ep.24 変
魔域を出ると昼を過ぎたころだった。
「眩し…いつもこうなるのどうにかならないかな」
まぁ〔坑道〕は暗いからしょうがないか…
「出てきたらお腹空いてきたな…」
魔域内では感じていなかった空腹感が魔力が残り少ないのも相まって急激に襲い掛かる。
「先に飯食ってから換金しにいくか」
「おいしょっと!今日は久しぶりに消耗してんな!」
ベールズが大盛りの料理を持ってきてくれる。
「しばらく鍛えてたんですけど今日は〔坑道〕のヌシに挑戦してきまして、討伐に成功しました」
「おお!魔法が効かないと噂のヌシを魔法使いのお前が倒すたぁ流石だ!しっかり食って癒していきな!」
ベールズは感心して肩を叩いて行った。
痛…たくない?ベールズさんの叩きも痛くないくらいには鍛えられたんだな。
「今日は無料だ!」
「…ん?」
タダ…?ってなんだ?
いつも代金を伝えてくるベールズがタダと言ったため一瞬頭が真っ白になる。
「ん、ってなんだ?今日は代金無しで良いぞ!」
タダって無料か!
「え!いいんですか?」
「ああ。〔坑道〕のヌシ討伐のお祝いだ!」
「ありがとうございます!」
「なあに良いってことよ。んでその袋、換金まだだろ?さっさと行ってきな!」
ベールズは振りかぶって背中に平手打ちする。
「痛ってぇ!」
「おっと悪い。つい力入っちまった!じゃあな!」
ベールズは悪戯顔で見送る。
さっき俺が平気そうにしてたからわざとやっただろ!
「ああ!じゃあな!」
「ハッハッハ!」
つい同じ口調で返して”熊の背”を後にする。
ベールズは嬉しそうに大笑いして見送り、厨房に帰って行った。
集会所は昼頃のピークは過ぎていたがまだ多くの人が受付に並んでいた。
適当な列に並んで順番を待つ。
「次の方、こちらへ出魔品とカードをお願いします」
今回は質実な女性が受付だった。
「はい。よいしょっと、あとカード…はい、お願いします」
「ありがとうございます。袋の中身の方、確かめさせていただきます。…Cランク魔域〔炎熱の坑道〕の出魔品、もとい魔石ですね。赤百足、赤蟻、灰蜘蛛に…こちらが魔除蜘蛛の魔石ですね」
袋の中身を丁寧にカウンターに出し、慣れた手つきで検めていく。
「カードを確認したところヌシ討伐で昇格でしたので、Bランクに昇格となります」
受付嬢はカウンター横の台にカードを乗せ手元で何か操作するとカードが微かに光り、銀色だったのが金色に変化した。
「おめでとうございます」
続けて受付嬢は淡々と会釈をして祝いの言葉を述べた。
「ありがとうございます」
「…?こちらの魔石はどこで手に入れましたか?」
受付嬢は白いクモから出てきた透明な魔石を手に取る。
「これも〔坑道〕からです。灰色のクモによく似た白いクモの魔石です」
「…すみません少々お待ちください」
受付嬢は透明な魔石を持って裏へ行ってしまった。
…なんかこういうこと多くない?
「すみません、お待たせしております」
走ったのか少し肩で呼吸をしている。
「こちらの魔石ですが評定にお時間いただきますがよろしいでしょうか?」
この前の長生個体の時もそんなんだったな。
「はい大丈夫です」
「では夜にもう一度受付にお越しいただいて受付の者から私、オルハンをお呼びください」
あれ、この前はすぐ話を聞かれたけど…夜にする感じかな。
「分かりました」
「それでは換金に戻らせていただいて、魔除蜘蛛の魔石を含めて小銀貨1枚と大銅貨9枚になります。お確かめください」
オルハンは迅速にかつ丁寧に硬貨を重ねてカウンターのこちら側に置く。
宝箱から出る鉱石とかは重いから全部無視してたけど魔石だけで結構なお金になったな。ヌシの魔石はやっぱり高額だ!
綺麗に積みあがった十枚の硬貨を崩さないように上から半分ずつ掴んで袋に入れる。
「それとこちらがBランクの証明となるカードになります」
オルハンは両手で丁寧にカードを渡す。
「ありがとうございます」
それに応じて両手で受け取る。
「じゃあまた夜にお願いします」
夜まで何しようかな…
「はい。お待ちしております」
オルハンは深くお辞儀をして見送った。
宿に戻って夜まで何をしようか考える。
「魔域行ってもいいけど…まぁ〔坑道〕には行けないな。魔力が…」
”熊の背”でお腹一杯食べたおかげで回復してきているが、それでも〔坑道〕に行くには心許ない。
「じゃあ短剣の練習…そういえば武器屋で魔法がなんとかって聞いたような…」
武器に魔法ってなんだろ?
「行ってみるか」
―”カシューの武器屋”―
「いらっしゃい!お、この前振りだな!ん、その手袋…どうやらBランクになったみたいだな!おめでとう!」
相変わらず武器を磨いていた店主は着けていた手袋を見て肩を叩いて祝ってくれた。
「ありがとうございます」
「で、今日はどうした?別の武器でも見に来たのか?」
「いや、この前来た時に魔法がなんとかって聞いたのが気になりまして」
「…ああ!魔法が効かないって話の時のか。魔法が付与された武器ってのがあってな。それのことだな」
付与?
「魔法が付与…?」
「ああ、そういう出魔品があってな。それが、よっと。これとかだな」
店主は横に立てかけてあった斧を手に取る。
魔法の気配は…お!ほんっの少しだけどする!
「これは『持ち手の温度が保たれる』って魔法が付与されてる」
「へぇ!面白いですね!」
保つってことは火を当てたりしても持ち手は燃えないってことだよな?実際に火を当てたらどうなるんだろう?見た目は何もならないのかな?『着火』はどうなるんだろう?
「へっ、しょぼくて笑っちまうよな。まぁでもうちで扱ってるのはこういう変なのばっか…どうした?」
考えを巡らせて心ここにあらずなアインに手を振る。
「あっすみません!火を着けたらどうなるのかとか色々考えちゃって…」
「ほーん…そんなの気にしてなかったな。兄ちゃん変わってんな」
「よく言われます」
「まぁともかく、うちにあるのはこんなのばっかりだが高ランク魔域がある街に行けば攻撃的な魔法が付与された武器もある。魔法にもよるが、そういうのは硬鉄製よりも安いが同じ様な強さ…なんならもっと強いなんて物もある」
「へー…!」
攻撃的な魔法か…!気になる!
「兄ちゃんもその短剣が使い物にならなくなったら良い魔法が付いた武器にしな!良いヤツは高いが兄ちゃんなら買えるだろ!」
「そうします!」
どんな魔法があるか気になるしこの短剣の次は絶対に魔法が付与されたやつにするぞ!
「…ちなみに、こんなのばっかりって言ってましたし、まだ魔法が付与された武器ってあるんですか?」
「ん?ああ、ホントどれもしょぼいけどな。気になるか?」
「はい!もちろん!」
「お、おお…じゃあ全部持ってきて見せようか?」
「嬉しいです!ありがとうございます!」
「…ちょっと待ってな!集めてくっから!」
店主は店の裏に行って武器をまとめられる箱を探す。
…ああいうしょぼい魔法の何が良いんだか分からんな…
店主は魔法が付与された武器をかき集めて見せて説明してやると、アインは目を輝かせる。
…やっぱ高ランク探索者ってのは変人なのか?
どんな魔法の話にも目を輝かせるアインに軽く引いた店主だった。




