京の影、六角の火種
第10話 京の影、六角の火種**
秋の冷気が近江の城下を包みはじめたころ、俺――六角義仲は、重臣たちを前に政務の席に座っていた。
伊賀・甲賀からの帰還後、領内の情勢は一見落ち着いたように見える。だが、実際のところ六角家の内情は、火種がそこかしこに転がっていた。
六角家中の「三つの派閥」
朝から家老の進藤賢盛が眉間に皺を寄せて報告してきた。
「若殿、国中の奉公衆より、また訴えが来ております。
――家中の派閥争い、ますます激しくなっておりまする。」
「……またか。」
(俺が若輩だから事を大きくしても良いと思っている
のが居るのか…)
六角氏には、大きく分けて三つの派閥がある。
1. **旧来の六角一派(義賢派)**
今の当主・義郷に忠誠を誓う一団。古くからの家臣が多く保守的。六角氏の伝統や在地支配に重きを
置く
2. **六角家本流派(義郷、進藤賢盛・後藤高治ら)**
実務派で、俺を次期当主として推す声もある。
実務官僚・若手武将が多い。義仲の改革路線も賛成
伊賀や甲賀の土豪達もこちらに比較的に付く。
3. **国人衆(一部の甲賀衆・伊賀衆・野洲・栗太など)**
自治色が強く、六角家の統制に反発しがち。
内紛を起こす為や自国の事を第一に目的にしている。
「特に甲賀と伊賀が、若殿の采配を“軽すぎる”と申しておる、と……忍びこどきで…」
「軽いか重いかは、俺じゃなくて結果で判断しろってんだ。まったく…これだから忍びたちは…」
思わず口調が荒くなる。
伊賀・甲賀の忍び衆をまとめるのは容易ではない。義郷の力の弱さを見越し、家中の者たちは次の権力を探り始めていた。
京の動乱
翌日、京からの使者が到着した。
三好長慶が病で弱り、三好三人衆と松永久秀が主導権を争う。どうも松永久秀は好きになられない。顔が裏切りますって云う顔ってなってる気がする。元服前の挨拶の印象だが
将軍・足利義輝は二条御所で勢力を建て直そうとしているが、武力は乏しい。
俺にも期待してよく、手紙や剣の話をしてもらい、元服の時に叔父上と共に後見人として「義と「仲」を
名乗るのを許可してもらったかの木曽義仲のように
武勇とカリスマ性を身につけるように義輝公の期待
らしい
「公家衆がこぞって訴えております。
『六角家こそ都を立て直せ』と。」
「都が我らに頼るとはな……。
つまり六角家にも、京を動かせるだけの力が残っているってことか。でも分断している家臣や国人衆をまとめてからだな」
「殿、京の治安は日に日に悪化しております。
三好三人衆は内訌の真っ最中、松永久秀は将軍義輝を睨みつけ……
都そのものが、“誰のものでもない都”となりつつございます。」
「……あいかわらずだな、京は。乱世は血を騒がせるのか…」
俺は肩をすくめた。そして梅茶を口に含んで爽やかな味感じながら空を見る
京は今、
将軍義輝の権威は衰え、三好家中は分裂し、松永久秀が好き勝手に振る舞い、
寺社勢力と浪人が町を荒らす――まさに混乱の
坩堝。
「しかし殿、こうした混乱の中でございますれば……
六角家が一歩でも都へ力を示せば、畿内の主導権を握ることも――」
「甘い。」
俺は手を横に振った。少し賢盛は驚いた顔をした。
「京は力を示した者を必ず引きずり下ろす。かの木曽義仲も頼朝や上皇にされたように
三好のようにな。」
義郷の体調不良、家中の派閥争い、そして北畠・
浅井・三好といった周辺勢力。
どれか一つが倒れれば、国は崩れる。
義郷の影
その夜、俺は義郷叔父の居館を訪ねた。
病がちの彼は寝台に座り、俺を見るだけで安堵の息を漏らした。
「……義仲よ。
六角の家は、いま大きな岐路に立っておる。」
「知っています。叔父上。今の京は三好三人衆や松永共に義輝公も苦しめるし、浅井や北畠も不穏であり
まする。」
「わしの代では……守りきれぬところまで来てしまった。
だが、おぬしには……“攻める胆力”がある。」
弱々しい声だったが、目だけは鋭かった。
「六角の国を、守り――奪い返せ。
若くとも、おぬしに継がせたいという者は多い。」
「……叔父上、まだその時ではありません。」
俺は頭を下げた。
だが胸の奥で、何かが静かに燃えはじめているのを感じていた。
前へ出るか、国を守るか
執務に戻ると、進藤賢盛が文を持ってきた。
「三好氏の一党より、密かに“同盟”の打診がございました。」
「へえ……。あいつら、自分から擦り寄ってくるとは。何か裏がありそうだな怪しいな。」
「しかし、浅井氏も同時期に“友誼”を申し出ております。
北畠もまた動いている様子……」
「つまりどいつもこいつも、六角の出方を探ってるってわけか。俺がどう出るかに掛かってるか…」
俺は机に並んだ文を見下ろした。
・京の動乱
・六角家中の争い
・周辺勢力の揺らぎ
全部が、ひとつの大きな波に見えた。
(――俺が動かなければ、この波は六角家を飲み込む。)
「よし、まずは家中をまとめる。
京には……そのあとだ。」
「若殿、動かれるのですね?」
「ああ。当主として、な。」
静かに告げると、家臣たちの顔つきがわずかに変わった。
六角家の家臣の目線や関心が、初めて“俺”へ向いた瞬間だった。
話をご覧いただき、ありがとうございました。
今回は、六角家中の派閥抗争と、1560年前後の京の混乱――この二つが物語の中心となりました。
京は三好長慶の晩年、権力はあるのに統制は効かず、
公家は財を失い、寺社は武装し、浪人が路地裏にあふれる。
そんな不安定な空気を、義仲の視点から少しでも感じていただければ幸いです。
また、六角家では義郷の病と家中の分裂が深まり、
義仲が否応なく“当主としての覚悟”へ歩み始める回でもありました。
彼の「俺が動かねば六角家は飲まれる」という心の声は、
この先の展開に大きく影響していきます。
個人的な感想になりますが、
六角氏というのは“名門なのに不器用な一族”という印象があります。しかも土地柄良いのに生かしきれていないと思う事あります。せっかく近畿や京に近くそれなりに商業などを発展してるのはずなのに
力も格式もあるのに、家中の結束が弱く、外敵に振り回されやすい。
だからこそ、義仲のように若くして責任を背負う人物を書くと、
よりドラマが生まれるのだと思っています。
次回以降は、
・京での動きがさらに加速
・浅井・三好・北畠らとの距離が変化
・義仲の政治判断が家中を揺らす
……といった要素を描いていく予定です。
引き続き応援いただければ、とても励みになります。
そして10話になりましたがこれからも頑張って書いて
行きます。




