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卒業文集

作者: 岩流佐令

 中学校生活はとても辛かった。家もそうだった。自分の時間など無かった。死んだら何もしなくてよくなるから、それまでは頑張って生きようと思った。通学路では、脳味噌が腐って融解するのではないかというほど、いつも頭が痛かった。


 両親は、妊娠してから結婚した。結婚してから妊娠したのではなく。母親が精神病院に入監したことがある。ついでに祖母も似たような感じだ。で、私はその栄えある三代目。でも、頑張って生きているつもり。人に迷惑をかけたくない。私は頑張って生きてる。


 父親は愚痴か自慢しか言わない男だ。この間も、俺が若い頃バイト先の生意気な後輩を血塗れにしてやったぜげっへっへ。車に乗っかった人様のスキー板を盗んだぜぐっふっふ。そんな話ばかりしている。あと、洗濯機も盗んだことがあるらしい。仲間と協力し、二人で担いでエッサホイサ。何がしたいのかわからない。そしてそういった話を、自分の娘にしないでほしい。嬉々として語らないでほしい。少し異常だと思う。とりあえず、すごいね、さすがだね、なるほどとか言ってる。そしたらもっと饒舌になってしまうけど。


 そんな父と母が結婚した。夫婦になった。何が起こるかおわかりでしょう。こんな伝説がある。


 母と父が喧嘩した。何十年前だろう。もちろん、私は生まれていない。聞いた話だ。結構な喧嘩だった。母が父親を、炊飯器で殴った。激昂した母。対する、父の反撃。彼は彼女を吹っ飛ばした。男の腕力だ。母は肋骨を何本か折った。その光景を眺める、長男。私の十個上の兄だ。が、突如としてふ、ふ、ふ、と笑い始めたのである。両親喧嘩。兄爆笑。さすがに両親も肝を冷やした。やばい。


 人間本当に狂ってしまうと、笑うんだ。でも、兄はすくすくと育った。日本一有名な例の大学に一郎して受かった努力の人。大学時代にも何度か挫折はあったらしい。地下アイドルにはまったり、留年したり、借金したり、不眠で夜ずっとバイトしてたりした。母親がかつて水商売の人だから、それに関連してたのかはわからないが。ふらふらしていた。たまにそのとばっちりみたいのが私にも来た。すごく怖かった。でも、彼は優しい恋人に恵まれて、なんとか更生した。今は結婚した。夫になった。IT関連に勤めている。両親のいない生活を穏やかに暮らしているらしい。


 そういえば、私もたまに急激に笑ってしまうことがあった。あと過呼吸もやった。襟でなんとかした。少しおかしいのかも、私も。不思議。


 ちなみに、母は病院には行かなかったらしい。いつか、交通事故でまた何回か骨折した際、検査を受けた。その検査で、骨の折れ方で、かつてDV受けたでしょう、と聞かれたことがあったらしい。否定したらしい。


 父は私の胸ぐらを掴んだことがある。物心がついているか、いないかの時だ。車の中、高速道路。たぶん、サービスエリアにでも停車させて。その時のことはあまり覚えていない。母に指摘されなかったら、一生忘れていただろう。映像が断片的に残っている、記憶の。父は運転席で振り返り、後部座席の私の胸ぐらを引っ掴んだ。物凄い形相と剣幕で、何かを叫んでいた。怒鳴っていた。でも、私はそれを覚えていない。本当に、あまり思い出せない。たぶん、そんなに重要なことじゃないんだろう。だから思い出せないんだ。そう思う。


 それと、母は私の首を絞めたことがある。中学三年の頃。数学の期末テストで、八十二点を取ってしまった時かな。私の上に跨る母。仰向けで、首を絞められている私。寝室で、上に電気があって。たま電気だった、常夜灯のこと。上を見ていた。これもよく覚えていない。頭が真っ白で、その電気のオレンジと紫が混じったみたいな色しか。と、そのテストの点数が悪かったということしか。


