朱音よりはマシ。」


「な!?それは…!!まぁ、事実…だけど…」


「はははは!2人ってホント仲いいよね。見てて微笑ましい。」


「そりゃどうも。」



私からすればなんで朱音が私と仲良くするのか謎でしょうがない。



「で。暇なら見に来てよ!試合。」



本当に暇なのか暇じゃないのかどっちかときかれれば…暇だ。

間違いなく暇なのだが、その暇だと思う時間を牧瀬のために使いたくない。



「…バスケに興味ない。」


「実央、堂々と嘘つくのやめようよ。」



どうして突っ込むんだ、朱音。

牧瀬に完全に肩入れしてるよな…。



「…………」


「え!?実央ってバスケ経験者なの??」



経験者っていうか…



「ミニバスやってて、中学でも強かったんですよ~」



人の許可もえずいにかってに暴露してくなよ…。



「え、じゃあどうして高校でバスケ部入らなかったの?」


「人の自由。とにかくあんたのために使う時間はない。」


「えぇ~…そんなこと言わないでさぁ…。」



くどい…何回断ればいいんだ!



「実央…行ってあげれば?」



朱音…何で牧瀬の肩を持つんだか…。

結局、私が折れて、牧瀬の練習試合を見に行く羽目になった。



まだ、朱音と一緒というのが救いかもしれない。

練習試合。相手チームはもう来ていた。



「あ!もう、アップしてるよ??」


「うん。」



牧瀬は…いた。あえて探さなくても存在感があった。

確かに、うまい。エースと言われるだけある。



「集合!」


「「「「「集合!!」」」」」



複数の声が重なる。そろそろ始まるみたいだな…

一応座る席が用意されてるんだけど…結構人座ってるし、立ち見でいいか。



「立ち見でいい?」


「OK!」



一番いい位置で試合が見れる場所…の横に立っていた人。



「牧瀬ー!頑張って~」


「牧瀬く~ん!!」


「牧瀬先輩!!!」



この前私を殴ろうとした奴らが。


…………ま、いっか。



「え!?ちょっと、実央???」



あの事は後で朱音に話した。

当然のように激怒して、私が怒ってくる!と本気で行きそうになった。

もちろん、止めたけど。ただ、その後…



「怒ってくれて、ありがとう。」



そう言った。

朱音は目を見開いて驚いたけど、にっこりと笑って



「怒って当たり前だよ!そんなこと、お礼言わなくていいって!」



と言ってくれた。

なんとなく、前より朱音と近づけた気がした。


これは…牧瀬に感謝しなきゃいけないんだよなぁ。

そう思って、今回おれた。

いくら朱音が一緒に行くって言ったって、行きたくなかったけど…。


殴られそうになったとき、守ってくれた。

人のために怒ることの意味を、教えてくれた。

…まだ、よくわからないけど、牧瀬は何か大切なことを教えてくれた気がした。


考えてみれば、今回のことだけで私は牧瀬に2つ借りができた。

で、借りはさっさと返す主義だから、さっそく1回目の借りを返そうと思った。

だから、仕方なくだけど…牧瀬の練習試合を見に行くことに承諾したんだ。



「「「「お願いします!」」」」



試合開始。

センターサークルのジャンプボール。

私の学校が勝った。マイボールからのスタートだ。



「ね、ねぇ…牧瀬先輩。めっちゃうまくない??」


「…うまい。」



すごい…相手が弱いわけじゃない。

ディフェンスはしっかり機能してるはずなのに…。

1人、2人と抜いて行く。そしてシュートを必ず決めてくる…。

すごいな…。



でも、それ以上に気になる選手がいた。

……4番だ。キャプテン????



「ピーッ!!」



1クォーター終了の笛が鳴った。



「すご~い…牧瀬先輩、一番うまいんじゃない??」


「それぞれポジションもあるけど…」



気になった人。

それは…ポイントガード。

ゲームをコントロールする、司令塔だった。



「「「「ありがとうございました!!」」」」



結果は私たちの学校の圧勝だった。

試合も終わり、下に降りると、何かが…前から来ている。

何か…じゃなくて、牧瀬なんだけど。



「実央ー!!見に来てくれてたんだ!」


「まぁ…」


「俺、どうだった!?」



自分でも今日の出来は良かったという自信があるのだろう。

目がきらきらと輝いてる…。



「うまかった。」


「マジ!?よっしゃぁ!!」



こいつを褒めるのはなんか癪だけど…まぁ、真実だし。



「おい、真!集合!……ん?彼女か?」


「あ、琢磨!実央。こいつ、男バスのキャプテン。」


「4番…」



紹介されたキャプテンは、あのポイントガード。

4番はなぜか驚いたような表情で私をじっと見てきた。



「実央…?………お前、まさか…??何でこんなところにいるんだ?」



はい????まさか?何でこんなところにいる??

この人急に何言い出すわけ?



「女子は練習を横でやってるぞ?」



だから??



