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39話

翌日、教室へ入った瞬間、桜が近づいて来た。


「待っていましたわ! 村上杏奈さん!」


 指を指しながらそう言った後、桜は周りをきょろきょろとする。


 どうやら智代がいないかを確認しているようだ。


「どうしたの? 桜ちゃん」

「杏奈さん、貴方には妹さんがいらっしゃるのですか?」

「え……」


 予想だにしていなかった質問に、亮は呆然としていた。


 今知っているのはサロンのメンバーだけのはずで、他の生徒は知らないはずだ。


 まさかどこかから情報が流出したのだろうか?


「な、なんで?」

「ええ、私の友達が公園で亮と車椅子に乗ったそっくりな女の子を歩いているのを見たって聞いたんですの。それで貴方に妹がいるんじゃないかな? と思って聞きに来たんですの」

「なるほど……」


 まさか学園の生徒に見られていたとは……。しかも一番見られたくなかった桜の周りの人間に。


「まぁいるにはいるよ……。今は入院中だけどね」

「あら、入院中ですのね……。それでしたら、私もお見舞いに行かせていただきたいのですがよろしいですか?」


 やはり来た。


 ただでさえ、智代や唯も来て面倒なのに、そこに桜も加わるなんてもってのほかだ。


「どうしたの? 杏奈?」


 桜に絡まれていることに気が付いた麻奈美がやって来る。


「うん、桜ちゃんが私の妹のお見舞いに来たいって……」

「ダメだよ、杏奈! 断った方がいいよ!!」


 隣にいる桜へわざと聞こえるように、麻奈美は亮に言い聞かせる。


(めっちゃ、聞こえてるやん……。桜ちゃんもむすっとしてるし……)


 後ろで聞かされていた桜は、腕を組みながらイライラしていた。


「わざと私に聞こえるように……。ムカつきますわ!!」

「ごめんね、桜ちゃんの気持ちはうれしいけど、もろもろの諸事情で無理なの……」


 イラついている桜へ丁寧に説明するが、桜のイラつきは収まらない。


「こうなったら、村上杏奈さん勝負を貴女に勝負を申し込みますわ!」


 ムキになった桜は、亮を指さす。


 やはりこうなるかと、亮と麻奈美はため息を付きながら頭を抱える。


「どうするの……?」

「受けるしかないよ……」


 また断ると、もっと面倒な事になりかねない。


 渋々亮は、引き受けることにした。


「そう来なくては……。では今回の勝負内容はこれですわ!」


 そう言って手渡してきたのは、シュリンクに包まれた金色の砂の塊である。


「亮君、なにこれ?」


 突然渡されたものに、麻奈美は目を丸くしていた。


「宝石採掘キットですわ。これをどちらが早く見つけられるか勝負ですわ!」


 お互い、机の上に新聞紙を広げると、お付きの生徒が開始の合図をして勝負が開始され、桜が小さなの木のスコップで掘り始める。


「麻奈美ちゃん、桶と水持って来て?」

「わ、わかった!」


 亮はそう指図をして、机の上で水を待つ。


「あら? まだ掘ってないんですの? 私はもう結構掘れましたわよ?」


 そう言って桜は煽ってくるが、亮は気にせず待っていると、そこへ桶に水を入れた麻奈美が帰ってきた。


「おまたせ、これでいいんだよね?」

「うん、大丈夫だよ!」


 早速亮は、シュリンクを外すと、水の中へと塊を放り込む。


 そして亮が、塊をほぐしていくと、見る見るうちに崩れて中からエメラルドが現れた。


「私の勝ちだね」

「な、な、な、な!!!」


 どや顔で亮は見せると、桜はぷりぷりと可愛らしく悔しそうな表情をする。


「そんなの卑怯ですわ!! 非正規のやり方で見つけるなんて!」

「いやだって、掘れなんて一言も言ってないよね? それならどんな手段使ってもいい事になるんだけど……」


 持ち前の論破術で、桜を論破すると、悔しそうに涙を浮かべた。

 

「うわああああん!! また負けましたわ!!」


 そう叫びながら、桜は教室を出てどこかへ出て走り去っていってしまう。


「やれやれ……」


 安心する亮だったが、逆に麻奈美は、青ざめた顔であった。


「ね、ねぇ……瑞希に知らされたりしたらどうするの……」

「あ、あぁ……どうにかなるでしょ……」


 震えた声でそう言うが、亮もかなり青ざめた顔だった。


 流石に論破まですることなかったなと、内心後悔するのだった。




 


 その後、先ほどの話を聞かれていたのか、妹がいることは瞬く間に、広まってしまっていた。


「聞いたよ、妹さん入院中なんだよね……? これお見舞いの品だけど……」


 おそらく購買で買ってきたスイーツの盛り合わせを手渡される。


「あ、ありがとうね」


 その後もいろんな生徒から品を渡され、全員からお見舞いの品をもらうことになってしまい、恵梨香にこっぴどく怒られたのは言うまでもなかった。

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