表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

嘘つき

中学2年生に上がってから数週間、私は1つ大きな問題に気づいていた。

「今日も部長と副部長以外は休みだね」

(ッスー...少な過ぎですやん...)

そう、圧倒的な部員不足である。

3年生は元より1人、2年生は3人居るものの、私以外の他2人は不登校という状況であった。

(このままでは空気が気まずい以前に廃部になる可能性まである...それでは陰キャライフに支障が出るなんてものじゃない...!)

幸いな事に1年生の頃、部活用に連絡先を交換した為連絡手段は持っていたのだ。

(この行動力を勉強に活かせたら嬉しいのだが...)

そんな事を思いながら、私は家に帰って直ぐに連絡を取った。


とりあえず訳有り風女の子、仮に宇紗木さんと名付けよう。宇紗木さんに連絡をしてみたら、その日のうちに返ってきた。

〔なんですか〕

素っ気ない返事で他人行儀の彼女に私は(嫌われてる?)と疑う程だった。

(とりあえず最初は数発キャッチボールするか)

〘突然の連絡すみません。最近学校とかってきてます?〙

〔本当に突然何なんですか〕

明らかに地雷を踏みに行くような返信を私はし、無事に印象が最悪となった。

〘いえ、部活で見ないので学校には来てるのかなと...〙

〔貴方には関係無いですよね?〕

〘いやまぁそうなんですけど〙

初手地雷を踏んだ分これ以上下がらないだろうと感じた私は、相手の怒りを逆撫でするようなチャットをいくつか送った。

〘なんで学校来ないんですか?〙

〔教えても何の得にもなりません〕

〘学校に来れない理由は?〙

〔だから教えませんって〕

〘学校来なくてもいいので、部活だけでも来てくれません?〙

〔ブロックしていいですか?〕

────────2時間後──────────

〔貴方ってデリカシーとか相手の気持ちを察するとか全く無いんですね。貴方と話してると本当にストレスが湧いてくる。もう話しかけないで下さい〕

殆ど記憶に残ってないが、そんなような事を言われて彼女はその日のチャットを終わらせたと思う。

明らかに敵意剥き出し(何なら殺意すら感じた)の彼女だったが、私が数十分ほど感覚をあけてチャットをしても必ず返して来た。

(私が最後にチャットしたままだと負けたと思って悔しいのか、感情をチャットに乗せてぶつけるのが爽快だったのか...)

明らか違うだろという可能性をいくつも考えたものの、それぞれの可能性は全てひとつの明確な結果の前にあった。

(彼女はチャットを無理やり終わらせる選択肢を取らなかった)

ブロックや無視といった方法を取らなかった彼女の行動はこの結果の信憑性をより高いものにしていた。

(正直自分の言動に気持ち悪さを覚えるが...このまま明日もアタックしてみるか)


そこから私の日課が始まった。

───────────────────

〘学校来ないの?〙

〔また連絡してきたんですか、正直言って気持ち悪いですよ。〕

〘普通に心に来る事言うやん泣きそう〙

〔そうですか〕

〘うーんこれは塩対応....〙

〘まぁそんな事は置いておいて、もうすぐ行事だし来てみても良くない?〙

〔それと何の関係があるんですか〕

───────────────────

〘学校行かない理由を聞いても?〙

〔よく毎回連絡取ってきますね、そろそろブロックしてもいいですか?〕

〘そんな事言っちゃって〜しないでしょ?〙

〔貴方みたいな人間を見てるのが滑稽で〕

〘そんな褒めないで欲しいな〙

〔馬鹿なんですか?〕

〘馬鹿と天才は紙一重って言うじゃん〙

〔そうですか〕

〘塩対応ッ!〙

────────────────────

〘もうそろ学校来ても良くない?〙

〔なんで私に構うんですか〕

〘自己満足...的な?〙

〔?〕

〘一人の不登校を助けたら自分の気持ちがスッキリしそうだから?〙

〔偽善者ですね〕

〘そうだね、私は偽善者だ。〙

〘偽善で人が助けられるなら上等だろう?〙

〔本当にムカつきますね〕

────────────────────

〘学校楽しいよ?というかそろそろYouと直接話してみたいんだけど〙

〔そうですか気持ち悪いですね〕

〘こんな話してて面白い子はそうそう居ないからね〙

〘というわけでYouも学校に来いYO〙

〔よくそんな性格で学校行けますね。〕

〘褒め言葉?ありがとう〙

〔はぁ?〕

〘ごめんて...〙

────────────────────

最初は部活に来させる為に始めた会話だったものの、本音で話してくれる気持ちと、周りとは一味違うような思考回路に私は徐々に惹かれて行った。

時は流れ一、二ヶ月、遂に一歩進展に繋がった。

─────────────────────

なぜ彼女が言う気になったのか、なってくれたのかはもう忘れてしまった。

〔学校に行けないのは朝起きれないから〕

最初聴いた時は寝坊なのかと思ったがそんな軽いものでは無く、どうやらしっかりと存在する障害の一種ようだ。

調べた限り、自律神経機能の問題で血液が全体に上手く回らず、脳や上半身に影響を及ぼし起き上がることが出来ないというものらしい。

遺伝や第二次性徴期等が原因で中学生に多い、また天候などといった要素で左右されやすいという厄介なものだ。

午前から午後にかけて症状が軽減していき、結果的に昼夜逆転してしまうという問題まである。


ただ彼女は障害を「障害」ではなく「個性」と呼んで欲しいらしい。

理由を聞けるほど私の頭に余裕は無かった。

(今までやった事がストレスに繋がっていた場合、私は症状の悪化に繋がっていたら...)

〘症状を少しでも改善する為に手助けしたい〙

私は自分の行為を自分の中で許せるようにする為か、一つの提案を行った。

そして欲深い私は手助けの代わりに1つお願いをした。

〘手助けする代わりに無理しなくていいから少しずつでも学校に来て欲しい〙



私は理解していた。これはただの上っ面だけの言葉で、本来の私はヒーローにも偽善者にもなれない酷い人間だと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