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12話

翌日、麻奈美と共に登校すると、不機嫌な顔をした桜が近づいてくる。


「昨日はよくもこの私を追い出してくれましたわね……」


(いや、お前が勝手にビビって逃げて行っただけだろ……)


 呆れて言葉も出なかった亮に桜は指を顔に向けた。


「村上杏奈、私に恥をかかせたあなたへ勝負を挑むわ」

「……はいー!?」


 突然の展開に訳が分からず亮は困惑してしまう。


「杏奈、相手にしなくていいよ。無視しよ?」


 手を引いて麻奈美は亮を桜から、遠ざけようとすると桜は高笑いをする。


「あら?いいんですの? クラスの皆が見てる前でそうやって尻尾を巻いて逃げても……。今度は貴方が恥をかくことになりすわよ?」


 小馬鹿にするような顔で脅しともとれる様な事を言う。


 こう言われてしまっては仕方がない。


「分かった。受けて立つよ」

「杏奈……」


 麻奈美には悪いが、クラスメイトが見てる前でおめおめと引き下がるわけにはいかないのだ。


「あはは!! そうこうなくては!!」

「で、何の勝負をするの?」


 また高笑いをする桜に、勝負内容を聞くと、亮に「これよ」と言いながらどこからか取り出した、カップ麺を手渡してきた。


(……あれ? 夢でも見てるのかな? カップ麺手渡されたんだけど……)


 まさかのカップ焼きそばが出てきて、困惑している亮をよそに桜は説明を始める。


「ルールは簡単。制限時間10分以内に、どっちが早くこのカップ麺を作れるかよ」


 そう桜が説明していると、お湯の入ったケトルが2人の目の前に用意された。


(こういうのって、早く作れるものなのかなー?)


「じゃあ、始めますわよ」


 桜のお付きの生徒が「よーいスタート」と言い勝負が開始される。


 慌てて、封を開封しようとすると、亮はある事に気が付いた。


「あれ? これ私の好きなカップ麺だ」

「そうなの?」

「そうそう、作るのめんどうだけど、すっごくおいしいんだよねー」


 このカップ麺、亮の好きなカップ麺の1つであるが、お湯を2回分けていれないといけないため、作るのが非常に面倒なのである。


 その代わり、かなり細部までこだわっているので他のカップ麺と違って、味は本格的だ。

 

 いつも通り亮は、中にあるスープ類を取り出して火薬を入れて、スマホのタイマーを3分にして待つ。


「ところで、なんで1回お湯捨てないといけないの?」

「わかんない」


 待っているうちに、隣の桜の様子を見ていると、予想通り作るのに苦戦しているようだった。


「カップ麺ですのに、なんで湯切り口が付いてるんですの?」

「さ、さぁ……?」


 お付きの娘たちも全く分からないのか、首を傾げるばかりで、未だにお湯を入れられていない。


 そうこうしているうちに、亮のスマホのタイマーが鳴り近くにあった流し場で捨て、4つに分かれたスープを入れて完成する。


「できたよ」

「なっ……」


 完成報告に行くと、桜はたった今お湯を入れ始めたところだった。


「噓でしょ……」

「もっと、簡単なカップ麺を買ってくるべきだったねー」

「きぃーー!!!」


 麻奈美にそう言われて、心底悔しそうに、桜は地団駄を踏む。


(なんで、こんな面倒なカップ麺を買ってきたんだろうか……)


 おそらくすごくおいしいという、謳い文句につられたのだと思うが、流石にこれは、上級者向け過ぎる。


「また杏奈ちゃんが勝った。すごーい」

「よくそんな難しいカップ麺の作り方知ってたね」

「あはは……それほどでも……」


 勝負に勝った亮には、賞賛の声が上がった。


(結構な頻度で食べてるなんて言えないよなぁ……)


「ぐぬぬ……。覚えてなさい……。次こそ勝ってやるんだから……」


 目に涙を浮かべて、桜は教室から退散していく。


「もうすぐ、ホームルームなのに、大丈夫かな?」

「大丈夫だと思うよ。ケロッとした顔で戻ってくるよ」

「そうだと良いけどなぁ……」


 心配そうに教室の外を見つめながら、ラーメンをすすろうとすると、麻奈美がとても物欲しそうに見つめていた。


「食べる?」

「食べる」


 割り箸を麻奈美に渡すと、間髪入れずに、受け取り、仲良く2人でラーメンをすすったのだった。




 その後。


「ねぇ、杏奈ちゃんこのお菓子どうやって食べるかわかる?」

「杏奈ちゃーん。このお菓子の作り方わからなーい!!」

「え、えぇっとこれは……」


 桜との勝負の後、亮は博識が広いという事でクラスでの人気が急上昇していた。

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