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ep.25 情報

店主に魔法が付与された武器をひとしきり見せてもらうといつの間にか日が落ちていた。


「ありがとうございました!面白かったです!」


「おう!こっちも久しぶりにこいつらの整理が出来て良かったぜ。んじゃまたな!」


「ええ、また今度!」


 買いたかったけど武器はこれで十分だし我慢だな。それに別の街に行くことを考えたら少し蓄えておきたいしな。

武器屋を出ると街灯が灯りだしていた。


「あれ、もう日が落ちて…」


 じゃあ集会所…いや、まだ落ちたばっかっぽいし早いか?


「まぁ待たされたらそこで待てばいいし行くか」




集会所内はまだ人が少なく、受付は空いていた。


「すみません。オルハンさんは居ますか?」


「オルハンですね。少々お待ちください」


受付の男性は笑顔で答え、裏へ行く。

するとものの十数秒で例の透明な魔石を持ったオルハンが受付に出てきた。


「アイン様お待たせしました。こちらの魔石の評定は完了しておりますので換金可能でございます。換金いたしますか?」


「はい。お願いします」


 いくらになったのかな?


「かしこまりました。こちら小銀貨1枚になります。お受け取り下さい」


オルハンは最小限の音で小銀貨をカウンターのこちら側に差し出す。

 小銀貨1枚か。あの大きさにしては破格だな…やっぱり特別だったんだ。


「それではカードに記録いたしますのでカードをお願いします」


「あ、はい」


オルハンは迅速に記録を終わらせる。


「ありがとうございます。カード、お返しさせていただきます」


「ありがとうございます」


両手で渡して来たのを同じように両手で受け取る。


「…ちなみに、あの白いクモが一体何なのかって情報ありますか?」


 魔法使ってたっぽいし分かるようなら聞きたい。


「はい、ございます。討伐者には聞く権利がありますので情報料は無しになります」


 討伐しなきゃ情報料が要るのか…


「ありがとうございます。聞かせてもらえますか?」


「かしこまりました。ではあちら、左奥にある扉にお入りください」


オルハンは集会所の左端にある扉を手で指すようにして言う。

 情報聞くときってこういう感じなんだ…


「分かりました」



扉を開けると紙を持ったオルハンが既に待っていた。


「ではこちらへお願いします」


受付のすぐ裏にある一室に通され、机を挟んで対面に座る。


「それでは白い蜘蛛こと、Cランク魔物、霞蜘蛛(かすみぐも)についてお話いたします」


オルハンは持っている紙を手に話し始めた。

 アイツ霞蜘蛛っていうのか。


「Cランク魔域〔炎熱の坑道〕にて出現する魔物、灰蜘蛛の()()()であり、発見、討伐の報告数は片手で足りるほどです」


 亜種とか長生個体じゃなくて希少種なんだ!かなり運が良かったな…


「外見は白いこと以外灰蜘蛛に瓜二つでありながらその特性は大きく異なり…『認識阻害』という魔法を使用し、それを利用した狩りを行う」


 『認識阻害』!自然魔法以外の魔法を使う魔物か!


「また、『認識阻害』は狙った対象が自身を認識できないようにする魔法であり、これを使われていると目で捉えることが出来ず、さらには音を出そうが、体を這っていようが認識が不可能になる」


 なるほど!それでいつの間にか手が縛られてたり、見てるはずなのに見失いそうになったのか!すごい魔法だ!


「しかし、痛みを加えられると魔法の効果はその限りではなく、認識が可能になる。また灰蜘蛛と同じように牙に毒はあるものの注入するのに時間がかかるため、先に糸で拘束してから噛んで毒を注入する。毒も同じく麻痺性のものであるが灰蜘蛛より効力が強く、注入されるとすぐにその部位の自由が利かなくなる。効力が切れた後の後遺症は無い。糸はかなり強靭でさらに熱にとても強く、大抵の火魔法でもびくともしない。だが水に弱く、よく溶ける。そのため、遭遇して糸で縛られていることに気付いた場合、即座に水で糸を洗い流すこと」


