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ep.44 〈深緑の王狼〉

3人は互いを気遣うことなく全力でヴァロウの後を追ったが奇しくも同じ速度だった。

 ”強化丸薬”飲んだ俺と同じ速度たぁ…Bランクって聞いたのが嘘みたいだぜ。


二つ目の丘を越えたところで3匹の狼が前方に立ちふさがる。


「一人一匹ってかぁ?」


デモニスはコートに手を突っ込む。


「そのまま走ってください!『火柱』!」


アインは青い炎の柱を狼たちの足元に発生させて黒焦げにする。

狼は灰になるように魔素と化して風に散った。


「わおっすごい火力ね!」


ナーニャは『火柱』の威力に感嘆する。

 やっぱり本当は軍の関係者…それどころか精鋭部隊?


その後は妨害もなく、走っていると激しい剣撃の音が聞こえてくる。


「まだ戦ってるのか…!」


デモニスは冷や汗を垂らす。

3人は音の発生源にたどり着いた。

そこは丘に囲われた盆地のような場所で、ヴァロウと王狼は一対一で攻防を繰り広げていた。


「ヴァロウ!」


デモニスは呼びかけながら王狼に向かって手のひらほどの大きさの黒い球を投げつける。

ヴァロウはその声を聞いて後ろに跳び退く。

王狼も球を避けて後ろに跳び退き、両者は距離を取った。

3人はヴァロウに駆け寄る。

 ここは風が弱いのか。

安心からか、ヴァロウは長剣を落としてしまう。


「大丈夫か!?それ、キャパオーバーじゃ…」


ヴァロウは腕を震わせながら長剣を拾う。


「いや、問題ない…っ!来るぞ!」


ガオオオオオ!


王狼がこちらに向かって吠えると魔力を大量に含んだ風が4人を襲う。


「きゃあっ!」

「ぐううう!」

「ぬううう!」


風を受けてる部分をまるでやすり掛けされているような痛みが襲う。

 痛すぎる!なんだこれ!?


「『壁』っ!」


最大硬度の魔力壁で風を防ぐ。

 魔法の気配はしたから魔法のはずだが…


「『水破槍(すいはそう)』!」


ナーニャは間を埋めるように5本の水の槍を王狼に向かって放つ。

しかし水の槍は王狼を覆っている半透明の緑の障壁によって防がれる。

 あれは…?


「当初の作戦通り行くぞ!デモニス、援護を!」


ヴァロウは構えを取る。


「おうよ!」


デモニスはコートの中から取り出した棒を首の後ろに突き刺す。

デモニスの額や腕に血管が浮き出て、獣のように目を開く。


「ナーニャ、アイン、手筈通りに!アイン、この壁を解いてくれ!」


「任せて!」


「分かりました!解きます!」


魔力壁を解除した瞬間、ヴァロウとデモニスは王狼に向かって弾丸のように飛び出す。


「あそこまで退くわよ!」


ナーニャは後ろの丘の頂上を指差す。


「はい!」


「よしっ、じゃあ守りはお願いね」


風が吹き荒れる頂上に着くとナーニャは両腕を広げて集中し、魔力を胸部に集め始める。


「『魔力壁』」


アインはナーニャと自分を守るように魔力壁を展開した。



「ふっ!」


ヴァロウは目にもとまらぬ速度で王狼を幾度も斬りつけるが緑の障壁に阻まれ、障壁にはかすり傷すら付かない。

王狼は嘲笑うようにヴァロウを見下す。

 クソッタレが!


ヴォウウ!


王狼が軽く吠えると無数の風の刃がヴァロウへ放たれる。

そこへデモニスが割って入って刃を全て体で受ける。

衣服は刃を弾いたが、肌で受けた部分から血が噴き出す。


「ハッハァ!むうんッ!」


デモニスは楽しそうに笑い、緑の障壁に拳を打ち込む。

障壁は震え、王狼は距離を取ろうとバックステップする。


「”設置済み”だァッ!『起動』!」


デモニスが手を開くと王狼が着地する寸前に足元から大爆発を起こした。


「ハハハハ!”接地型(せっちがた)指向性爆弾(しこうせいばくだん)”!Aランクの魔物でもタダじゃ済まんぞ!」


一拍置いてから、所々体毛が焦げた王狼が煙から飛び出してヴァロウへ牙を向ける。


「何ッ!?」

「っ、ハッ!」


ヴァロウは強気に攻めに転じ、王狼の口に向かって連続突きを繰り出す。

ヴァロウの考え通り、障壁は展開されておらず王狼の上あごに刃が通った。


ギャオン!


王狼は声を上げて痛がり、障壁を再展開した。


「デモニス!障壁が割れていた!あの爆弾は効果ありだ!」


「ハハッ!悪いがさっきので在庫切れだ!」


「クソッ!だったら足止めに専念だ!」


傷を負い、逃げる隙を探す王狼にヴァロウとデモニスは隙を与えないよう立ち回る。

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