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国を踏み、言葉を結ぶ



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## **第13話 国を踏み、言葉を結ぶ**


 近江の巡回は、思っていた以上に骨が折れた。


 村は多く、道は長い。ましては観音寺城付近みたいにある程度整備してる訳ではないのででこぼこ道で歩きにくいのと馬でも大変そうだ。道作りしなれば。


 山間では田が細く、収穫量が少ないせいで山の方面の民は皆が体つきが弱くガリガリだ。湖畔では水と共に生きるそれを糧してる節の暮らしがある。

 同じ国でありながら、人の営みは驚くほど違っていた。山と湖の地形の違いや気候、生物の差や違いがこの大きな格差と貧困を生んだが義仲を知る訳も無いのだが…


「殿、次は愛知川沿いの村ですこちらへ」


「……水害の多い所だったな色々な事が会ったかもしれんしっかりと見るか。」


「はい。今年は堤を直したおかげで、被害は少なかった殿の政策のおかげですな。」


 小姓の報告に、俺は小さく頷いた。

 紙の上で見た数字より、現地で聞く声の方が、

ずっと重い。


 村では、庄屋が深々と頭を下げた。元々庄屋と云う者はこの近江の地に根を持っていた豪族の末裔が多くその他は帯刀や年貢集める権利などを認められた。


「おかげさまで、今年は作柄もよろしゅうございます村人達も少しばかりは心にゆとりを持って生活出来ております。」


「そうか。それは何よりだ村人や民が安心して過ごせるように色々な事を考えて実行するのが俺の仕事だ。」


「殿にお願いがございますこれ以上の事云うのを少し気が引けるですが…。」


「言ってみろ庄屋や有力者の事もしっかり聞く事もするぞ。無理難題な物は出来ないが」


(国人や庄屋などの意見を聞き、なるべく我ら現当主派の味方になってもらうか今後も聞いてやるか)


「若い者が、城下へ働きに出たいと申しておりまして……そして殿の力にもなりたいと言っており

ます。」


 国を守るとは、兵を集めることだけではない。

 人が動き、金が回り、暮らしが続くこと。何よりもそれによる経済的な効果は絶大だ。

 それを止めれば、国は内側から痩せていく。

民や国の為にもな


「行きたい者は行かせろ。ただし、村を捨てるな。

 帰る場所は、ここであって城下は使えるばだ。」


 庄屋の顔が、ほっと緩んだ。

そんなに俺の事を警戒してたのか…庄屋や国人にも声を掛けたり様子を見るべきだな。国人や庄屋の支持をゆっくりとな…。

 ――俺は、こういう判断を積み重ねていくしか

ない。そうでもしないと六角氏は内紛になる可能性もあるしな。



 城へ戻ると、今度はまつりごとが待っていた。


「殿、尾張より使者が参っておりますこちらへ」


「……織田か今勢い付けていると云う。あの時の同盟はいい判断だったか分家の信勝を滅亡させて尾張統一し、齋藤氏との因縁とも戦してると。」


 座敷に通された使者は、丁重だが油断のならぬ男だった。織田にはこのような者が沢山居るのか恐ろしい我らも集めるべきか?


「織田家当主・織田弾正忠信長が臣、**村井民部少輔貞勝(むらい みんぶのしょうゆう さだかつ)**にございます。近江殿、お初にお目にかかる」


「挨拶とは、便利な言葉だな。我ら六角氏との同盟の相談する事もあると云うのに…それも隠しておれ

られる。村井殿」


 俺がそう言うと、貞勝は口元に微かな笑みを浮かべた。その笑みは、相手を馬鹿にしているのではなく、こちらの出方を測る「はかり」のような冷たさがあった。



「盟約のご相談、と申せばよろしいかと我らも色々な事があり、悪い冗談はあまり為さらない方が

良いかと」


 織田信長。尾張本国では奇抜な格好で長刀を差して村人や子供と相撲を取り、父上の葬式の時にはお香を投げ飛ばした尾張の“うつけ者”だった男が

尾張をまとめ、今まさに力を伸ばしつつある男。


「条件は?弾正忠からの無理難題や押し付けや兵の貸し出しなどではないのかね?」


「いえそのような事では無くて、互いに背後を

脅かさぬこと。

 浅井・美濃の動きについては、逐一知らせ合う

こと」


「……ふむ浅井氏と美濃の事を逐一知らせると…」


 悪くない。

 だが、軽々しく結ぶものでもない。なるべく我ら

六角氏の有利な状態にしてからしないと行けない

のだ。


「俺からも条件を出す。

 近江への越境は許さぬ。商いは歓迎する」


「承知いたしました我が主君にお伝え致す今後も宜しく致しまする。」


 言葉を交わすだけで、国の行方が変わる。

 戦より静かで、だが同じくらい重い。戦は所詮政のが上手く行かなくて最後するだしな外交や政事

しっかりしないとな


夜。

 城の奥、灯りの落とされた廊下を、俺は一人で歩いていた。


 足音だけが、やけに大きく響く。


(国を歩き、民の声を聞き、外と話を結ぶ……)

 昼に見た市の喧騒、茶屋の婆の愚痴、兵の鍛錬の息遣い。


 そして、使者が残していった織田からの文面。


(剣を抜かずとも、決めねばならん事は減らないな)

 むしろ増えている。


 一つ選べば、一つを捨てる。

 どれも「正しそう」で、どれも「間違いになり得る」。


 俺は立ち止まり、柱に手を置いた。


(戦で負ければ、命を失う)

(だが、政で誤れば――国そのものが死ぬ)

 剣を握る時の覚悟とは、質が違う。


 怖くないわけじゃない。

 むしろ、こちらの方がよほど重い。

(当主、か政事や民のことを見たり責任重大だなぁ)

 その言葉を、心の中で反芻する。


 昔は遠かった。

 誰かがやるものだと思っていた。


 だが今は違う。

 俺の名で兵が動き、

 俺の一筆で道が拓かれ、

 俺の沈黙で、誰かが困る。


(逃げたら、終わりだなそれは六角氏の死を意味するしな)


 誰かのせいには出来ない。


 義郷叔父の影も、家中の派閥も、外の大国も――


 結局、決めるのは俺だ。


「……やるしかないな」


 声に出してみると、不思議と腹が据わった。

 覚悟とは、派手なものじゃない。

 こうして何度も、同じ言葉を飲み込むことなのかもしれない。


 俺は歩き出す。

 廊下の先、ほのかな灯りの向こうへ。

 近江を踏みしめ、外と向き合う。

 剣からも、政からも、逃げない。


(六角は――俺が背負うこれからこの先もずっとな)


 そう胸の内で繰り返しながら、

 俺は当主としての夜を、また一つ越えていった。

 



第13話では、戦ではなく「歩くこと」「話すこと」「決めること」を中心に描きました。

巡回も外交も地味ですが、当主として避けて通れない道だと思っています。

民の声を聞く場面では、義仲が「守る側」に立ち始めた実感を出したつもりです。

一方で、織田との盟約は、強者とどう距離を取るかという難しさを意識しました。

友でも敵でもない関係は、戦よりも判断が重く、後戻りがききません。

夜の独白は、義仲が「覚悟を決めた」というより、

覚悟を抱え続けることを選んだ場面として書いています。

当主とは、迷わなくなることではなく、迷いながら進む立場なのだと思います。

次話では、この外交と巡回が

家中や周辺国にどんな波紋を呼ぶのかを描いていく予定です。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

今年も宜しくお願いいたしますそして明けましておめでとうございます。1年間やってなかった分頑張って行き

ます

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