「お前、青谷実央だろ?」


「…なんで知ってる…んですか。」



噂か?噂のせいか??

それにしても4番、なんか怒ってる??眉間に皺がよってるけど…。



「お前は…覚えてないか。」



誰だろう…。

たぶん、バスケ関係…だよね。

ポイントガード…キャプテンで…わりと無口…だけど、的確な指示を出す…あぁ、思い出した。

私の知っている中では歴代キャプテンにそんな人は一人しかいない。



朝霧(あさぎり) 琢磨(たくま)…先輩。」


「覚えてたのか…。」


「一つ上…の代でしたから。男バスの最強世代、って有名…でしたし。」


「お前も有名だったぞ。弱小バスケ部で選抜にも選ばれた…青谷実央。」



有名…そっちね。だから、私の名前を知ってたんだ。



「で、もう一度聞く。どうしてお前はここにいるんだよ。」


「牧瀬が…応援に来いって、言ったんで。」


「横で女子が練習をやってるのに?」


「私…バスケ部、入ってません。」



絶対、勘違いしてる。

私がバスケ部に入ってるもんだと思い込んで話をしている。



「…どういうことだ?」



もともと険しい表情をしていた朝霧先輩の表情がさらに険しくなった。



「だから、入ってないんです。」


「…どうして?」



どうしてそこまで追及するんだか…。

答えに迷った私はありきたりな理由を口にした。


「…チームプレイ、向いてないんで。」


「お前…」


「まぁまぁ!そこまでにしなよ!それより琢磨、ミーティングじゃなかったの?」



どこまで続くからわからない会話を切ったのは牧瀬だった。



「あぁ…そうだったな。」


「んじゃ、いこっか!」



牧瀬と朝霧…先輩はそのまま去って行った。



「実央…」


「のど渇いてない?ジュースでも買ってこようか、朱音。」


「うん。」



朱音は明らかに戸惑ってた。私と朝霧先輩のやり取りに。

言いたいことは山ほどあるだろう。朱音は「あの事」を知ってるから。


私が…バスケをしなくなった、本当の理由を。




私と朱音がジュースを飲みながらしばらく話しているとバタバタと足音が聞こえた。



「あ、実央!」



鬱陶しいのがやってきた。

ミーティングは終わってしまったのか…。



「…何か用?」


「聞きたいことがあるんだよ!あのさ…琢磨とどういう関係???」


「先輩後輩。」


「…え?それだけ??」



私の答えに牧瀬はぽかんと間抜けな表情をした。



「それだけ。」



朝霧琢磨。

天才的なポイントガード。

キャプテンとなり、常に的確な指示、パスを出し、時には自分から切り込んでいく。

それを止めることができるディフェンスはいなかったと言っても過言ではない。


それは中学の時からそうだった。顔も割と整っていて、無口。

クールでかっこいい…よく、女バスの女子たちが言っていた。


先輩が私を知っていたのは、中学の時はものすごく弱かった女バスから、選抜に選ばれた選手だったから。お互いが、お互いの存在を知っている…ただそれだけの関係。



「な~んだ…。俺、てっきり実央と琢磨が付き合ってたのかと…」


「耳、聞こえてる?あの会話聞いてて、どうやったらそう解釈できる?」



牧瀬の頭の中がどういう構造になってるのか、見てみたいものだ。



「いや…その……ごめんなさい。」



一度だけ、朝霧先輩の試合を見た。

今日も見たから2度か…先輩はやっぱり存在感があった。その時も彼のプレーに惹かれたのは言うまでもない。ただ…朝霧先輩と話すことは一度もなかったけど。



「そーそー!実央にもう一つ聞きたいことがあるんだよね。」


「なに…」



めんどくさい。



「実央ってバスケ上手だったんでしょ?何でやめちゃったの?」



ああ…やっぱり。めんどくさい質問。



「…ホントに耳ないの?さっき言ったでしょ。チームプレイが合わなかっただけ。」


「ん~…でも琢磨がさ、それぐらいでやめるはずがない、って。」



何でそんなことわかるんだよ。

何者だよ、あの人。



「…わたし、朝霧先輩とそんなに関わりないんだけど。」


「そうだろ!?琢磨がそんな風に言うから、2人結構仲良かったのかなーって思ってさぁ…まぁ、そんなことより…どうして?実央。」



はぁ…うまくごまかせたと思ったのに。



「どうもしないよ。別にバスケがそんなにしたい、って思わなかっただけ。」


「実央…」



朱音の呼び掛けには、どこか話すように促すような響きが入っていた。



「何かあったの?」


「何もない。ただ私のやる気がなくなっただけ。それ以外、何もない。」


「…そっか。」



牧瀬は笑ってそれ以上何も聞いてこなかった。

朱音は横で何か言いたそうな顔をしていたけど、気付かないふりをしておいた。


またもや厄介な奴が出てきたのかもしれない…。

朝霧琢磨

なぜか知らないけど、私のことを見透かしている奴。



これは…相当厄介かもしれない。



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