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ep.8 もう一度

焼石蜥蜴の討伐品、灰鱗(はいりん)のローブをもう一度取りに行くため〔濡れ森〕に来ていた。


「ついでに稼いでいこう。さっき大出費したんだし」


樹の上の方にくっついている宝箱を見逃さないように上に注意を配りながら中央に進む。


「うわっ!っとと」


苔むした根っこに足を滑らせ転びそうになる。

 やっぱり足元注意しなきゃ滑るな…


「そうだ!靴の裏にトゲを付ければ引っ掛かりが出来て滑らなくなるのでは?」


 トゲは〔雑木林〕にいたあいつイメージで…

樹の幹にくっついていたトゲの魔物を靴の裏にイメージする。魔力が固まり靴の裏にトゲを形成する。


「よし。硬さも…申し分ないね」


強めに踏みしめてみるがトゲはびくともしない。転倒対策も出来たところで宝箱を探しながら先ヘ進む。



しばらく歩いたところでザブザブと水の魔物の足音が聞こえてきた。

 前は『爆炎』で蒸発させたけど視界が無くなるし音が凄かったから別の方法を考えないとな。

水の魔物がこちらを捕捉して向かってくる。


「人の形なのに無言だから怖いんだよ…『スロウ』」


 物理攻撃も試してみるか。

スロウの効果が強いうちに近づいて核の辺りを魔力で強化した拳で思いきり殴る。


「フンッ!」


水の魔物の胴体の大部分を核ごと吹き飛ばした。核を壊された水の魔物はまるで蒸発するように魔素になりその場に魔石を残した。


「おお倒せた。これなら大丈夫だな」


魔石を拾ったところで3羽の黒い鳥の魔物と一回り大きな緑黒い鳥が1羽現れた。

3羽が突撃してきて、その後ろで大きな鳥は枝に止まる。


「こいつらなら…『風刃』」


風の刃は3羽に切り傷を負わせる。しかし血を流しながらもこちらに突撃してくる。

 耐えたか。


「『壁』」


一番に突撃した鳥が魔力壁に激突して地面に落下し、そのまま魔素になっていった。


「耐えたとはいえかなりのダメージだったみたいだな」


残りの2羽はそれを見て旋回し、攻めあぐねている。


「じゃあもう一発。『風刃』」


風刃が命中すると2羽とも地面に落下し、魔素になった。3羽を倒したところで後ろで見ていた大きな鳥が飛び、前に出てくる。

 でかいし色も違う…上位種か。


カァー!


鳥が鳴き声を上げるといくつもの風の刃が飛んできた。


「えっ!?」


風の刃は全て魔力壁に防がれる。


「魔法を使うのか!面白い!」


カァー!!


鳥は全て防がれたのを見て今度は一つの大きな風の刃を飛ばす。大きな風の刃は厚い魔力壁の半分に至るほどの切り傷を付ける。


「良い威力だ!でも『風刃』しか使えないのか?」


これも防がれた鳥は高度を稼いでから突進してきた。

 速い!

やばい気がして後ろに飛び避ける。予感は当たり、壁は破られ鳥のくちばしは地面に突き刺さる。鳥はすぐにくちばしを引き抜き距離を取る。


「あの速さは魔法を使ってるな。お前が鳥じゃなきゃ教えてもらいたいよ」


鳥はもう一度突進を仕掛けようと高度を稼いでいる。

 これ『スロウ』掛けたらどうなるんだ?


「『スロウ』」


魔法が掛かった鳥は羽の操作が鈍くなり地面に落下した。


「うわ…」


 有効にも程がある…鳥相手はこれが最適解だな。


「『風鎌』」


風の鎌は鳥の首を胴体と別った。緑黒い鳥は黒い鳥より一回り大きな魔石を残した。


「魔法が使える魔物か。こりゃ〔炎熱の坑道〕も楽しみだな」




何度か戦闘をこなしつつ宝箱を開けて中央へ進む。

中央の木々が見えてくるころ、戦闘音が聞こえてきた。


「中央で誰か戦ってる?」


急いで木々の間を抜ける。

中央の広場では剣を持った少女が戦っていて、それを剣を腰に携えたスラっとした男性が横で見ていた。

 あのローブ…さっきの子じゃないか?あの人もさっきの人だ。

トカゲは傷まみれだが元気な様子で、少女は防戦一方な様子だ。トカゲは回転し尻尾で攻撃する。


「ああっ!」


少女はもろに尻尾を食らい、飛ばされ倒れる。トカゲはこれを追撃にかかる。

 まずい!


「『()――

「『防壁』!」


少女は防壁を展開し、トカゲの追撃を防いだ。その隙に少女は立ち上がる。

 おお!俺のとは違う!

トカゲは素早く距離を取り助走をつけて突進する。

強力な突進に防壁が割られたが、少女は跳び上がり勢いをつけて頭めがけ剣を突き立てる。

頭に剣を刺されたトカゲは少しもがいた後、宝箱と魔石を残して魔素になっていった。


「はぁっ、はぁっ…」


少女は息を切らしてよろめき、そのまま倒れかける。

 !

思いきり踏み込んで跳び出し、少女を抱きかかえる。


「あぶない…」


少女は気絶しているようだ。

 …綺麗だ。


「お嬢様から手を離せ!」


男性が剣を抜いて切っ先を向けてくる。


「ちょっと待っ…」


男性の怒号に少女は目を覚ます。


「ヨート…?」


「大丈夫ですか?」

「お嬢様!」


男性は剣を鞘に納め駆け寄る。


「ひゃっ!」


少女はアインの顔を見ると真っ赤になって顔を隠してしまう。


「立てますか?」


「ひゃ、はい…」


少女を立たせてあげて手を離す。すぐに間に男性が割って入る。


「急いでいるので。我々はこれで失礼します」


「ヨート、そこを退()きなさい」


少女は強気な声で命令する。


「お嬢様…」


男性は引き下がり、少女が前に出てくる。


「コホン…(わたくし)、セナと申します。こちらはヨート。あなたのお名前は?」


 多分貴族だよな…気を付けないと。


「アインと申します」


「アインさんですね。覚えましたわ。次に会う時まで、貴方も私の名前を覚えてくださいますか?」


「分かりましたセナ様」


「様なんてやめてください!探索者なんですから、呼び捨てで構いませんわ」


セナの後ろで男性が無言でこちらに見えるように剣に手を掛ける。


「…分かりましたセナさん」


「…まぁいいですわ。では急ぎの用があるのでこの辺りで。倒れそうなところを助けて下さったお礼は次会ったときに必ず致しますわ。では、ごきげんよう」


セナは上品にお辞儀をして脱出門に向かう。ヨートも次いでお辞儀をし討伐品を回収してセナの後に続く。

 セナさん…可愛らしい人だった…


「あ、ローブ…もう一回来るか」

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