第11話ー割れる力、束ねる意志ー2025/12/13 12:42
# **第11話 割れる力、束ねる意志(下書き)**
城の兵具蔵を見回りながら、俺は小さく息を吐いた。
(――これが、六角の現実か浅井氏や北畠氏よりは兵がもいて、力があると思っていたが…)
近江一国。
動員をかければ一万に届く兵は集まる。
だが、それは「一声で動く兵」じゃない。
大体の兵が百姓か農兵であり、全体の何%が武家か足軽である。
六角の兵
進藤賢盛が、帳面を開いて説明する。
「現在、即応できる兵はおよそ三千。
奉公衆と城下の足軽が中心でございます代々の武士達で精強ですが数が多くありません。」
「国人衆は?」
「召集をかければ四千から六千。
ただし……揃うまでに日数がかかります少し兵が少なる可能性があるかと」
俺は頷いた。
わかっていたことだ。
六角の兵は“数”はある。
だが“一本の槍”にはなっていない。
例えば槍の先は高品質の鉄で柄の所は素朴で脆い木材みたいな物だ。素材が良いが一部だけだ。
(浅井や北畠なら、もっと早く動けるだろうな)
甲賀から入った鉄砲は五百ほど。
数としては悪くない。三好氏のように慣れている者が少ないし、だが、弾薬の備蓄と訓練はまだ
足りない。
「殿、軍備を整えるには金が要ります色々な事に使う事が出来ましょうぞ。」
「わかってる。
だから内政を先にやるまずは商業やどんな課題があるか調べてやらんといけない。」
内政――地味だが、国を支えるそしてこの六角を強くして繁栄させる力になるはずだ
俺は政務座に戻り、訴状の束を見下ろした。
* 年貢の取り立てが重い
* 国人が勝手に関所銭を取っている
* 城下で浪人が増えている
(戦より先に、片づけることが山ほどあるな……)
「まずは関所を整理する。
勝手な通行税は禁止だその時の発見した認めてない税は全て没収する」
「反発が出ましょう国人や寺社、有力な商人から
ですが…」
「出させろ。
その代わり、正規の税は二割か三割ぐらい
軽くする」
進藤が目を見開いた。
「……国人に、譲るのですか?」
「違う。奪い返すための準備だ」
税を軽くすれば、人は集まる。
人が集まれば、市が育つ。
市が育てば、金は回る。この好循環こそ国を勝手に太らせるものだと思う。
(刀を振るう前に、国を太らせる)
それが、俺のやり方だ。
派閥の動き
だが、家中は静かじゃない。
義賢派
「若殿は理想論に走りすぎる」
「六角は武で治める家だ」
そう囁く声がある。武だけはこの世は生き残れん
重臣派
「今こそ義仲様を立てるべき」
「当主が決断できぬなら、国が割れる」
俺を担ぎ上げる声も強まっている。確かが少し気を起こす気がするが…
国人衆
「六角が強くなるなら従う」
「だが、縛られるなら別だ」
様子見だ。
一番厄介な連中。自分と身内しか考えてない輩
だからな近江や六角氏の為ではないな
(……どいつもこいつも、俺を試してやがる)
翌日から、六角の城中は静かに、しかし確実に動き
始めた。
まず手を入れたのは兵と金だ。
兵は、ただ集めるのではなく、数を分けた。
常備の城兵、国境の備え、そして有事に即応できる動員兵。
甲賀からは鉄砲と火薬が入り、鍛冶衆には優先して鉄を回した。
「派手な軍拡はするな。だが、痩せさせるな」
それが俺の命だった。
同時に、年貢の取り立てを見直す。
取りすぎれば逃げ、緩めすぎれば国が立たぬ。
市には裁定役を置き、争いは力ではなく、裁きで収めさせた。
小さな改革だ。
だが、国は小さな積み重ねでしか変わらない。
周辺諸国の様子
動きを察したのは、当然、周囲の国々だった。
浅井氏は、様子見。
俺が京へ出るか、北畠へ向かうか、それを測って
いる。
三好氏は、内輪揉めを抱えながらも、こちらに探りを入れてきた。
「六角が動けば、京は揺れる」
――そう分かっているからだ。
北畠は、不穏だ。
伊勢の国人がざわつき、伊賀へも密使が走っているという。
どこも、静かだ。
だがそれは、嵐の前の静けさに近い。
(皆、俺を見ている)
六角義仲が、
当主として「守りに入るのか」「牙を剥くのか」を。
義仲の胸中
夜。
一人で城壁に立ち、城下の灯りを眺める。
(俺は、当主としてやれるのか)
剣を振るうことは怖くない。
だが、人を束ねるのは、怖い。
間違えれば、味方が敵になる。
(それでも――)
伊賀で見た忍びたち。
甲賀で交わした約束。
野洲川で倒れた兵の顔。
「……逃げる気はない」
俺は小さく呟いた。
「六角は、俺が背負う」
派閥も、国人も、兵も。
全部まとめてだ。
その覚悟が、本物かどうか――
次に動く者たちが、すぐに試してくるだろう。
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ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
第11話では、戦そのものよりも
**「当主として背負う重さ」**と
六角家という大きな家の中で、義仲がどう立とうとしているのか
を意識して描きました。
強くなればなるほど、選択肢は増えます。
けれど同時に、間違えたときの代償も大きくなる。
剣を振るうよりも、
人を束ね、国を動かすほうがずっと怖い。
義仲自身も、まだその答えを持っていません。
それでも――
逃げずに立ち続けることだけは、決めた。
そんな段階の義仲を、
少しでも感じてもらえたら嬉しいです。
次話からは、
この「覚悟」を試すように、
家中・他国・京の情勢が一気に動き出します。
六角家が一つにまとまるのか、
それとも――裂けるのか。
引き続き、お付き合いいただければ幸いです。




