ep.38 書状
「あんた宛てに手紙が来てたよ。ほれ」
遅めの昼飯を済ませて日が傾いてきたころ、泊っている”癒しの止まり木”に帰ってくると受付の女将に引き留められ手紙を渡された。
「はぁ…え!?」
受け取ってみるとそこにはルーツ集会所本部よりと書かれていた。
集会所本部からって何事!?
「大丈夫さね。何か悪い事だったらこんな風に手紙じゃなく直接人が来てるはずだからね。安心しな」
「あ、そ、そうなんですね…」
早足で部屋に戻り、早速封を開けて中身を読む。
Bランク探索者 アイン殿
この書状はBランク魔域〔轟風丘陵〕の異常長生個体討伐隊の招集命令書である。
貴殿は交戦経験があり、加えてSランク探索者オプローより推薦があったため人員に加わることとなった。
明後日の正午に南集会所会議室にて顔合わせ、会議、後に実行となる。
この命に背いた場合、探索者資格は剥奪される。
ルーツ集会所所長 アールフィント
「え!?ええ…剥奪って…いや背かないけども」
…むしろ招集は願っていたまである。あの人の敵討ちを他人に譲ることになって少し引っ掛かっていたところだ。
「明後日の正午…間違っても遅れないようにしないと」
…ちょっと早すぎたかな。
朝飯を済ませてすぐに集会所前広場に来てしまった。
「流石にこんなに早くから行っても迷惑かな…ここで時間潰すか」
何気なく噴水を背にし、手のひらを上にして両手を前に出す。
「『水塊』」
大体人の頭ほどの大きさの水塊を作りだし、気の赴くままに変形させる。
立方体にしてみたり、それを薄くしてみたり、さらにそれを波打うように動かしてみたり…
しばらくそんな調子で続けていると、いつの間にやら手を繋いだ二人の子供が目を輝かせてアインの水遊びを見ていた。
あれいつの間に…ちょっと遊んであげるか。
水を縄のように変化させ、子供の周りを回してみる。
子供たちは無邪気に声を出して喜び、水を捕まえようとしている。
捕まらないように上手く形を変えながら操作して遊ぶ。
遊びに付き合ってあげて少しして、横から拍手される。
拍手の主は買い物を終えた風体の品の良い女性だった。
「素晴らしい操作精度ですね」
「「おかあさん!」」
子供たちは一目散に母の元へ駆け寄る。
「いえいえ、それほどでも…」
「ふふ、ほらレン、ラン。お兄さんにお礼は?」
「「ありがとー!」」
可愛らしいお礼に自然と口角が上がる。
「どういたしまして」
「子供たちに付き合ってくださってありがとうございました。さ、行こっか」
「「ばいばいおにいさん!」」
母親は礼儀正しくお辞儀をして2人と手を繋いで帰って行った。
一連の流れに、広場に居た全員が和んでいた。
無邪気で可愛いな…
太陽の位置を確認すると集合時間にはまだ早い。
「あ、そういや集まったら会議とかって書いてあったな。先に昼飯済ました方がいいか」




