ep.47 眠りから覚めて
「あれ…ここは…?」
目を覚ますと床に敷かれた柔らかい布団の上だった。
辺りを見回すと、部屋はぬいぐるみや置き物で可愛らしく飾られている。
「宿じゃない…どこだここ?」
掛け布団を取って立ち上がり、部屋を出る。
いくつかの扉があり、廊下の先には下りの階段があった。
扉には名札が掛けてあり、それぞれヴァロウ、デモニス、ナーニャと書いてあった。
「ここはあの3人の家で、俺が寝てたのはナーニャさんの部屋だったのか」
階段を降りると居間と台所があったが人の気配はしない。
みんな外出中なのかな?
台所で逆さにされた丸い籠を見つけた。
開けてみるとトーストに薄切りのベーコンと目玉焼きが乗せられたものとサラダがあった。
なんとなく手をかざしてみるとまだ温かい。
匂いがしてくると、急にお腹が食べ物を要求してくる。
「食べていいのかな…いや、もしダメだったら後で謝ろう」
二皿を手早く机に運び、トーストにかぶりつく。
「…美味いな…あ、コップコップ」
トーストを置き、いそいそと台所へ戻ってコップを見つけて席に戻る。
「『水』」
コップに魔法で出した水を注いで飲む。
夢中で食べ、あっという間に二皿を空にした。
量は足りなかったが満足度は高く、腹の虫は収まった。
「『洗浄』」
使った皿とコップに魔法を掛けて綺麗にし、台所に置いておく。
さて、誰か帰ってくるまで何しよう…
「てか着てた服どこ行ったんだ?」
落ち着いて初めて着ている服が寝間着のようなものに変わっていることに気付く。
服を探して歩き回り、ナーニャの部屋に戻って来た。
「『洗浄』っと」
服を探すより先に、寝ていた布団を魔法で綺麗にして畳み、しまう場所を探してそれっぽい所を開けて回る。
すると着ていた服がしまわれていたのを見つけた。
「ここにしまっていてくれたのか。汚れも無さそうだし洗ってもくれたみたいだな」
早速着替え、寝間着のような服は『洗浄』を掛けて入れ替えでしまっておく。
布団はしまう場所が見当たらず畳んで置いておくことにした。
下に戻ろうと階段を下りている時、玄関の扉が開く音がした。
階段を降りるとヴァロウとナーニャの2人が紙袋を抱えて帰って来ていた。
「アイン君!起きたのね!」
こちらが何か言うよりも先にナーニャは紙袋をヴァロウに押し付けて駆け寄り、抱きしめてきた。
「着替えさせても何しても起きないからどうしちゃったのかと…心配したのよ?」
「心配かけてすみません…あの後はどうなったんです?王狼は?」
あの雨の魔法を撃つ直前にすごい魔法の気配を背中から感じてはいたけど…
ナーニャはするりと後ろに回ってアインにひっ付く。
「アインがナーニャを守ってくれたおかげで討伐に成功した。その後はアインが倒した魔物の魔石を集めて魔域を脱出、ナーニャにアインを任せて俺とデモニスで報告へ…と、まぁそんな感じだな」
「なるほど…今は翌日の朝ってところですか?」
「いや、翌々日の昼前ってとこだ。アイン、君は昨日丸一日眠っていたんだ」
ヴァロウは居間のテーブルに紙袋を置きながら答える。
丸一日寝てしまうほどの魔力切れを起こしたのか…まぁあんな魔法を使っておいてそれで済んで良かったというべきか。
「魔力切れで気絶するのは分かるけど、あんなに長く眠っちゃうなんて初めて見たからみんな本当に心配してたのよ?ヴァロウも淡々としてるように見せてるけど昨日なんて何回様子を見に行ってたことか…」
ナーニャはアインの肩を撫でながら言う。
「おい言うな!」
ヴァロウは恥ずかしそうにしている。
最初は怖そうな印象だったけど、全くそんなことはない人だったな…
「そういえばデモニスさんは…?」
「あいつは俺の代わりに集会所に行ってる」
代わりに?というか報告には行ったって言ってたけどまた呼ばれたのか。
「それより、昨日一日寝てたんだし腹減ってるだろ?昼飯にしよう。手伝ってくれるか?」
ヴァロウは紙袋を二つ持って台所へ向かう。
「はい!」
アインはナーニャから離れてヴァロウの元へ向かう。
「お、ここにあったの食べたんだな」
「あ!勝手に食べちゃってすみません!」
「いやあれはアイン用に残しといたやつだからいいんだよ」
「ああそれなら良かったです」
「じゃ、私はこれ保存庫にしまってくるわね」
ナーニャは残された一つの紙袋を抱える。
「あいよ」
なんで代わりに?って聞かれる前に露骨に話を逸らすなんて、久しぶりにカワイイところが見れたわね。
ナーニャはご機嫌な足取りで保存庫に向かった。




