ep.40 会議
「久しぶりだな副所長。また小っさくなったか?」
デモニスは顎に手を当てて首をかしげる。
「小っさくなんてなっておらんわ!貴様がデカくなっとるんじゃ!」
副所長は怒りを露わにしている。
「おおすまんすまん」
これほど大きな街の集会所副所長って言ったら結構すごいと思うんだけど…そうは見えないな。
副所長はアインの視線に気付くと一つ咳払いをしてまた腕組みをする。
「私は南集会所を任されている副所長、リアオンじゃ。よろしくのアイン」
「はい。よろしくお願いします」
気を取り直して全員席に着く。
「さて、揃ったことじゃし会議を始めよう。手紙で伝えてあるとおり、Bランク魔域〔轟風丘陵〕にて確認された異常な長生個体討伐についてじゃ」
「ていうか、その異常ってのは何なんだ?」
「アインの報告によれば、他の種類の魔物を使役していたそうじゃ。それも数えきれないほどの数をな」
ヴァロウ、ナーニャ、デモニスの表情が険しくなる。
「…まるで固有魔法みたいね」
固有魔法?
「うむ。Bランク程度の魔域の長生個体が固有魔法持ちなど考えられんが…恐らくそうだと私も踏んでいる」
「話の途中にすみません。魔物も固有魔法を持つことがあるんですか?」
魔物は火、水、風の自然魔法しか使えないと思っていたんだが…
「そうじゃ。Aランク魔域の長生個体とSランク魔域のヌシのみだが確認されている」
「じゃあBランクでは…」
「そう、ありえないはずじゃ。じゃがそれ以外の可能性は無い。じゃからAランク探索者たちの中でも屈指の実力を誇り、長生個体の討伐経験もあるこの3人パーティ、”重颯の狩人”が選ばれたって訳じゃな」
「そんな頼もしい方々が…」
3人の方を見るとヴァロウは顎を上げ、ナーニャは投げキッス、デモニスはサムズアップして見せた。
「さて、少し話が逸れたが話を戻して…4人にはこのSランク出魔品”強者へ導く鍵”を使ってもらう」
リアオンは胸元のポケットから金色の鍵を取り出して机に置く。
「Sランク出魔品だと!?よく許可が出たな!」
デモニスは興奮して立ち上がる。
「こちらから提案する前に所長から言い出しての。報告書に目を通しただけでその判断が出来る辺り流石と言ったところじゃの」
「ほう…手に取ってみてもいいか?」
「もちろんじゃ。その鍵は破壊不能の性質を持っとるから安心して持ち運び出来るぞい」
リアオンは鍵をデモニスに投げ渡す。
受け取ったデモニスは鍵を食い入るように見ている。
「名前からある程度分かるが、コイツはどういう性能で、どうやって使うんだ?」
ヴァロウは鍵を親指で指して聞く。
「性能は魔域に入った時、対象の魔域内で最も魔力を持つモノの半径1キロ以内に出るというもので、使い方は魔域に入る時にただ持っとるだけで大丈夫だそうじゃ。反動はないらしいぞ」
「はぁ!!?そんな便利な性能しといて反動無し!?」
デモニスは驚いて大きな声を出す。
びっっくりした…
ヴァロウは眉間にしわを寄せ、ナーニャは耳を塞いでいる。
「じゃが使用は一回限りだそうじゃ」
「あぁ…」
デモニスは納得したような落胆したような表情を見せて座る。
「そしたら、それを持って〔轟風丘陵〕に入れば近くに例の個体が居るからそれを倒す、で合ってるわね?」
「ああそうじゃ。普通の長生個体討伐よりよっぽど簡単じゃろ?」
普通の?普通はどうやるんだろ?
「相手が未知数なことを除けばね」
ナーニャは背もたれにもたれかかる。
「だな。そしたら、報酬は?」
「一人小金貨4枚じゃ!」
小金貨!しかも4枚!今まで手が届かなかった魔導書が買える!
「おお!異常個体とはいえBランクなのに随分貰えるんだな」
デモニスは鍵にほおずりしながら言う。
ほおずりしてる…
「まぁの。しかしそれほど重要だと判断されたということじゃ。くれぐれも油断するでないぞ?」
「もちろん」
「ええ」
「ああ!」
3人はそれぞれ相槌を打つ。
「よし、では連絡事項は以上じゃ!早速〔轟風丘陵〕へ向かい異常長生個体…〈深緑の王狼〉の討伐へ向かうのじゃ!」
ヴァロウはさらに鋭い目つきになり、ナーニャは舌なめずりをし、デモニスは拳を合わせる。
こういう公的な依頼は始めてだ。気を引き締め直さないとな。
アインは拳を強く握った。
「…何だ今の二つ名?深緑の?」
「思いつきじゃ!」




