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43話

 想定外の事態である。


 突然の瑞希と桜の登場に麻奈美はおろか、恵梨香さえも大量の冷や汗をかいていた。


「ふ、2人共よくこの病院ってわかったね……」

「えぇ、瑞希さんの人脈をもってすれば、村上杏奈さんの妹の入院してる病院の1つや2つ見つけることなどたやすいですわ!」


 高笑いをしながら、あたかも自分の手柄のように言っているが、それは瑞希のおかげなのでは?とツッコみたくなってしまう。


 だが、そんな事を思ってる場合ではない、ここまで特定するのに、いろんな事を調べているはずだ。


 という事は、妹の名前や亮の名前なんかがバレたりしている可能性が高い。


 これはまずい事になったと、大量の冷や汗を亮はかいていた。


「貴方が、妹さんですか? お名前はなんというのですか?」


 優しく桜は、杏奈に問う。


「杏子と言いますよー」

「杏子さんですかー、素敵なお名前ですわねー。私は鳴海桜と申します」

「神宮寺瑞希と申します」


 丁寧にお辞儀をしながら、杏奈は偽名を桜に名乗ると、瑞希や桜も杏奈に名前を名乗った。


 櫻の口振りをみるに、妹の名前や今学園に通っている杏奈の正体には気づいていないようで、亮はほっとする。


「あ、そうそう杏子さんにお土産を持ってきましたよ。これをどうぞー」


 そう言って瑞希は、かなり高そうなロゴの入った紙袋を杏奈に手渡す。


「ど、どうもありがとうございます」

「良かったら、お近づきの印に連絡先を交換しませんか?いろいろと聞きたいこともあるので」

「ちょっと待った!」

「はい?」


 スマホを持ちながら、杏奈に半ば揺さぶりをかけるように、近づく瑞希を亮は止める。


 今杏奈のメアドや電話番号を手に入れられてしまえば、何をされるかたまったもんじゃない。


 是が非でも阻止しなければ。


「流石に、まだ仲良くなってないのに連絡先を聞くのはやめてもらえるかな?」

「ただ、連絡先を聞こうとしただけじゃないですか!?」

「そうですわ! 瑞希様の邪魔をしようと言うのなら容赦はしませんわよ?」


 理不尽に断られたと思ったのか、瑞希達は怒りをあらわにしていた。


「みっともないですよー? 神宮寺のご令嬢たるものが、ちょっと断られただけで怒るなんて……」

「な……。栗花落智代……」


 智代が間に入って仲裁をしようとすると、智代の顔を見た瑞希が恐れおののいて、一歩後退する。


(神宮寺さんを、ここまで震え上がらせるなんて、智代ちゃん何者なんだろう……)


 流石智代と言ったところではあったが、瑞希達は引き下がろうとしなかった。


「なら、また私達と杏子さんの連絡先をかけて勝負しませんか?」

「わかった。望むところだよ」


 今度こそ亮は瑞希をぼこぼこにしようと意気込んでいると、瑞希のお付きの女の子が目の前に用意したのは、たくさんのスイーツである。


「スイーツ……?」

「えぇ、スイーツです」


 にやりと瑞希は不敵に笑う。


「この中に高級スイーツがあります。それを杏奈さんには一口も食べずに目利きだけで当ててもらいます」

「はいー!?」

「もし一個だけでも間違えれば、杏子さんの連絡先渡してもらいますよ」


 亮は唖然とする。


 食べずにたくさんあるスイーツの中から、高級品を当てろなんて無理にもほどがある。


 そんな事できる人なんて……と思っていた時だった。


「杏奈様、ここは私に任せてもらえませんか?」

「唯ちゃん……」


 自信満々に名乗り出たのは、唯だ。


「長年スイーツを探求し続けてきた私です! 食べずに見抜くことくらいたやすいですよ?」

「わ、わかったよ」


 そう言いながら、鼻息を荒くして、顔を近づけてきたので亮は任せる事にする。


 安心して、他の4人も喜んでいるようだったが、麻奈美だけはあまり表情が良くないように見えた。


「麻奈美ちゃん大丈夫?」

「う、うん! 大丈夫だよ!」

「そっか。なら良かった!」


 一言、声をかけると、麻奈美は元の表情に戻ったので亮は安心する。


「私も亮君の役に立ちたいよ……」


 小声で何かボソッとつぶやいたように聞こえたが、亮が振り向いても何事もなかったかのようにしていたので、気にしなかった。


「ふーん……。城ケ崎さんが代わりに引き受けるのね」

「私を舐めないでください!」


 こうして、瑞希との勝負は幕を開ける。

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