 …俺は水魔法が使えるから手が縛られてても水を出せたけど、魔法が使えなかったら…恐ろしいな。


「…以上が霞蜘蛛の情報になります。聞き逃した箇所などございませんか?」


「あ、はい。大丈夫です」


「ではこれにて以上となります。この情報について他言するのは遠慮していただくよう、ご協力お願いします」


 そっか。俺が色んなとこで話したらこの話の情報料取れなくなるもんな。


「分かりました。聞かせてくださってありがとうございました」


「お気遣いありがとうございます。それではまたのご利用、お待ちしております」


オルハンは深くお辞儀して見送った。





「ふぃーお腹いっぱい…」


いつも通り夜ごはんも”熊の背”で済ませる。


「お代は大銅貨2枚だ!で、アイン。次はどの街に行くんだ?」


「どの街…?あー、まだ考えてないな」


お代を渡しつつ答える。

 そういえばそうだったな。

アインが現在滞在しているこの街、ルファト付近にはCランクまでの魔域しかないため、Bランクに昇格した大抵の探索者はこの街を離れてBランク魔域がある別の街に行く。


「そうか!なら、遠いがルーツって街がおススメだぞ!あそこは街がデカいだけあって行ける魔域も多いし、なんとSランクまであるんだ!」


 へー魔域が多…


「Sランク!?」


「ああ、きっと面白い魔法が手に入る魔導書が出魔するぞ?」


 確かに…!魔導書買いに行った時に受付の人が良さげな魔導書は高ランク出魔品だって言ってたしSランクにもなれば…!


「ハッ!見るからにワクワクしやがって!決まりだな!」


ベールズが頭を雑に撫でてくる。


「ああ!ルーツにするよ!」


「なら、ウチにルーツから調味料卸してくれてるヤツに口利いて指名で帰りの護衛依頼出させておいてやるよ!したら旅代は浮くし俺の知り合いだから安心出来るし良いだろ?」


ベールズは決め顔で提案する。

 いやなんなら依頼料も貰えるじゃん!?


「そりゃこっちは願ったり叶ったりだが…そんなにしてもらっても良いのか?」


「どうせ護衛雇うんなら俺のお墨付きの方が良いだろ?」


「お墨付きって…なんか小っ恥ずかしいな」


「自信持ちな!お前はきっとSランクにも手が届くって思ってるからな!」


「流石にそこまでの器じゃないさ」


 Sランクといえばナザさんだ。何回か会ったことしかないけどあの人と並ぶイメージがつかない…


「そうか?ま、そういうわけで話は通しとく!出るのはいつでも大丈夫か?」


「ん、別にやっときたいこともないし大丈夫」


「んじゃ、決まったら俺かエリルーアから話するからそれまで好きにしてな!じゃ、またな」


ベールズは厨房へ戻っていった。


「…ルーツか」


 そういえばパージュラが受付で名前を出すと良いとか言ってたな…忘れないようにしよう。



―――――



「よっ。久しぶり」


「お!来たな!」


いつも通りリュドゥが店に黄胡椒(きこしょう)など調味料を卸しにやって来た。


「今回は運が良くてすげぇ珍しいのが入ってな。青香塩(せいこうえん)っつう香塩の中でも一番出魔しないやつだ」


リュドゥは片手に収まる程度の大きさの袋を取り出し手渡す。


「へぇ?…うん、素晴らしい香りだ。でも高いんだろ?」


「まぁな。買うか?」


「ああ。店にゃ出さないと思うがナザさんの料理に使うつもりだ」


「Sランク探索者の彼か。そういえばまた最近こっちに来てたって聞いたな」


「ま、だからしばらく来ないと思うが買える時に買っとく」


「あい分かった。値段はー




「はいまいど。いつもありがとよ」


「こっちこそありがとな!で、ちょっと話があるんだがいいか?」


「ん?珍しいな。どうした?」


リュドゥは次へ向かうために馬車の積み荷を整理していた手を止める。


「今回の護衛だが…指名依頼で俺から推薦させてくれねぇか?」


リュドゥは訝し気な表情を覗かせる。


「…まぁお前が薦めるんだ。実力は申し分ないんだろうが…どんな奴だ?」


「”()()()()魔法使い単騎でBランクになった探索者”だ」


リュドゥは聞いたことの無い功績に驚いて目を見開く。


「…ハハハッ!そいつぁ大物だ!いいね!乗った!」


「お前ならそう言うと思ったぜ!」


2人は勢いよく握手を交わす。


「んで、名前は?」


「アイン」


「アインだな。仕事終わったら集会所にアインで指名依頼出しとく。報酬は少し色付けといてやるよ」


「ありがとよ!じゃ、これ報酬の足しにしてくれ!」


ベールズは硬貨が入った袋をリュドゥに投げ渡す。


「おっとっと!…ハッ、ずいぶん惚れ込んでるみたいだな?」


袋の重さから、ベールズがアインに抱いている期待の大きさがうかがえる。


「まぁな!こっちもアインに色々伝えとく!じゃ、よろしくな!」


「あいよー」


リュドゥは次の契約相手へ馬車を進める。

 さっきの袋…重さで大体わかるが…

改めて口を開けて確認すると想像通りの額が入っていた。

 ベールズの奴…足しって言ってたのに相場の全額じゃねぇか…

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