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第2話 指名手配されるらしいです

結論から言うと――

 この世界、俺を放置する気は一切ないらしい。

「仕、仕様外さん……」

 バグが、やけに落ち着かない様子で俺の後ろをついてくる。

「なに?」

「そ、その……このまま王都に近づくの、ちょっと危険かもしれません……」

「急にどうした」

 草原を抜け、小さな街道が見えてきたところだった。

 人の気配。文明の匂い。

 異世界テンプレ的に言えば、ここからが本番だ。

 ――のはずだった。

「仕様外さんの存在、もう検知されてます」

「は?」

 バグが指を空中でなぞる。

 すると、俺にしか見えない別ウィンドウが開いた。

【警告】

【未登録存在を確認】

【照合不能】

【管理局へ自動報告中……】

「管理局?」

「世界を管理してる側です……神様とか、運営とか、そういう……」

「それ、味方?」

「……基本的には」

 一瞬の間。

「でも、仕様外は例外なく排除対象です」

 さらっと言うな。

「排除って……」

「消去、初期化、強制再起動……選択式です」

「選択の余地あるのそこ?」

 その瞬間、視界がチカッと明滅した。

【不審存在レベル:E → C】

【識別名:未定】

【仮称:仕様外個体】

「仮称ひどくない?」

「す、すみません! でもこれ、かなり早いです!」

 バグが青ざめる。

「普通は街に入って、登録して、数日してからなのに……」

「つまり?」

「もう目をつけられてます」

 俺は街道の先を見る。

 遠くに、鎧を着た兵士たちの影が見えた。

「……あれ?」

「巡回兵です。

 仕様外さんを直接探してるわけじゃないですが……」

 バグが言いにくそうに続ける。

「このまま進むと、初接触で詰みます」

「理由は?」

「ステータス照会された瞬間、エラーが出ます」

「だろうな」

 沈黙。

「……逃げるしかない?」

「はい。でも――」

 バグは俺を見上げた。

「逃げ方、普通じゃ無理です」

「でしょうね」

 俺は深呼吸して、笑った。

「じゃあさ」

「?」

「普通じゃない方法で行こう」

 俺は足元の石を拾う。

「どこまで壊せる?」

「え?」

「お前が触った範囲。

 判定、座標、フラグ……」

 バグの目が、少しだけ見開かれた。

「……意図的に?」

「そう」

 俺は石を、兵士たちのいない方向へ投げた。

 ――石は途中で分裂し、消え、

 存在していた痕跡だけが空に残った。

【スキル《仕様外行動》が進化しました】

【効果:判定領域の不整合】

「……うわ」

 バグが小さく声を漏らす。

「仕様外さん、これ……」

「ん?」

「これ使い続けると……」

 少し間を置いてから、彼女は言った。

「確実に指名手配されます」

 俺は肩をすくめた。

「もう予定に入ってるんだろ?」

 その瞬間。

【仮指名手配フラグ:ON】

「ほらな」

 バグが頭を抱える。

「ど、どうしてこう……!」

「安心しろ」

 俺は街道から外れ、森へ向かって歩き出した。

「名前もない、登録もされてない、

 その上で指名手配されるって――」

 振り返って言う。

「結構、主人公っぽいだろ」

 バグは一拍遅れて、慌てて追いかけてきた。

「ま、待ってください仕様外さん!

 せめて逃走ルートだけは……!」

 こうして俺は、

 名前未定のまま、世界から追われることになった。

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