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53話

 次の日、教室に入った途端、亮の元にクラスの女の子たちが駆け寄って来る。


「ねぇ、杏奈さん……。今度の社交パーティーで瑞希さんと社交ダンスの対決をするんですよね?」

「え……? どこでその情報を聞いたの?」


 若干焦りながら、そう聞いていると、更に生徒達が近づいてきていた。


「学園中でもっぱらの噂になってるよ?」

「え、えぇぇ!?」

「クラスの皆で見に行くから、楽しみにしているね!」


 集まってきた生徒たちは、かなり期待を寄せているようで、うきうきとしながら、亮の前から去って行った。


 正直、亮は男だとバレているのだと、ドキドキしていたがどうやら違うようでほっとする。


「ねぇ、亮君。私達社交パーティに出るって言ってないよね?」

「そ、そうだね……」


 社交パーティに出ると知っているのは、瑞希と桜と、杏奈のサロンのメンバーだ。


 という事は、流した犯人は……。


「ふふふ。私達のサロンですわー」


 そこにちょうどいいタイミングで、登場する。


「なんでそんな事をしたの?」


 麻奈美は険悪な顔をしながら、そう聞く。


「観客は多い方がいいでしょう~おっほっほー」


 瑞希のように、高笑いしながら、自分の机へと戻っていく。


「本当は男だってばらして生き恥をさらさせたいだけなくせに……」


 拳を握りしめながら、麻奈美は心底嫌そうな顔をする。


「アイツら、完膚なきまで私を叩きのめしたいんだね……」


 今まで、こちらは瑞希をコテンパンにして、恥をかかせてきたため、向こうにはかなりの恨みがたまっている事だろう。


 今度はこちらを負かせたうえで、恥をかかせて、社会的に抹殺するという事が目的であると思われる。


 果たして、本当に負かせて、恥をかかせるのが目的なのか?


「杏奈? 絶対にうまくなって瑞希達をあっと言わせてあげようね!?」

「あ、あぁそうだね!」


 亮は心ここにあらずといった様子で返事をする。


「あ、杏奈?大丈夫」

「大丈夫だよ」


 心配を掛けさせまいと、亮は笑顔で言っていると、後ろから佳苗がやってきて、2人の身体を叩いた。


「わ! 佳苗先生!」

「私が教えるんだから絶対勝ちなよ」


 そう言いながら、早く席につくように、佳苗は生徒達を誘導する。


 亮達も急いで席に付こうとすると、佳苗は亮の肩を叩く。


「は、はい?」

「また放課後にね」


 ウインクをして佳苗はアピールをすると、亮もそれに答えるように頷くのだった。







 放課後、2人はいつものようにサロンへ向かうと智代と恵梨香が待っていて、佳苗もスタンバイしていたが、唯はまだ来ていない。


「あれ? 唯ちゃんは?」

「少し用事があるみたいですー」

「じゃあ少し待とうか」


 ソファに座って、机の上に置いてあるスイーツを食べようとすると、恵梨香が神妙な面持ちで話しかけてくる。


「あの、亮様……瑞希のサロンが、名だたる社交ダンスの教師を読んで、ご指導受けているようでして……」

「え……嘘!?」


 まさかの事態に、亮達は驚愕していた。


「私も、見たけど結構有名な人だったねー」

「そうなんですか……?」


 あのプロの資格を持っている、佳苗も驚くという事は、相当有名な人らしい。


 まずい事になった。


 そんな事されてしまえば、こちらには勝てるすべはない……。


 亮達3人はどう勝てばいいんだと、落胆していた。


「こらこら! 何落胆してるの!?」


 落胆している亮達に、佳苗は発破をかける。


「え……?」

「ちょっと! 最初の勝負の時、ただ金に物を言わせたではなくても、勝てたこともう忘れたの!?」


 そう言われて、亮達は最初の勝負の時の事を思い出した。


 確かにそうだ、ただ金に物を言わせたものでなくても、皆を魅了できるはずだ。


 男だとバレてしまったという事実だけに囚われてしまっていて、忘れてしまっていたようである。


「佳苗先生の言う通りですね!よし!今日も頑張りますか!」

「そうですね。根本的な事を忘れてたかもしれません」

「だねー!そう思ってたらやる気湧いてきた!」

「う、うん……。頑張ろう!」


 3人は乗り気だったが、亮の心中ではあまり気が気でなかった。


「遅れましたー!!」


 そこに、急いできたのか、息を切らした唯がやってくる。


「よーし、今日もやりますかー!! 気合入れていくよー!!」


 昨日のように、佳苗のレッスンが始まり、5人はいつものように、社交ダンスの練習をするのだった。

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