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7話

 次の日、本格的な学園生活が始まって学園の門をくぐる。


(昨日はすごくひどい目にあった……)


 あの後、ポーズだけでなくなぜか病室に持ってきていた猫耳カチューシャもつけることになり、あざといポーズやらセクシーなポーズをやらされてしまった。


 というか撮った写真はどうするんだろうか?そう思いながらロッカーから上履きを出していると、目の前に麻奈美の姿があった。


「おはよう、麻奈美ちゃん」

「杏奈おはようー、一緒に教室へ行こう?」

「うん!」


 上履きを履き、2人で並んでクラスへと向かう。


「昨日は楽しかったね……」


 ニヤついた表情をして、麻奈美はいきなり耳打ちをしてくる。


「もうあれはやりたくないよ……」

「えー。すごく可愛かったのにー!」


 ぷくっと頬を膨らませて、「やって、やってー」と真奈美は駄々をこね始めた。


「嫌だよ。恥ずかしいからもうやらないって……」

「やってくれなきゃ、ここから男子がいるって叫ぶからね」


 急に真顔になって窓を開け始めたので、慌てて止める。


「よそう、麻奈美ちゃん」

「じゃあ、またやってね?亮君」

「わかりました……麻奈美ちゃん」


 渋々亮は、首を縦に振って承諾するのだった。




 

 ホームルームの時間となって、まずは親睦を深めるために、クラス全員の自己紹介をしようと言うことになる。

 

「じゃあ、まずは私からね」


 そう言って教師は、チョークを手に取り自分の名前を書く。


「私の名前は、です。五宮佳苗(ごのみやかなえ) 1年間よろしくお願いします」


 丁寧に自己紹介した佳苗は、ミディアムヘアーのクールな見た目の若い女性教師だった。


「さて、最初は誰から自己紹介してもらおうかな……」


 出席簿を見ながら、佳苗は「誰にしようかな」と言いながら吟味する。


「杏奈がトップバッター行きなよ」

「え、やだよ……」

 

 後ろに座っていた、麻奈美がニヤついた表情で催促してきたが、亮は乗り気でなかった。


 それを見かねた麻奈美は突然、「はい」と声を上げ手を上げる。


「あ、柏崎さんから行きますか?」

「いえ、やっぱりここは成績主席の村上杏奈さんから行くべきかと」

「え……」


 麻奈美の提案を皮切りに、他の座っていた生徒も賛同をする。


「じゃあ、村上さんから始めようか」

「わ、わかりました……」


(くそぉ。麻奈美め、後で覚えてろよ……)


 後ろの方でしてやったりと言うような表情をしている。


 指名されてしまっては仕方がない。亮は立ち上がって教団の前に立ち深呼吸してから口を開く。


「初めまして皆さん!村上杏奈と申しまひゅ……」


 丁寧に自己紹介したつもりが、つい噛んでしまった。


 配信で慣れているつもりが、男子だとバレないかというプレッシャーに押しつぶされてしまったようだ。


 すると、しばらく沈黙した後、ドッとクラスメイトが笑い始める。


「あはは、杏奈さん自己紹介如きで緊張して噛むなんて……あははー」


 小馬鹿にするような笑い方で、桜は煽りともとれる様なヤジを飛ばす。


「いやあ、こういうとこ慣れてなくて……ごめんねー」


 適当に嘘をついて、桜を軽くあしらう。


「そう、なら仕方ありませんわね」


 納得した様子で、桜は何も言わくなると、廊下から女子たちの黄色い声が聞こえてくる。


 どうやら1人の可憐な女の子への声らしいがこの学校のアイドル的存在の立ち位置の娘なのだろうか?


「あの娘誰?」

「知らないの?この学園の更にカースト上位者のみが入れる3大サロンの中のトップといわれるサロンのリーダ、神宮寺瑞希(じんぐうじみずき)って人だよ」

「へぇ……」


 興味なさげに亮は、瑞希を見ると、髪型は美しい綺麗な黒く長い縦ロールで顔だちも綺麗に整っている。


 メンバー集めでもしに来たのだろうか?取り巻きをつれて下級生の偵察に来ていたようだった。


「でも、ああいうサロンって表向きはゆるふわで綺羅びやかな交流会って言ってるけど、裏では政治的な思惑やカーストによるマウントがあるから面倒なんだよねー」

「そうなのか?」

「うん。だから、あのサロンはやめた方が良いよ」

 

 不安げな表情で麻奈美は、語っているところを見ると、絶対にあのサロンは入らない方が良さそうである。


 でも考えて見ればそうである。こういうお嬢様学校は女性社会特有の面倒さが付きものだ。


(大丈夫かなぁ……俺……先行き不安だ……)


 そんなことを考えていると、クラスに瑞希が入って来て、あろうことか杏奈の前までやってくる。


「お初にお目にかかります。村上杏奈様……」

「は、はじめまして……」


 可憐で透き通るような声で喋りかけてくる瑞希に、亮は、不覚にもときめいてしまって噛んでしまう。


(な、なんでこいつ俺のとこに……??)


「入学式の、代表挨拶を聞いた時から、ずっと貴方の事が気になっていましたの。気が向いたらサロンに是非来てください」


 瑞希は亮に向かって、サロンへの勧誘とも取れる文言を口にする。


 その瞬間にクラスからは、憧れの眼差しを向けられていた。

 

 だが亮はきっぱりと「お断りします」と断言した。


「な、な、なんでですの?」

「ごめんなさい。私は校内政治には興味ありませんし、他人へのマウント合戦も嫌いなのでお断りさせていただきます」

 

 自分も全く興味がないというのもそうだが、これは妹を面倒ごとに巻き込まれるの守るためでもある。


 一瞬驚いた表情をするが、すぐにゴホンと咳払いをして、元の可憐な表情に戻った。


「そうですか……。今回はご縁がなかったという事で……」


 ニコット笑って、優雅に去って行くが目は笑っていない。


 どうやら、瑞希の怒りを買ってしまったようだ。


 しまった。やりすぎたと後悔したのもつかの間、急に大きな歓声が上がり始めた。


「杏奈様、すごいですわ。瑞希様の誘いをあんなきっぱりと切り捨てて、断るなんて」

「へ?」

「もしかして、自分でサロンをお作りになるのですか?杏奈様の人徳ならきっとすごいサロンになるよ」

「え、えぇ!!」


 こんなにも、モノ申しただけでもてはやされるとは思わなかったと亮は唖然とする。


 だけども、これはこれでありかも……とまんざらではない様子だった。

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