 そうそう、中学校生活の話だ。これも記憶が定かではない、ごめんなさい。何の話をしよう。いっぱいある。どれもくだらない。


 存在を消したかった。足音を消して常に歩いた。先生に当てられないように授業を過ごした。でも、当てられた。中学一年生の頃。


 保健体育の授業、よりにもよって。私は教室中に、妊娠とか着床とか精子とかいった、健全な淫語を連発させられた。何プレイですか先生。勉強音読プレイ? もちろん、女の先生だった。男女別に分かれた授業だったから。妊娠とか着床とか精子とか生理とかコンドームとか性行為とか。性行為は無かったか。どっちでもいいけど。


 私はよく、集団行動に馴染めなかった。皆の動きや思考回路とは、少し違ったみたい。頑張っている。でも駄目な時がすこぶる多い。体育の時とか、理科の時とか。


 体育の時。男女に分かれて、名前順の奇数偶数で割り振る。という命令。体力測定の授業。


 私は分かれた。男女に分かれて、名前順。そのつもりだった。が、真相は違ったらしい。てっきり、男女別に人数をそれぞれ二組に均等に割り振るのが目的だと思った。が、皆の動きは違う。出席番号順の、奇数偶数だった。私は、なぜ男女別に実施する測定で、男女混合の出席番号を使用するのか意味がわからなかった。しかし、そういうことはそういうことらしい。だって皆もそう動いてるのだから。私だけ、違う動き、違う思考回路。当然、人数は均等に分かれていない。方や十人、方や五人みたいな状況。男は知らない。でも、女はそうだった。めちゃくちゃ人数が偏っていた。先生の命令の意図がわからない。ちなみにこの教師は、例の淫語音読させ教師(女)だ。新任の方。若い。うちの兄くらい。


 で、一人だけ間違った並び方をした私。出遅れた。だから男子と混じって反復横跳び。すごく恥ずかしかった。私一人だけ女。もう一人の体育教師(男)が、うんざりした顔で測定の私を見ている。たまにこういうミスをするので、覚えられているらしい、私の顔。そうでなくても、母親がキ○ガイで学校に乗り込むような生徒だから、覚えられて当然だけど。男子が反復横跳びをする。私も反復横跳びをする。何のプレイですか先生。反復横跳び羞恥プレイ?


 羞恥といえば、私は校内をスク水で徘徊したこともある。うちの中学校はよくわからない構造をしていて、プールが謎に二階(四階建て、校庭あり)に設置されている。から、その場所がとてもわかりづらい。で、スク水校舎徘徊。皆はとっくに出発した。着替えが遅い私。プールの場所がわからない私。遅刻した私。その日は家のトイレで首を吊った。非定型だ。少人数教室で下級生が私をギョッとした顔で見ていた。ような気がする。あまりよく覚えていない。


 理科の授業。実験。失敗。発表。発表はいつも大抵私だった。班で一人、前に出て発表。もちろん、失敗した結果など発表しない。教科書ほぼ丸写し。バレない程度に。オリジナリティを込めて。誰も聞いちゃいないが。もう慣れた。


 先生は私のことを気に入っていた。私は理科係だった。よく期末テストの考察問題、その模範解答に私の解答がコピペされて載っていた。皆に配布された。許可は取られたが。その男性教師は、中学三年三学期の私に、評定五をくれた。通信簿。いつものことだけど。でも、その学期は違う。三学期はほとんど不登校だったからだ。鬱になってクリニック行かされて不登校、私。卒業式にも出なかった。卒業証書はたぶんもう捨てた。アルバムの付属DVDに、皆が遊園地に行っている映像があった。何それ私知らない。まあ、どうでもいいけど。どうでもいい。


