オレ達が石ころじゃない事を証明したいからアイツらを石ころにした
今日もやっぱり黒い黒楓です。
上にねーちゃんが三人も居る末っ子で……ねーちゃん達から猫可愛がりされてたせいか、オレはとんだ間抜けで……中二、中三とクラスの男子生徒からいじめを受けていた。
これで頭までバカだったら完全に“弱者”の立場に陥ってしまうので……学校の休み時間も何も関係なく勉強した。
これ見よがしのガリ勉をやっていたので、アイツらから色んな妨害をされたけど、意地になって必死に勉強した。
でも、オレはこの時点でもやはり間抜けだった。
アイツらの妨害にせいで、体育や美術などの実技を伴う科目の内申が足らず、第一志望にしていた県内第一位の公立高校への受験許可が学校から下りなかったのだ!
本当にバカバカしい話なのだけど……オレの住んでいる県下では公立高校受験で“落ちる”と言う事が殆ど無い。
それは各中学校からの“受験枠”が事前に割り当てられていているからで……
公立高校を受験する生徒は上から下までその枠に沿って学校からの指示で受験する。
つまり学校に対して“いい子”でどの科目も平均的に点の取れる生徒が有利なのだ。
そこからすると……いくら中間や期末で学年1位を取っても、オレは二番手の高校に甘んじなけれはいけない!
しかし捨てる神あれば拾う神ありで……県の「私立高等学校等授業料軽減助成金」が去年から他県の私立高校に対しても拡充されたので……オレは日本で有数の進学校である私立星海高校の高等部編入試験にチャレンジする事にした。
このチャレンジに賛成してくれたのは塾の先生だけだったけど、オレはこの難関を見事に突破した!
この実績はオレの通っていた中学では過去の例が無く、オレは学校中の耳目を集める事となり、結果的にクラスの雑魚どもはオレに手を出せなくなった。
◇◇◇◇◇◇
「やっとこの学校を卒業できる」
清々した気持ちで卒業証書が納まっている筒で肩をトントンしていると、見た目には美人姉妹の親子がにこやかに近付いて来た。
才色兼備との誉れの高い松永さんとそのお母さんだ。
「初めまして、玲子の母です。水野くんのお名前は、ずっと玲子から聞かされていたのよ。」
そんな話は初めて聞いたのでオレはまじまじと松永さんの顔を見つめたら……
「水野くんが学年一番のお陰で私はずっと二番だったから」と顔を伏せた。
ともかくも……彼女も中高一貫校の桜華女子学院へ編入するとの事なので、彼女の親公認の“勉強友達”となり、春休みは毎日図書館で待ち合わせて情報交換をしつつ、机を並べて勉強に励んだ。
実際中学からの“内部進学組”は先取り学習が進んでいるから……高1はクラスも旧高の奴らとは別だ。この事情は彼女も同じらしく、オレは同士のつもりで……(正確にはそうなろうとして)毎日、彼女と一緒に勉強した。
オレは中一の頃から性的にもねーちゃん達の玩具にされていたからオンナなんて慣れっこだと思っていたけど……同学年の美少女から匂い立つ、瑞々しい色香に思わず目が離せなくなった事が少なからずあって、とうとうそれを彼女に気付かれてしまった。
「私の事、見てた?」
「う、……うん」
「私もだよ」
「えっ?!」
「だって水野くん……王子様みたいなんだもん」
「ええ??!!」
「今度、ウチに来てよ。そしたらもっと見つめ合えるよ」
この……『自分の“美”を行使する』と言う事をオレは彼女から教わった。
どういう事かと言うと……彼女は自身の“美”というものを充分掌握していたが、ねーちゃん達は自分らがオレを独占する為に結託して……オレをこの事から“目隠し”していたのだ!
オレはようやく間抜けな自分を脱し、彼女の“初めての男”になる事で、ますます彼女との絆を深めた。
◇◇◇◇◇◇
一流の中高一貫校へ通う奴らは……概ね裕福な家庭の子女だ。
そんな環境なのだから、皆こなれてキラキラしているのかと思ったけど……
こと、『男女の関係』となると……そうでもなさそうだ。
で、オレと玲子は密かに“インカレサークル”を運営して、お互いの学校の生徒達を俯瞰視し、石ころの様にぶつけ合っている。
だけど、オレと玲子は……
お互いがお互いの“珠”である様に、今日も愛を交わし磨き合っている。
おしまい
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