表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/16

第14話 上位代理人《R-01》の観測

夜の森。

 焚き火が静かに揺れている。

 未定は木の枝を火に投げた。

「……静かすぎるな」

 バグが小さく震える。

「仕様外さん」

「なんだ」

「来ます」

「L-17か?」

「違います」

 その声が、いつもより低い。

「もっと上です」

 その瞬間。

 空間が、音もなく割れた。

 裂け目。

 黒い線。

 そこから、一人の人物が歩いてくる。

 白と黒の衣装。

 整いすぎた顔。

 感情の存在しない瞳。

「観測開始」

 静かな声。

 未定はため息をつく。

「また管理局か」

「訂正」

 その人物は言った。

「私は代理人ではない」

 一歩前へ。

「上位個体《R-01》」

 森の空気が重くなる。

 バグの輪郭が揺れる。

「仕様外さん……!」

「分かってる」

 未定は立ち上がる。

「つまり、ボスってことだな」

 R-01は少しだけ首を傾げる。

「理解は概ね正しい」

「で?」

「何しに来た」

「観測」

 即答だった。

「対象:未定」

「……」

「あなたは世界に拒否されながら存在している」

「知ってる」

「さらに」

 R-01の視線がバグに向く。

「エラー個体と結合」

 バグが小さく後ずさる。

「やめろ」

 未定が前に出る。

 R-01は未定を見る。

「質問」

「なんだ」

「なぜ人を助ける」

「またそれか」

 未定は肩をすくめる。

「理由いるか?」

「合理性がない」

「合理で動いてないからな」

 R-01の瞳がわずかに光る。

「非合理行動は世界の安定を乱す」

「そうか?」

 未定は笑う。

「今のところ、壊れてないだろ」

 沈黙。

 R-01は静かに言う。

「評価:危険」

 その瞬間。

 地面が沈む。

 空気が圧縮される。

 未定の体が一瞬で膝をつく。

「……っ」

「仕様外さん!」

 R-01は、ただ立っているだけ。

「私は攻撃していない」

「圧だけかよ」

「世界の重みだ」

 未定の足元の地面が割れる。

「あなたは軽すぎる」

 R-01が言う。

「存在の重みが足りない」

「名前のせいか?」

「その通り」

 バグが震える。

「仕様外さん……この個体……」

「分かってる」

 未定は歯を食いしばる。

「……強すぎる」

 R-01は一歩近づく。

 それだけで、空気が沈む。

「未定」

 初めて名前のように呼ぶ。

「あなたはまだ不完全」

「だろうな」

「だから今は」

 ほんの一瞬。

 R-01の視線が揺れる。

「消さない」

「……は?」

 バグも固まる。

「理由」

 R-01は淡々と言う。

「観測価値」

「……それだけか?」

「それだけだ」

 沈黙。

 R-01は振り向く。

「だが次に会うとき」

 空間が歪む。

「あなたが“誰”になるか」

 わずかな間。

「それを見て判断する」

 裂け目が閉じる。

 圧力が消える。

 未定はその場に座り込む。

「……はぁ」

 バグが慌てて駆け寄る。

「大丈夫ですか!」

「ギリギリ」

「今の個体……」

「ラスボス候補だな」

 未定は空を見る。

「名前がないと、ああなるのか」

 バグは静かに言う。

「……はい」

 沈黙。

 火が揺れる。

 未定は小さく呟く。

「そろそろ」

 バグが顔を上げる。

「え?」

 未定は火を見つめる。

「考えるか」

 その言葉は小さい。

 でも確かに。

 名前の物語が動き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