 三学期不登校だったのに、その理科教師は私に評定五をくれたのだ。いい人だった。媚を売った分、ちゃんと返してくれた。身内贔屓をする素晴らしい男性先生だった。


 理科の、班で考察する時間だった。机を給食の形にした、その向かい側の席の人。女子二人がヒソヒソと騒いでいる。あんた行きなさいよー。ええ、私嫌だよー。


 何なのだろう。と思ったら、私に話し掛けてきたその一方。実験の考察がよくわからなかったらしい。訊いてきた。答える私。頷く女子。へ、へーえ、そうなんだー、ありがとうございまーす。


 戻る女子。ヒソヒソ声。もう一方の女子へ。ちょっとなんであたしが○○さん(私の苗字)のとこに行ったのよー。もう絶交よっ。


 私は絶交の材料にされてしまった。親友二人の仲を引き裂いてしまった。誠に申し訳ない。理科の授業は続いた。


 こういうことは、まあまああった。ある放課後、男子に呼び出された。プールの前だった。人がいない場所。その男子は私に向かって小声で、絶対に断ってください、と前置きしつつ告白した。ごめんなさいと頭を下げる私、言われた通りに。お礼を言われた。すぐに、男子は去った。中学二年、二月上旬くらい。やめていた自傷を再開した。大丈夫、今は跡だけ。


 学校。学校は辛い。腹が痛い。痛すぎる。尋常じゃない。毎日出産状態。したことないけど。でも本当にそれくらい痛いだろう。気が狂う。狂った。腕切った。首吊った。過呼吸。人事不省。


 過敏性腸症候群。と、診断された。中学二年の一学期、中間テスト。英語の時間、挙手をした。限界だった。私はトイレ内で臨界突破した。魂が浮遊する。ありがとうございました。そして、私の所為でリスニングテストが遅れた。カレーライスパーティーと、リスニングが遅れるの。どちらがマシかは自明の理だった。皆が見ていた。先生に注意された。移動する際、通り道の生徒にわざわざテスト用紙を裏返してもらった。恥ずかしかった。腕切った。


 給食の時間もそうだ。きなこ揚げパン。食べられなかった。奇襲だった。本当に痛い。いっそ血とか臓物とかが出てくれた方が晴れ晴れとする。潔い。視覚的だ。わかりやすい。でも出てくるのはカレーだけ。あと私の押し殺した悲鳴。無音で個室に反響。ごめんねこんな汚い話。大変失礼いたしました。


 まだ続く。クソったれ。水泳の時間。これはデンジャラス過ぎた。空気砲も撃てない。私の音消しスキルが発動できない。全て無意味だ。とても虚ろな平泳ぎ。門を開いたら全てが終わる。空気砲でも駄目だ。水中だから。と、誰かさんがドアをノックする。コンコン。ここは天国ですか。入ってもよろしいでしょうか。クソったれ。地獄だよここはアハハハハ。しね。お前はしね。お前が生きているから全部駄目なんだ。入ったら全て終わる。いや、出たらか。しぬのはお前だアハハハハ首吊った。


 痛かった。本当に痛かった。隣でクレイジーな男が俺の頭を撫でる。気持ち悪い。


 こいつは俺の自称彼氏だ。なんか告白された。ああ、この前のやつまだ終わっていなかったんだな。でも、今回は断れの前置きがないな。どうすればいいんだろう。とりあえずOKしとくか。俺は狂っていた。やつも狂っている、こんな女に。まあたぶんママが欲しかったんだろうな。あいつも家庭環境やべえらしいし。俺に自分の話ばっかしてくるし。どうでもいい雑学、おのれの過去話。なんで男って自分の暴力をさながら武勇伝みたいに語るんだろう。父親もそうだ。こいつもそうだったか。この言い方だと、ジェンターバイアスか。じゃあこいつらだけ。このクズ二匹。


