ep.48 討伐報告
その後、ヴァロウとアインが昼食を作っているとデモニスが帰って来た。
昼食までいただくのは気が引けたが、元々アインが居るつもりで材料を買って来たとのことだったため厚意に甘えて4人で食卓を囲む。
「そうそう集会所に行ったらよ、”千斬”と”空割りの槌”が居てな。何かと思えばそいつらも俺らと同じ案件を受けてたらしい。それも同じ時に」
楽しい食事を終えて片づけをしていると、デモニスが洗い物をしながら話す。
3人は驚いてデモニスの方を見る。
同じ…ってことはあんなのが他に2匹も居たのか!?
「おいおい随分重要な話じゃねぇか…皆、座って話そう」
一旦片付けは置いておいて4人は集まる。
「同じ案件って固有魔法持ちらしき長生個体の討伐…ってことよね?」
「ああ。”千斬”が〔花舞の渓流〕で、”空割りの槌”が〔大雨荒野〕。それぞれ岩亀と風切蜻蛉の異常長生個体を討伐したんだと」
「うわ、そいつらが長生個体ってだけで面倒ね」
ナーニャは眉間にしわを寄せる。
「その二体はどういう魔法を使ってたんですか?」
「ん?さらっと聞いただけだが、岩亀は音の衝撃波?みたいなのを放ったらしい。で、風切蜻蛉は自身の大きさを自在に変えてきたとか…城のような大きさかと思えば蟻んこくらいまで小さくなったりで大変だったって言ってたな」
音の衝撃波?想像もつかないな…!それと大きさを変える魔法か!そこまで大きさに幅があるのは戦いにくそうだな…
「3体も同時にそのような個体が出現するとなると…何かがおかしいと見るべきか?」
ヴァロウは腕を組んで神妙な表情をしている。
「ああ、副所長もそう言ってたぜ。「これが仮に何かの予兆だとするならば、その何かはきっとこの国を揺るがすような事態になりかねない」ってな」
「そうか…俺たちもその時には死なねぇように鍛えないとな」
「そうね…」
ヴァロウとナーニャは帯を締め直すように言う。
「おっ、そしたらまた〔寂寥の夜〕に挑戦するか?」
デモニスが軽くそんなことを言う。
〔寂寥の夜〕?
「流石に無理よ!あんただってアイツのデタラメっぷりは覚えてるでしょ!?」
ナーニャは立ち上がって言う。
アイツ?
「おおっほっほ悪い悪い!そりゃ覚えてるとも。今はともかく、アイツを相手取れるくらい強くなろうぜってことよ。じゃなきゃ、”この国を揺るがすような事態”に対抗できないだろ?」
「むう…そうね…」
ナーニャは落ち着いて座り直す。
「あの…〔寂寥の夜〕って?それにアイツ…とは?」
「そういえば話す機会が無かったな。俺たち、何年か前にSランクに昇格するための試験を受けたんだ」
Sランク!
「で、その試験ってのが”ナザ同行の元、Sランク魔域で指定された内容をクリアする”ってなもんでな。魔域は試験を受ける奴に合わせてナザが選ぶんだ。で、俺たちは〔寂寥の夜〕だったんだ」
「へぇナザさんが…」
魔法の頂って言ってただけあってやっぱりとんでもない人なんだな…!
「思い出すだけで震えるわ…」
ナーニャは肩を抱いて身震いする。
「マジヤバかったよな…あの―――――」
デモニスは口を動かしているが「あの」から先の声が出ていない。
え?
「ん?おおそうだ口封じの魔法が掛かってるんだっけか。すっかり忘れてたぜ」
「口封じの魔法!?」
「ああ、特定の情報を他人に伝えることが出来なくなる魔法だとさ。俺たちの場合は試験内容についてだな。見た通り話すことはもちろん、文字に起こそうにも手が動かなくなる。こんな風にな」
デモニスは懐から紙とペンを取り出して何か書こうとするが、ペンが紙に触れたところから手が全く動かない。
「わぁ…どういう感覚なんですか?」
「ん、話そうとした時は喋ってるつもりがいつの間にか声が出てないって感じで、書こうとした時は手が自分のものじゃないみたいに動かなくなる…なんとも奇妙な感覚さ」
「へええ…」
実際に体験してみたいな…しかし”特定の情報”ってどういうことなんだろう?自分でどこまで話せなくなるようにするか決められるのかな?
考え込んでいるアインを見てヴァロウは頬を緩める。
「…しかし、アイン君は本当に魔法が好きなんだね」
「そうですね!」
あまりにも堂々と答えるその姿に3人は微笑む。
「そしたら中央区にある図書館に行くと良い。あそこには魔法に関する本が沢山あるから」
魔法に関する本!そういえば魔導書を買いに行った時に見かけたのがあったな…確か”魔法とは何か”とかそんなタイトルだったような…後で行ってみるか。




