ep.45 決着
…さっきの爆発の前、魔法を使ってたような…でも言ってた感じ爆発させる魔法じゃないし、なんだろ?
最高硬度の魔力壁を展開していたアインは固有魔法を使った2人の戦いを観察していた。
ふと、背後から嫌な気配を感じて後ろを振り向くと少し先の丘の表面が動いている。
よく見るとそれは魔物の群れだった。
「なっ…!」
魔物はあれで打ち止めじゃなかったのか!それどころか今までで一番多い…!
「いや、落ち着け…まだ少し距離はある。考えろ…」
まず『火柱』ではあの数を焼き尽くすほどの大きさは無理だ。『爆炎』も同じ理由でダメだ。風系も『乱風刃』じゃないとあの数は無理だし緑狼が混ざってたら倒せないからダメだし、水系も広範囲に殺傷力がある魔法は使えないし…
「…半円状に『炎海』、だな」
緑狼が居るかもしれないと考えるとかなりの魔力を一気に消費するから気絶しかねないが…やるしかない。
アインは手を地面に着けて魔物を待つ。
待つほどの時間も経たないうちに魔物は波のように押し寄せてきた。
出来るだけ引き付けて…
「『炎海』っ!」
アインが唱えると手の下から溢れるようにして青白い炎が激流の勢いで流れ出す。
まだ、もっと、もっと広げて…!
とにかく魔力をつぎ込み、青白い炎で半径50mの半円を作り出した。
飲み込まれた全ての魔物は灰となって朽ちていった。
「っ…!ぐぁ…は、ふ、ふぅっ、はぁっ、ふぅーっ…!」
アインは気絶しそうになるも何とか耐えて息を整える。
ひどいめまいだ…でも、これならもう大丈夫だろ。
「残り3割ってとこか…ん?」
残りの魔力を確認し、おもむろに前を見ると遠くから大きな赤い何かが飛んできているのが見える。
「あれは…ワイバーン!?」
飛んできているのは〔轟風丘陵〕のヌシ”赤飛竜”だった。
「ヌシか!?だとしたら徘徊型だったか!この状況でヌシはまずい…!」
考える隙もなく赤飛竜は炎海の上にまで接近し、滞空し始める。
くそっどうする…
赤飛竜はこちらに狙いを定め、火炎放射を吐いてきた。
「うおお『壁』っ!」
すんでのところで炎は防げたが熱がこちらまで伝わってくる。
「くっ!『嵐刃』!」
かなりの魔力を込めて『嵐刃』を放つが風に阻まれて速度が落ち、躱されてしまう。
赤飛竜が今度は少し溜めたような動作を見せたかと思うと、火球を吐いてきた。
火の球!?
火球は魔力壁に当たると爆発し、魔力壁を砕いた。
「うわっ!?『爆炎』みたいだな!」
アインは知っている魔法に似た火球に少し興奮する。
いやそれどころじゃねぇ!どうやって奴を倒す!?
「『魔力壁』!」
一旦考えるために最高硬度の『魔力壁』を赤飛竜に向かって盾になるように展開する。
赤飛竜はまた火球を吐くが今度の魔力壁は耐えている。
『嵐刃』は強風で当たらなかった。さっきのはかなり魔力を込めたはずなのにあれだったから風はもう使えない。そうなると火か水…強風に飛ばされない、かつ射程がある火か水…『水線』か?あれならかなり魔力を込めれば威力に期待できるかも…
「試してみるか!んん…『水線』!」
魔力壁を解除し、手を前に出して魔力を大量に含んだ水を圧縮、それに穴を開けるようなイメージで高圧水流を撃つ。
「おわっ!」
あまりの反動に抑えきれず薙ぐようになってしまったが、高魔力の『水線』は赤飛竜の胸部に深い切り傷を付けた。
ギャオオ!
赤飛竜は声を上げてよろめいたが飛行を維持している。
くそっ!反動が強すぎる…走って来た時の強化のままだからいけると思ったんだが、無理か…
ふとナーニャが虚空から水の槍を放っていたのを思い出す。
「…ん?そういえば手から撃つ必要…」
なんならナーニャさんの槍雨みたいに降らせられれば…!
アインは無意識に口角を上げた。
「…いける!」
ー
「ヴァロウ!デモニス!行くわよ!!」
ナーニャの掛け声に2人は王狼から距離を取る。
ナーニャの胸元から水面のように煌めく発光体が現れる。
「『水神の波動』!」
瞬間、発光体から衝撃波が発生。
逃げようとした王狼に障壁をものともしないほどの威力の高密度の水魔力そのものがぶつかり、体を構成する魔力が崩壊、王狼は消滅した。
ー
「『貫く雨』!」
アインがそう唱えると赤飛竜の頭上に無数の水の玉が発生。
全ての水の玉から高魔力の水線が撃ち出され、赤飛竜の上半身をハチの巣にする。
赤飛竜は何が起こったかも分からず地に落ち、魔素となって消えて行った。
思い通りに魔法が撃てた高揚感とは裏腹に、体が言うことを聞かない。
「あ…やりすぎた、ね…」
アインはうつ伏せに地面に倒れこんだ。