 よく俺の頭を撫でた。あと、脚も触ってきやがった。気持ち悪い。まあOKした俺も俺だけど。言い訳。だって、またこの前みたいな告白プレイ(いじめ)かと思ったんだもん。なんかこっちも意趣返ししたいじゃない。OKOK、後ろで隠れているお前らもほらびっくり。と思ったら、単体行動なのなこいつ。普通に別件だったよ。メンヘラの男バージョンって、何て言うんだろう。メンヘラでいいのか。男女総称だな。


 一番頭にきたこと。俺の内股触って、ちなみに教室ね、で、ブニブニって言ったこと。


 は? ふざけんな。お前頭おかしいだろ。クソキ○ガイ。ブニブニ? は? こちとら高尾山の一号路、三十分以内に登れるんだよ頑張れば。山手線四十キロ歩いて周れるんだよ。てめえ女の中学生の脚揉んどいてブニブニとはどういう了見じゃおら。ころす。ころせない。社会法律の存在意義。お前如きに俺の人生狂わせない。お前の内臓なんて汚くて見たくもない。しんどけ俺の妄想内で。よし、消えた。ころした。ち○こ焼いた。


 マジで頭おかしかった。かなりクレイジー。いやまあ俺もだけどさ。教室で色々すんなよ。ほんとこれ一徹。


 でもそん時の俺はさ、まだ中学生だったからさ、ガキだったわけよ。そんな抵抗とかできる感じじゃない。自己肯定感もクソ程低かったし。そもそも精神異常者だったし。ま、先生方は問題児がワンセットになって楽だったんだろうけどな。俺とクズち○ぽ。クレイジーアベック。担任教師が微笑ましそうに見てやがったよ。祝福をありがとう。貴様に呪いあれ。f○ck。


 一年くらい続いた。子猫ちゃんクソガキロリ中学生の俺は、三学期になって無事不登校。これさっきも言ったか。受験はした。受かった。蹴った。なんか新入生代表挨拶とかも選ばれたけど、蹴った。じゃないと俺しにそうだった。かなりメンタルギリギリだった。生と死の淵でコサックダンスを踊っていた。キレッキレ。もうプロレベル。実際、プロだった。腕の跡は誰にもバレていない。と思ったら、二年後無事バレた。親バレ親バレ。どうなったのか覚えていない。また首とか絞められたんかな、忘れたけど。


 学校を辞めると、十キロ近く痩せた。今は結構良いスタイルになっているんじゃないかと思う。痩せすぎて軽く胃腸炎。腰骨、鎖骨、膝小僧。ついでに胸も縮んだ。Bカップくらいになっちゃったかも、やべえ。シャープペンシルは挟める。スマホも挟める。あ、鉛筆削りは無理だ。落下した。たぶんもう二度と永遠に増えない。悲しい。


 ああ、なんか私喋り過ぎちゃいました。卒業文集だから八〇〇字くらいにしようと思ったのに、いつの間にか五千字超。あ、もちろん不登校だから卒業文集も書いてないよ。だから今これ書いた。自分の中の何かを整理する為に。


 友達はいない。恋人もいない。社会環境はちょっと言えないけど、まあ私の周りには基本誰もいない。そんな感じだ。嬉しいね。嬉しい。


 これからどうなるんだろう。私の人生。まあなんとかなるな。大丈夫。なんとかします。大丈夫。 


 身バレしないといいな。しないか。誰も読まねえな。こんなの。


 大丈夫、これオールフィクションだから。嘘嘘嘘、皆嘘。ぜ~んぶウソっぱち。ハッハッハ、騙されたろ?


 私の卒業文集。書けなかった青春。忌まわしき素晴らしき中学時代。


 チ○カス野郎、着床音読教師、評定5依怙贔屓男性教師。ありがとうございました。私は無事卒業しました。無事性癖も狂いました。義務教育を終えました。今更だけど。


 ここまで読んでいただいた方。私のクソオ○ニー話にお付き合いくださり、大変ありがとうございました。誠に感謝。雨あられ。あなためっちゃいい人ですね。よかったら私と付き合ってください。ケモ耳美少女限定で。






(了)

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